戦乱の刻
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大政奉還の知らせを聞いた薩摩、長州の勢は政局の中心を取る為、続々と京の町へ集結していた。
それを警戒し、迎え撃つ為、新撰組に伏見奉行所の警護につくよう命じた旧幕府軍。
「近藤さんを撃った奴を、殺してくる…」
沖田さんは怒りに震え、腰を上げる。
「総司、落ち着け…近藤さんは大丈夫だ…」
副長は咄嗟に腕を掴み、彼を止める。
「何が大丈夫なの? 相手を殺すまで…僕の気は収まらないよ…」
旧幕府軍との会合に出かけていた局長は、その帰り道、突然何者かに狙撃され、重症を負って戻ってきた。
「いい加減にしろ総司!今お前が勝手な行動を取ったら事態が悪化するだろうが!」
制止を振り払おうと、暴れる沖田さんに、怒声を上げる土方さん。
「総司…気持ちはわかるが、今は止めておけ」
斎藤さんは落ち着いた様子で、彼を見つめる。
「沖田さん、私が治します…近藤さんの…側に居てあげてください…」
黙って見ていた私は、沖田さんの側に行き、宥めるように頷いた。
「ゆきちゃん‥‥」
漸く落ち着きを取り戻した沖田さんを、開放する土方さん。
「ゆき、治せるのか?」
幹部達は、興味津々といった様子で、私に視線を集めた。
「傷は一瞬で癒えます…見ていてください」
小太刀を手に取り、自身の手首に一筋の傷を付けた私。
息を呑み、その信じ難い光景に釘付けになる男達。
「凄いな‥‥」
一滴、また一滴。
近藤さんの唇に目掛けて、紅い雫を垂らしていく。
「本当に治ってるぜ‥‥!すげぇ!」
数滴、口内に血を含んだ局長の傷は、数秒で全て塞がった。
「土方さん…これを…」
驚く幹部達を余所に、懐から紅い小瓶を取り出し、副長へ手渡した私。
「ゆき、どういう事だ…これは変若水じゃねぇか」
怪訝そうな表情で、私を睨みつける土方さん。
私は皆に向き直り、 “完全な変若水” について、丁寧に説明した。
「必要なければ、捨てて頂いても構いません…本当は、それが一番ですから…ですが…道半ばで命を落す事が無いとも言い切れません…」
腕に自信を持った彼等に対して、失礼な発言だと十分に理解している。
「‥‥何が言いてぇ」
静かに怒る土方さん。
「どんな形であれ…新撰組の役に立ちたい…例え…間違っていると言われようと…この薬だけは、皆さんに持っていて欲しいんです!」
引く訳にはいかない。
「お願いします…御守だと思って持っていてください…!」
深く頭を下げ、瞼を伏せた。
「土方さん、私からもお願いします」
不意に、肩に感じる掌の温もり。
「あんたもか‥‥」
残りの変若水を副長の前に置き、共に頭を下げる山南さん。
「僕は貰うよ」
沖田さんは躊躇する事無く、薬を一つ手に取った。
「鬼と対峙した時…俺は二度もゆきに助けて貰った…次は、俺が守りたい! だから…俺も貰っとく…」
副長の手前に置かれた薬を、そっと手に取り、懐へ仕舞う平助君。
「持っておくだけなら…俺も御守代りに頂いておく」
山崎さんは紅い小瓶を手に取ると、静かに身を翻した。
「俺はいらねぇや…ゆき…ごめんな」
立ち上がり、部屋を出て行ってしまった永倉さん。
「‥‥貰っておく」
それを黙って見ていた斎藤さんは、薬を一つ手に取ると懐に仕舞った。
「ゆきに貰った、御守だと思って…持っといてやるよ」
私の頭を一撫でし、優しく微笑みながら受け取ってくれた原田さん。
「いいだろう…俺も一つ貰っとく…でもなゆき、二度とこんな真似するんじゃねぇ…この場に居る連中はお前を売ったりしねぇだろうが、こんな力…外に漏れたら一貫の終わりだ」
怒っていた土方さんも、私の気持ちを受け入れてくれた。
「わかりました…土方さん、私の我儘を受入れてくれて…本当に有難うございます」
彼らが全員、部屋を出て行くまで頭を下げ続けた私と山南さん。
新撰組を守れるなら、例え軽蔑されたって構わない。
そんな私の想いを、言葉通り半分背負ってくれた山南さん。
「有難う御座いました…」
私は涙を堪え、彼に深く感謝した。
数日後、新撰組は沖田さんを護衛とし、何者かに狙われている近藤さんの身を、安全な大阪城へと移動させた。
それを警戒し、迎え撃つ為、新撰組に伏見奉行所の警護につくよう命じた旧幕府軍。
「近藤さんを撃った奴を、殺してくる…」
沖田さんは怒りに震え、腰を上げる。
「総司、落ち着け…近藤さんは大丈夫だ…」
副長は咄嗟に腕を掴み、彼を止める。
「何が大丈夫なの? 相手を殺すまで…僕の気は収まらないよ…」
旧幕府軍との会合に出かけていた局長は、その帰り道、突然何者かに狙撃され、重症を負って戻ってきた。
「いい加減にしろ総司!今お前が勝手な行動を取ったら事態が悪化するだろうが!」
制止を振り払おうと、暴れる沖田さんに、怒声を上げる土方さん。
「総司…気持ちはわかるが、今は止めておけ」
斎藤さんは落ち着いた様子で、彼を見つめる。
「沖田さん、私が治します…近藤さんの…側に居てあげてください…」
黙って見ていた私は、沖田さんの側に行き、宥めるように頷いた。
「ゆきちゃん‥‥」
漸く落ち着きを取り戻した沖田さんを、開放する土方さん。
「ゆき、治せるのか?」
幹部達は、興味津々といった様子で、私に視線を集めた。
「傷は一瞬で癒えます…見ていてください」
小太刀を手に取り、自身の手首に一筋の傷を付けた私。
息を呑み、その信じ難い光景に釘付けになる男達。
「凄いな‥‥」
一滴、また一滴。
近藤さんの唇に目掛けて、紅い雫を垂らしていく。
「本当に治ってるぜ‥‥!すげぇ!」
数滴、口内に血を含んだ局長の傷は、数秒で全て塞がった。
「土方さん…これを…」
驚く幹部達を余所に、懐から紅い小瓶を取り出し、副長へ手渡した私。
「ゆき、どういう事だ…これは変若水じゃねぇか」
怪訝そうな表情で、私を睨みつける土方さん。
私は皆に向き直り、 “完全な変若水” について、丁寧に説明した。
「必要なければ、捨てて頂いても構いません…本当は、それが一番ですから…ですが…道半ばで命を落す事が無いとも言い切れません…」
腕に自信を持った彼等に対して、失礼な発言だと十分に理解している。
「‥‥何が言いてぇ」
静かに怒る土方さん。
「どんな形であれ…新撰組の役に立ちたい…例え…間違っていると言われようと…この薬だけは、皆さんに持っていて欲しいんです!」
引く訳にはいかない。
「お願いします…御守だと思って持っていてください…!」
深く頭を下げ、瞼を伏せた。
「土方さん、私からもお願いします」
不意に、肩に感じる掌の温もり。
「あんたもか‥‥」
残りの変若水を副長の前に置き、共に頭を下げる山南さん。
「僕は貰うよ」
沖田さんは躊躇する事無く、薬を一つ手に取った。
「鬼と対峙した時…俺は二度もゆきに助けて貰った…次は、俺が守りたい! だから…俺も貰っとく…」
副長の手前に置かれた薬を、そっと手に取り、懐へ仕舞う平助君。
「持っておくだけなら…俺も御守代りに頂いておく」
山崎さんは紅い小瓶を手に取ると、静かに身を翻した。
「俺はいらねぇや…ゆき…ごめんな」
立ち上がり、部屋を出て行ってしまった永倉さん。
「‥‥貰っておく」
それを黙って見ていた斎藤さんは、薬を一つ手に取ると懐に仕舞った。
「ゆきに貰った、御守だと思って…持っといてやるよ」
私の頭を一撫でし、優しく微笑みながら受け取ってくれた原田さん。
「いいだろう…俺も一つ貰っとく…でもなゆき、二度とこんな真似するんじゃねぇ…この場に居る連中はお前を売ったりしねぇだろうが、こんな力…外に漏れたら一貫の終わりだ」
怒っていた土方さんも、私の気持ちを受け入れてくれた。
「わかりました…土方さん、私の我儘を受入れてくれて…本当に有難うございます」
彼らが全員、部屋を出て行くまで頭を下げ続けた私と山南さん。
新撰組を守れるなら、例え軽蔑されたって構わない。
そんな私の想いを、言葉通り半分背負ってくれた山南さん。
「有難う御座いました…」
私は涙を堪え、彼に深く感謝した。
数日後、新撰組は沖田さんを護衛とし、何者かに狙われている近藤さんの身を、安全な大阪城へと移動させた。