戦乱の刻
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青く生い茂っていた木々が、赤や黄色に色付きだした頃、京の町では夏の終わりに相応しい大きな祭りが催されていた。
沢山の屋台が軒を連ねる。
賑やかな祭囃子の音に、色鮮やかな提灯の光。
私は初めて見る光景に高揚し、胸を高鳴らせた。
「凄い‥‥!これが "お祭り" なんですね! 早く行きましょう!」
隣りを歩く斎藤さんの腕を強引に掴み、大勢の人混みの中に、勢い良く突入した。
「おい!ゆき!待てよ!」
慌てて叫ぶ、平助君。
「ゆきさん、待って‥‥! 」
沢山の人と、祭囃子の音で、平助君や千鶴が呼び止める声は届かない。
気がつくと、私と斎藤さんは皆と逸れてしまっていた。
「行っちまった…」
溜息を吐きながら呟く平助君。
「全く子供みたいだな…まぁ一と一緒だし、大丈夫だろ!」
永倉さんは、諦めたように頷いた。
「そうだな、俺達も行くか」
気を取り直し、歩を進める原田さん。
「おう!千鶴!いっぱい食っていっぱい遊ぶぞ!」
平助君は千鶴の腕を引き、駆け足で人混みの中へ向かって行った。
「うん!」
彼に合わせるように、走り出す千鶴。
「お前らも走るなよ!皆逸れちまったら一緒に来た意味ないだろう…!」
私達の時と同様、永倉さんの声は既に二人には届かない。
「まったく…俺達も行こうぜ」
遠くを見つめ、諦めたように呟いた原田さん。
「はぁ…結局左之と二人じゃねーか」
永倉さんは愚痴を零しながら、原田さんと二人、賑やかな光の中へ紛れて行った。
一方その頃。
私と斎藤さんは、甘味屋の屋台の前で、出来立ての団子を頬張っていた。
「斎藤さん、このお団子…美味しいですね」
幸せな味に、笑みが溢れる。
「あぁ…上手いな」
皆と逸れてしまった事を、気にも止めず、私達は祭りを存分に楽しんでいた。
「わぁ!凄く綺麗な風鈴‥‥」
耳元に響く、心地いい音色。
「良い音だな‥‥」
瞼を閉じ、耳を澄ますと、熱気が立ち込める人混みの中に、涼しい風が通り抜ける。
その後、甘酒や天麩羅、蕎麦などの出店を満喫した私達。
日用品の露店を見て廻っていると、綺麗な小間物を並べている露店を見つけ、駆け寄った。
「綺麗…!」
所狭しと陳列された小物の中から、可愛らしい桜柄の簪を手に取った私。
「見事な簪だな…ゆき、お前に良く似合うと思う…」
斎藤さんは、柔らかな微笑みを浮かべながら、簪を見つめる。
「斎藤さん…でも、女物の着物は着ないので私には勿体無いですね」
踵を返し、簪を元の場所へ戻そうとしていると、斎藤さんは背後から、私を優しく包み込み、それを取り上げ、勘定をすませた。
「いつか、お前が女の姿で過ごせる日が来たら…これを挿してくれないか…」
差し出された可愛らしい包。
「斎藤さん…」
彼は頬を染め、照れたように微笑んだ。
「有難うございます…大切にします‥‥」
受け取った包を、胸に当て礼を述べる。
店から出ると、偶然、原田さんと永倉さんに遭遇した私達。
平助君と千鶴も見つけ、合流した後は、皆で祭りを楽しんだ。
この時の私は、思ってもいなかった。
斎藤さんと平助君が、新撰組から居なくなってしまうなんて。
一緒に居る事が、当たり前になってしまっていたから。
沢山の屋台が軒を連ねる。
賑やかな祭囃子の音に、色鮮やかな提灯の光。
私は初めて見る光景に高揚し、胸を高鳴らせた。
「凄い‥‥!これが "お祭り" なんですね! 早く行きましょう!」
隣りを歩く斎藤さんの腕を強引に掴み、大勢の人混みの中に、勢い良く突入した。
「おい!ゆき!待てよ!」
慌てて叫ぶ、平助君。
「ゆきさん、待って‥‥! 」
沢山の人と、祭囃子の音で、平助君や千鶴が呼び止める声は届かない。
気がつくと、私と斎藤さんは皆と逸れてしまっていた。
「行っちまった…」
溜息を吐きながら呟く平助君。
「全く子供みたいだな…まぁ一と一緒だし、大丈夫だろ!」
永倉さんは、諦めたように頷いた。
「そうだな、俺達も行くか」
気を取り直し、歩を進める原田さん。
「おう!千鶴!いっぱい食っていっぱい遊ぶぞ!」
平助君は千鶴の腕を引き、駆け足で人混みの中へ向かって行った。
「うん!」
彼に合わせるように、走り出す千鶴。
「お前らも走るなよ!皆逸れちまったら一緒に来た意味ないだろう…!」
私達の時と同様、永倉さんの声は既に二人には届かない。
「まったく…俺達も行こうぜ」
遠くを見つめ、諦めたように呟いた原田さん。
「はぁ…結局左之と二人じゃねーか」
永倉さんは愚痴を零しながら、原田さんと二人、賑やかな光の中へ紛れて行った。
一方その頃。
私と斎藤さんは、甘味屋の屋台の前で、出来立ての団子を頬張っていた。
「斎藤さん、このお団子…美味しいですね」
幸せな味に、笑みが溢れる。
「あぁ…上手いな」
皆と逸れてしまった事を、気にも止めず、私達は祭りを存分に楽しんでいた。
「わぁ!凄く綺麗な風鈴‥‥」
耳元に響く、心地いい音色。
「良い音だな‥‥」
瞼を閉じ、耳を澄ますと、熱気が立ち込める人混みの中に、涼しい風が通り抜ける。
その後、甘酒や天麩羅、蕎麦などの出店を満喫した私達。
日用品の露店を見て廻っていると、綺麗な小間物を並べている露店を見つけ、駆け寄った。
「綺麗…!」
所狭しと陳列された小物の中から、可愛らしい桜柄の簪を手に取った私。
「見事な簪だな…ゆき、お前に良く似合うと思う…」
斎藤さんは、柔らかな微笑みを浮かべながら、簪を見つめる。
「斎藤さん…でも、女物の着物は着ないので私には勿体無いですね」
踵を返し、簪を元の場所へ戻そうとしていると、斎藤さんは背後から、私を優しく包み込み、それを取り上げ、勘定をすませた。
「いつか、お前が女の姿で過ごせる日が来たら…これを挿してくれないか…」
差し出された可愛らしい包。
「斎藤さん…」
彼は頬を染め、照れたように微笑んだ。
「有難うございます…大切にします‥‥」
受け取った包を、胸に当て礼を述べる。
店から出ると、偶然、原田さんと永倉さんに遭遇した私達。
平助君と千鶴も見つけ、合流した後は、皆で祭りを楽しんだ。
この時の私は、思ってもいなかった。
斎藤さんと平助君が、新撰組から居なくなってしまうなんて。
一緒に居る事が、当たり前になってしまっていたから。