変革の刻
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この日、屯所内では松本 良順による健康診断が行われていた。
「おーい!ゆき!」
呼ばれた方に振り返ると、上半身裸で嬉しそうに手を振る、永倉さんが視界に映る。
「永倉さん‥‥」
白い目で、彼を見つめる私。
「新八っつぁん…ゆきが引いてるぞ」
平助君が私を指差し、永倉さんに忠告する。
「何ぃ!?ゆき!お前、俺のこの肉体美がわかんねぇのか!?」
男は、意味不明なポーズを決めて、自慢気に披露している。
「新八やめとけ‥‥ゆきに嫌われるぞ…大体、健康診断とは診てもらうものであって見せつけるものではない、さっさといけ」
普段、あまり他人に干渉せず、無口な斎藤さんでさえ、彼を止めようとしている。
そんな様子を眺めていたら、なんだか面白くなってきて、自然と笑みが溢れていた。
「何笑ってんだ…あんな汚いもん見なくていい」
背後からそっと手を添えて、私の目を塞ぐ原田さん。
「ほら、もういいぞ…また絡まれないうちに向こうに行っとけ」
視界に光が差し込む。
なんとか瞼を開けた私は、助け舟を出してくれた彼にお礼を伝えて、急いでその場を後にした。
健康診断の結果を聞きに行った、近藤さんの表情が険しくなっていく。
多数の隊士が、病を患っていた。
その原因が、“不衛生” ということだったので、私達は大慌てで、屯所内の掃除をする事にした。
大掃除も一段落し、皆が一息つき出した頃。
私は、山南さんと羅刹隊を隠している邸に向かっていた。
「山南さん、いらっしゃいますか?」
襖の前で、膝を付く。
「ゆきさんですか、どうぞ」
許可が下りたので、控えめに襖を開けた。
「失礼します」
部屋へ入ると、私を気遣い座布団を用意してくれた山南さん。
私はその上に、ゆっくりと腰を下ろした。
「屯所の方が騒がしかったようですけど何かあったんですか?」
大掃除に至った経緯を説明すると、男は面白そうに微笑んだ。
「それで、私に何か相談でも?」
お茶を出しながら、問い掛ける山南さん。
「はい‥‥実は‥‥」
私は、詳しく話していなかった、自分の力について、説明した。
鬼は、闘う力だけではなく、治癒力に優れている。
その中でも、総本家純血の鬼は特別。
人にその血を与えれば、忽ちその人間は鬼と同じ様に、自ら傷を治癒出来てしまう。
「私は総本家、純血の鬼です…私の血を皆さんに与えれば、病の隊士が回復するのは勿論…戦で怪我を負った時にも役立つと考え…相談に来ました」
話終わると、山南さんは少し哀しそうな顔をして口を開いた。
「ゆきさん…それは他の者の代わりに貴方が血を流すという事です‥‥それがどういう事か分かっているんですか?」
いつだって、彼の言う事は正しい。
「分かっています…隊士の事を一番に考える、近藤さんや土方さんは…絶対に反対すると思います…」
私も、馬鹿な考えだと言う事は、十分理解できている。
「当たり前です…それに、力の事が公になれば…貴方は必ず敵に狙われますよ…そんな危険な事は反対です」
それでも、私は新撰組の役に立ちたかった。
「その時は…ここを去ります…新撰組には、決してご迷惑をおかけしないと…約束します!」
剣を振るう以外に、彼らの為に出来る唯一の事。
「お願いします山南さん… 私は皆さんの役に立ちたいんです」
男が幾ら反対しても、私は絶対に引かなかった。
「‥‥‥わかりました、では協力しましょう…私の負けです…ゆきさん」
深い溜息を吐き、降参した山南さん。
申し訳ない気持ちで一杯だったけれど、苦しそうに咳込む沖田さんや、怪我や病に倒れる隊士達を、見たくない。
私が近くにいない時、誰かが怪我や病気をしてしまっても、治すことが出来る。
戦場に出たきり、二度と戻って来ない隊士がいる事を、私は知っていた。
此の血で、彼に薬を作ってもらえれば、少しは安心出来る。
奥の部屋から、大き目の容を手にして、歩んで来る山南さん。
彼に感謝を伝え、私は自らの身体に傷を付けた。
「おーい!ゆき!」
呼ばれた方に振り返ると、上半身裸で嬉しそうに手を振る、永倉さんが視界に映る。
「永倉さん‥‥」
白い目で、彼を見つめる私。
「新八っつぁん…ゆきが引いてるぞ」
平助君が私を指差し、永倉さんに忠告する。
「何ぃ!?ゆき!お前、俺のこの肉体美がわかんねぇのか!?」
男は、意味不明なポーズを決めて、自慢気に披露している。
「新八やめとけ‥‥ゆきに嫌われるぞ…大体、健康診断とは診てもらうものであって見せつけるものではない、さっさといけ」
普段、あまり他人に干渉せず、無口な斎藤さんでさえ、彼を止めようとしている。
そんな様子を眺めていたら、なんだか面白くなってきて、自然と笑みが溢れていた。
「何笑ってんだ…あんな汚いもん見なくていい」
背後からそっと手を添えて、私の目を塞ぐ原田さん。
「ほら、もういいぞ…また絡まれないうちに向こうに行っとけ」
視界に光が差し込む。
なんとか瞼を開けた私は、助け舟を出してくれた彼にお礼を伝えて、急いでその場を後にした。
健康診断の結果を聞きに行った、近藤さんの表情が険しくなっていく。
多数の隊士が、病を患っていた。
その原因が、“不衛生” ということだったので、私達は大慌てで、屯所内の掃除をする事にした。
大掃除も一段落し、皆が一息つき出した頃。
私は、山南さんと羅刹隊を隠している邸に向かっていた。
「山南さん、いらっしゃいますか?」
襖の前で、膝を付く。
「ゆきさんですか、どうぞ」
許可が下りたので、控えめに襖を開けた。
「失礼します」
部屋へ入ると、私を気遣い座布団を用意してくれた山南さん。
私はその上に、ゆっくりと腰を下ろした。
「屯所の方が騒がしかったようですけど何かあったんですか?」
大掃除に至った経緯を説明すると、男は面白そうに微笑んだ。
「それで、私に何か相談でも?」
お茶を出しながら、問い掛ける山南さん。
「はい‥‥実は‥‥」
私は、詳しく話していなかった、自分の力について、説明した。
鬼は、闘う力だけではなく、治癒力に優れている。
その中でも、総本家純血の鬼は特別。
人にその血を与えれば、忽ちその人間は鬼と同じ様に、自ら傷を治癒出来てしまう。
「私は総本家、純血の鬼です…私の血を皆さんに与えれば、病の隊士が回復するのは勿論…戦で怪我を負った時にも役立つと考え…相談に来ました」
話終わると、山南さんは少し哀しそうな顔をして口を開いた。
「ゆきさん…それは他の者の代わりに貴方が血を流すという事です‥‥それがどういう事か分かっているんですか?」
いつだって、彼の言う事は正しい。
「分かっています…隊士の事を一番に考える、近藤さんや土方さんは…絶対に反対すると思います…」
私も、馬鹿な考えだと言う事は、十分理解できている。
「当たり前です…それに、力の事が公になれば…貴方は必ず敵に狙われますよ…そんな危険な事は反対です」
それでも、私は新撰組の役に立ちたかった。
「その時は…ここを去ります…新撰組には、決してご迷惑をおかけしないと…約束します!」
剣を振るう以外に、彼らの為に出来る唯一の事。
「お願いします山南さん… 私は皆さんの役に立ちたいんです」
男が幾ら反対しても、私は絶対に引かなかった。
「‥‥‥わかりました、では協力しましょう…私の負けです…ゆきさん」
深い溜息を吐き、降参した山南さん。
申し訳ない気持ちで一杯だったけれど、苦しそうに咳込む沖田さんや、怪我や病に倒れる隊士達を、見たくない。
私が近くにいない時、誰かが怪我や病気をしてしまっても、治すことが出来る。
戦場に出たきり、二度と戻って来ない隊士がいる事を、私は知っていた。
此の血で、彼に薬を作ってもらえれば、少しは安心出来る。
奥の部屋から、大き目の容を手にして、歩んで来る山南さん。
彼に感謝を伝え、私は自らの身体に傷を付けた。