戦乱の刻
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連日連夜、降り続く雪の影響で雪下ろしを余儀なくされた私達。
隊士達は、屋根に登り積もった白い塊を落とすのに精を出していた。
千鶴も落ちてきた雪を、沖田さんと共に端に寄せ、辺りの雪を掻いていた。
「ゆき、悪いが男達は手が離せねぇ…今日の見廻りは頼んでいいか」
申し訳なさそうな土方さん。
「勿論です、行って参ります」
男手が欠くと困るだろうと、頷いた私は、身を翻し、屯所を後にした。
「ふふっ…可愛い…」
町の至る所に立つ、可愛らしい雪だるまを横目に、不貞を働く者が居ないか、町を隈無く見て歩いた。
「あれは…」
賑やかな商店が立ち並ぶ路地。
一軒の茶屋の前で、知った顔を見つけた私は、彼女達に声を掛けた。
「お千ちゃん、君菊さん…こんにちは!」
私を視界に捉え、笑みを浮かべる二人。
「ゆきちゃん! 久々ね」
手を振り、駆け寄ってきた少女。
「ご無沙汰してます」
芸子である筈の君菊は、角屋に居る時と違い、山崎さんの様な装いをしていた。
(やはり‥‥)
私の視線に気付いたのか、お千ちゃんが口を開いた。
「ゆきちゃん、何か聞きたい事が有るみたいね…そうだ、折角だから一緒にお茶を飲みながら話しましょう!」
彼女に手を引かれ、茶屋へと入る。
温かい御茶と、お菓子を食べて落ち着いた処で、私は話を切り出した。
「前に…角屋でお世話になった時に、貴方の着物の家紋を見て気付いたんです‥‥貴方は千姫ですね」
僅かに微笑み、お千ちゃんは素直に頷いた。
「君菊は私に仕える忍なの…黙っててごめんね」
申し訳なさそうに眉を下げる千姫。
「ゆき様、申し訳ありませんでした…君菊は芸子の源氏名…本名は菊月と申します」
美しい従者は、深く頭を下げた。
「いえ、頭を上げてください…貴方達にも何か事情があっての事だと理解しています」
菊月に頭を上げてもらい、千姫に視線を移す。
「ゆきちゃん…貴方は新撰組の方々に、本当の事を話しているの?」
核心を突く問。
「はい…全て話しています」
角屋で初めて会ったあの日、彼女も私の正体に疑念を抱いていたのだろう。
「貴方はやはり…あの日消息を絶った…総本家の姫君、ゆき様なのですね…」
菊月はその場に片膝を付き、千姫は眉間に皺を寄せ、辛そうな表情を浮かべた。
「辛かったでしょう、ゆきちゃん…生きていてくれて本当によかった…」
千姫は涙を浮かべ、私が生きていた事を心から喜んでくれた。
「お千ちゃん…有難う」
それから私達は、ゆっくりと御茶を楽しんだ。
「では、私はこれで失礼します…お千ちゃん…お元気で」
店を出て、別れの挨拶を交わす。
「ゆきちゃん、どうか無事で居てね…千鶴ちゃんにも宜しく伝えておいて」
手を振る二人を背に、私は見廻りの続きを再開し、帰路へとついた。
隊士達は、屋根に登り積もった白い塊を落とすのに精を出していた。
千鶴も落ちてきた雪を、沖田さんと共に端に寄せ、辺りの雪を掻いていた。
「ゆき、悪いが男達は手が離せねぇ…今日の見廻りは頼んでいいか」
申し訳なさそうな土方さん。
「勿論です、行って参ります」
男手が欠くと困るだろうと、頷いた私は、身を翻し、屯所を後にした。
「ふふっ…可愛い…」
町の至る所に立つ、可愛らしい雪だるまを横目に、不貞を働く者が居ないか、町を隈無く見て歩いた。
「あれは…」
賑やかな商店が立ち並ぶ路地。
一軒の茶屋の前で、知った顔を見つけた私は、彼女達に声を掛けた。
「お千ちゃん、君菊さん…こんにちは!」
私を視界に捉え、笑みを浮かべる二人。
「ゆきちゃん! 久々ね」
手を振り、駆け寄ってきた少女。
「ご無沙汰してます」
芸子である筈の君菊は、角屋に居る時と違い、山崎さんの様な装いをしていた。
(やはり‥‥)
私の視線に気付いたのか、お千ちゃんが口を開いた。
「ゆきちゃん、何か聞きたい事が有るみたいね…そうだ、折角だから一緒にお茶を飲みながら話しましょう!」
彼女に手を引かれ、茶屋へと入る。
温かい御茶と、お菓子を食べて落ち着いた処で、私は話を切り出した。
「前に…角屋でお世話になった時に、貴方の着物の家紋を見て気付いたんです‥‥貴方は千姫ですね」
僅かに微笑み、お千ちゃんは素直に頷いた。
「君菊は私に仕える忍なの…黙っててごめんね」
申し訳なさそうに眉を下げる千姫。
「ゆき様、申し訳ありませんでした…君菊は芸子の源氏名…本名は菊月と申します」
美しい従者は、深く頭を下げた。
「いえ、頭を上げてください…貴方達にも何か事情があっての事だと理解しています」
菊月に頭を上げてもらい、千姫に視線を移す。
「ゆきちゃん…貴方は新撰組の方々に、本当の事を話しているの?」
核心を突く問。
「はい…全て話しています」
角屋で初めて会ったあの日、彼女も私の正体に疑念を抱いていたのだろう。
「貴方はやはり…あの日消息を絶った…総本家の姫君、ゆき様なのですね…」
菊月はその場に片膝を付き、千姫は眉間に皺を寄せ、辛そうな表情を浮かべた。
「辛かったでしょう、ゆきちゃん…生きていてくれて本当によかった…」
千姫は涙を浮かべ、私が生きていた事を心から喜んでくれた。
「お千ちゃん…有難う」
それから私達は、ゆっくりと御茶を楽しんだ。
「では、私はこれで失礼します…お千ちゃん…お元気で」
店を出て、別れの挨拶を交わす。
「ゆきちゃん、どうか無事で居てね…千鶴ちゃんにも宜しく伝えておいて」
手を振る二人を背に、私は見廻りの続きを再開し、帰路へとついた。