変革の刻
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
先日、町で手に入れた、可愛らしいお菓子を渡しに行こうと、沖田さんの部屋を訪れた私。
彼の部屋の中から、聞き覚えのない声がしたので、先客が居るのかと、身を翻した瞬間、思いも寄らない言葉が耳に届き、私はその場に立ち尽くした。
(沖田さんが労咳‥‥‥)
声の主は、何か薬を薦めているようだったが、 "変若水" と云う言葉が耳に入った私は、勢い良く部屋の中へ飛び込んだ。
「沖田さん駄目です…!」
驚いた沖田さんは、苦しそうに咳き込んでしまい、中に居た客人は私を怪訝そうな表情で凝視する。
「お前は…」
部屋に入った私は、客人の顔を見て、その顔が余りにも千鶴に似ているので、思わず目を見開いた。
「くそっ‥‥」
何かに気付いた様子で、慌てて庭へ飛び出して行く男。
「待って…!」
追いかけようと、身を翻した時には、千鶴に似た男は、既に姿を消していた。
「ゆきちゃん…」
苦しそうな声に、我に返る私。
「沖田さん…!大丈夫ですか‥‥!」
咳込んだ彼の掌に、大量の鮮血。
急がないと手遅れになってしまう。
「ゆきちゃん…僕の病気の事、誰かに言うつもり?」
肩で息を吐きながら、私の袖を掴む沖田さん。
「‥‥‥‥‥‥‥」
彼は黙って俯いてしまった私を、強引に布団の中へ引摺り込んだ。
「誰かに言うつもりならこのまま襲っちゃうよ」
私を組み敷き、お互いの唇が重なってしまうのではないかと思うくらいの距離で意地悪な言葉を並べる沖田さん。
「言いません…絶対に…」
彼の身体から伝わる熱と鼓動を、全身で受け止めながら、自身の秘密を明かした。
「血を飲めって…それじゃあまるで…化物だね…」
私の話を聞いた沖田さんは、酷く哀しそうな表情で、瞼を伏せる。
「何もしないより…可能性はあります…」
長く、重い沈黙。
「お願いします…このまま私の血を飲んでください…」
小さな声で囁き、組み敷かれたまま、私は着物の衿を少し開いた。
「お願いします…」
ゆっくりと、小太刀に手をかける私。
「自分でやる…ゆきちゃん、目を閉じて…」
覚悟を決めたように、沖田さんは私から、優しく刀を取り上げた。
瞼を閉じて、力を抜く。
瞬間、ピリっとした痛みが私を襲ったけれど、すぐに傷は癒えていった。
溢れた滴を、優しく舐め取る沖田さん。
傷が塞がったのを感じ、瞼を開ける。
私の肩に顔を埋めたまま、小さな声で囁く男。
「ゆきちゃん…ごめん…暫くこうしてて…」
私は身体が動かないよう、じっと天井を見つめたまま、切ない時を過ごした。
太陽は茜色に染まり、その姿を遠くの山に沈めようとしている。
「もういいよ…ありがとう…ゆきちゃん」
漸く開放された私は、身体を起こし、彼の様子を伺う。
「体調はどうですか?」
彼は首を傾げ、僅かに頷いた。
「咳は止まった…みたいだね…苦しくないよ」
柔らかく微笑む沖田さん。
「よかった‥‥‥!」
ほっと胸を撫で下ろし、懐に入った金平糖を手に取った私。
「これを…沖田さんに渡そうと思って‥‥」
私からお菓子を受け取った彼は、不思議そうな表情を浮かべる。
「これを僕に?君が買って来てくれたの?」
彼の問に素直に頷き、笑みを零す。
「日頃の感謝の気持ちです…迷惑でなければ受け取ってください」
言い終えた私の頬を、掌で優しく包み込んだ沖田さん。
「僕の方が感謝してるよ…ありがとうゆきちゃん…」
嬉しそうな笑みを浮かべる彼を見つめ、自身の手を大きな掌に重ねる。
その後、星型の甘い菓子を頬張り、幸せな時を過ごした私達。
消えそうになっていた命を、再び灯す事が出来て良かった。
子供のような顔で金平糖を口にする彼を見つめながら、私は密やかに歓喜した。
彼の部屋の中から、聞き覚えのない声がしたので、先客が居るのかと、身を翻した瞬間、思いも寄らない言葉が耳に届き、私はその場に立ち尽くした。
(沖田さんが労咳‥‥‥)
声の主は、何か薬を薦めているようだったが、 "変若水" と云う言葉が耳に入った私は、勢い良く部屋の中へ飛び込んだ。
「沖田さん駄目です…!」
驚いた沖田さんは、苦しそうに咳き込んでしまい、中に居た客人は私を怪訝そうな表情で凝視する。
「お前は…」
部屋に入った私は、客人の顔を見て、その顔が余りにも千鶴に似ているので、思わず目を見開いた。
「くそっ‥‥」
何かに気付いた様子で、慌てて庭へ飛び出して行く男。
「待って…!」
追いかけようと、身を翻した時には、千鶴に似た男は、既に姿を消していた。
「ゆきちゃん…」
苦しそうな声に、我に返る私。
「沖田さん…!大丈夫ですか‥‥!」
咳込んだ彼の掌に、大量の鮮血。
急がないと手遅れになってしまう。
「ゆきちゃん…僕の病気の事、誰かに言うつもり?」
肩で息を吐きながら、私の袖を掴む沖田さん。
「‥‥‥‥‥‥‥」
彼は黙って俯いてしまった私を、強引に布団の中へ引摺り込んだ。
「誰かに言うつもりならこのまま襲っちゃうよ」
私を組み敷き、お互いの唇が重なってしまうのではないかと思うくらいの距離で意地悪な言葉を並べる沖田さん。
「言いません…絶対に…」
彼の身体から伝わる熱と鼓動を、全身で受け止めながら、自身の秘密を明かした。
「血を飲めって…それじゃあまるで…化物だね…」
私の話を聞いた沖田さんは、酷く哀しそうな表情で、瞼を伏せる。
「何もしないより…可能性はあります…」
長く、重い沈黙。
「お願いします…このまま私の血を飲んでください…」
小さな声で囁き、組み敷かれたまま、私は着物の衿を少し開いた。
「お願いします…」
ゆっくりと、小太刀に手をかける私。
「自分でやる…ゆきちゃん、目を閉じて…」
覚悟を決めたように、沖田さんは私から、優しく刀を取り上げた。
瞼を閉じて、力を抜く。
瞬間、ピリっとした痛みが私を襲ったけれど、すぐに傷は癒えていった。
溢れた滴を、優しく舐め取る沖田さん。
傷が塞がったのを感じ、瞼を開ける。
私の肩に顔を埋めたまま、小さな声で囁く男。
「ゆきちゃん…ごめん…暫くこうしてて…」
私は身体が動かないよう、じっと天井を見つめたまま、切ない時を過ごした。
太陽は茜色に染まり、その姿を遠くの山に沈めようとしている。
「もういいよ…ありがとう…ゆきちゃん」
漸く開放された私は、身体を起こし、彼の様子を伺う。
「体調はどうですか?」
彼は首を傾げ、僅かに頷いた。
「咳は止まった…みたいだね…苦しくないよ」
柔らかく微笑む沖田さん。
「よかった‥‥‥!」
ほっと胸を撫で下ろし、懐に入った金平糖を手に取った私。
「これを…沖田さんに渡そうと思って‥‥」
私からお菓子を受け取った彼は、不思議そうな表情を浮かべる。
「これを僕に?君が買って来てくれたの?」
彼の問に素直に頷き、笑みを零す。
「日頃の感謝の気持ちです…迷惑でなければ受け取ってください」
言い終えた私の頬を、掌で優しく包み込んだ沖田さん。
「僕の方が感謝してるよ…ありがとうゆきちゃん…」
嬉しそうな笑みを浮かべる彼を見つめ、自身の手を大きな掌に重ねる。
その後、星型の甘い菓子を頬張り、幸せな時を過ごした私達。
消えそうになっていた命を、再び灯す事が出来て良かった。
子供のような顔で金平糖を口にする彼を見つめながら、私は密やかに歓喜した。