戦乱の刻
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京都、三条大橋。
幕府の立てた制札が、三度に渡って引き抜かれ、鴨川に捨てられるという事件が起き、世間を騒がせていた。
其れにより、 "制札を護る" という幕府からの命を受け、隊を三つに分け、警護に当たる事となった新撰組。
私は、原田さんと三条会所の警備を担当していた。
「静かですね‥‥」
誰も居ない橋の上、緊張を解すように口を開いた私。
「ああ…でも、いつ敵が現れるかわかんねぇから…俺の傍から離れるなよ」
原田さんの言葉に、しっかりと頷く。
刹那、三条大橋西詰に土佐藩士出現の報を受けた私達は、急ぎその場へと駆けつけた。
「待て!そいつ等は生け捕りにする!殺すな!」
その場を仕切る原田さんが、大声で指示を飛ばす。
逃げる藩士を追いかけて、町へと差し掛かった私。
「貴方はこの間の‥‥」
懐かしい面影に、違和感を感じていた私は、足を止め、その人物に問い掛けた。
「薫君‥‥‥何故、女の格好を‥‥」
驚いた薫は、観念したのか、着物を脱ぎ捨て当時の面影のままに男の姿を現した。
「ゆき…お前こそ何故新撰組なんかに居るんだ」
僅かに寂しそうな表情を浮かべ、私を見つめる男。
「お前には関係ないだろう…ゆき…下がれ」
私に向かって剣を構える薫との間に、原田さんは庇うように立つ。
「俺はゆきに質問してるんだ…お前等本当に邪魔だなぁ」
襲い来る薫の剣を、槍で受け止めながら攻防する原田さん。
二対一。
卑怯だとは思うけれど、このままでは、土佐藩士にも逃げられてしまう。
そう考えた私は、彼と共に薫目掛けて勢い良く斬り込んでいった。
「チッ…まさかゆきが俺に向かって来るとはね」
頬に負った傷を拭い、掌に付着した血を舐め取ると、薫は不服そうな顔で、闇の中へと消えて行った。
「あいつもお前と同じ鬼か‥‥」
彼が消えた方向を見つめ、口を開く原田さん。
「はい…彼は…千鶴さんの…双子の兄です‥‥」
僅かに驚きの表情を浮かべた男。
私達は暫く口を閉ざし、俯いたまま、その場に佇んでいた。
「そろそろ帰るか‥‥ゆき…行くぞ」
何かを決意したように、原田さんは私の頭を優しく撫で、身を翻す。
屯所へ向かい、歩を進める彼の後を追いながら、私は、千鶴や土方さんに報告するべきか思い悩んでいた。
「ゆき…奴の事は俺が報告するまで二人だけの秘密だ…いいな?」
此方を振り返り、微笑む原田さん。
「原田さんには隠し事…出来ないですね…いつも…本当に有難う御座います」
まるで、全てを見透かされている様な感覚。
嬉しくて、悔しい。
彼の手を取り、両手で包んだ私は、上目遣いに笑ってみせた。
「‥‥‥‥‥‥ゆき、お前」
悪戯は成功。
僅かに頬を赤く染め、固まってしまった男に、"勝った"と、言わんばかりの笑みを浮かべる。
「早く来ないと置いて帰っちゃいますよ」
今度は、私が前を歩き、振り返りざまに微笑んだ。
「お前なぁ‥‥‥」
溜息を吐き、困った表情を浮かべる原田さん。
その後は、追いついてきた彼と一緒に、二人並んで帰路へとついた。
幕府の立てた制札が、三度に渡って引き抜かれ、鴨川に捨てられるという事件が起き、世間を騒がせていた。
其れにより、 "制札を護る" という幕府からの命を受け、隊を三つに分け、警護に当たる事となった新撰組。
私は、原田さんと三条会所の警備を担当していた。
「静かですね‥‥」
誰も居ない橋の上、緊張を解すように口を開いた私。
「ああ…でも、いつ敵が現れるかわかんねぇから…俺の傍から離れるなよ」
原田さんの言葉に、しっかりと頷く。
刹那、三条大橋西詰に土佐藩士出現の報を受けた私達は、急ぎその場へと駆けつけた。
「待て!そいつ等は生け捕りにする!殺すな!」
その場を仕切る原田さんが、大声で指示を飛ばす。
逃げる藩士を追いかけて、町へと差し掛かった私。
「貴方はこの間の‥‥」
懐かしい面影に、違和感を感じていた私は、足を止め、その人物に問い掛けた。
「薫君‥‥‥何故、女の格好を‥‥」
驚いた薫は、観念したのか、着物を脱ぎ捨て当時の面影のままに男の姿を現した。
「ゆき…お前こそ何故新撰組なんかに居るんだ」
僅かに寂しそうな表情を浮かべ、私を見つめる男。
「お前には関係ないだろう…ゆき…下がれ」
私に向かって剣を構える薫との間に、原田さんは庇うように立つ。
「俺はゆきに質問してるんだ…お前等本当に邪魔だなぁ」
襲い来る薫の剣を、槍で受け止めながら攻防する原田さん。
二対一。
卑怯だとは思うけれど、このままでは、土佐藩士にも逃げられてしまう。
そう考えた私は、彼と共に薫目掛けて勢い良く斬り込んでいった。
「チッ…まさかゆきが俺に向かって来るとはね」
頬に負った傷を拭い、掌に付着した血を舐め取ると、薫は不服そうな顔で、闇の中へと消えて行った。
「あいつもお前と同じ鬼か‥‥」
彼が消えた方向を見つめ、口を開く原田さん。
「はい…彼は…千鶴さんの…双子の兄です‥‥」
僅かに驚きの表情を浮かべた男。
私達は暫く口を閉ざし、俯いたまま、その場に佇んでいた。
「そろそろ帰るか‥‥ゆき…行くぞ」
何かを決意したように、原田さんは私の頭を優しく撫で、身を翻す。
屯所へ向かい、歩を進める彼の後を追いながら、私は、千鶴や土方さんに報告するべきか思い悩んでいた。
「ゆき…奴の事は俺が報告するまで二人だけの秘密だ…いいな?」
此方を振り返り、微笑む原田さん。
「原田さんには隠し事…出来ないですね…いつも…本当に有難う御座います」
まるで、全てを見透かされている様な感覚。
嬉しくて、悔しい。
彼の手を取り、両手で包んだ私は、上目遣いに笑ってみせた。
「‥‥‥‥‥‥ゆき、お前」
悪戯は成功。
僅かに頬を赤く染め、固まってしまった男に、"勝った"と、言わんばかりの笑みを浮かべる。
「早く来ないと置いて帰っちゃいますよ」
今度は、私が前を歩き、振り返りざまに微笑んだ。
「お前なぁ‥‥‥」
溜息を吐き、困った表情を浮かべる原田さん。
その後は、追いついてきた彼と一緒に、二人並んで帰路へとついた。