変革の刻
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可愛らしい金平糖を手にし、私は上機嫌で京の町を歩いていた。
近頃、体調の優れない沖田さんに、少しでも元気になって欲しくて、彼の好物を買いに出掛けていたのだ。
「あれ?お前…風間の言ってた新撰組の女だろ」
突然知らない男に声をかけられ、困惑したが、“風間”という名を耳にしたので、足を止め、男の方に向き直った私。
「誰…ですか…」
見知らぬ男は、私の行く道を塞いで、意味深な笑みを浮かべる。
「俺は 不知火 匡 …ちょっとついて来いよ」
不意に腕を掴まれ、驚いた私。
「えっ‥‥あの‥‥!」
強引に、引き摺られる。
「不知火さん…離してください!」
抵抗してみるも、力強いその腕には、到底敵いそうにもない。
「まぁ待てよ、もう少しだって…お、ほら…!いたいた! 」
不知火さんが、指差す方向に、目線を移す。
視線の先には、町外れの関所の前に佇む、風間と天霧の姿が確認できた。
「不知火‥‥何故貴様がこの女を連れている」
不機嫌そうに口を開く風間さん。
「まぁそう怖い顔するなって…態々連れて来てやったんだぜ!」
静かに怒る男の背を、気にする様子もなく、叩いて見せる不知火さん。
怖いもの知らずだ。
「貴様に…その様な事を頼んだ覚えは無い」
益々機嫌を損ねた様子の風間さん。
「なんだよ折角連れて来たのに…まぁいいや、俺様は忙しいんで、後は好きにしてくれ!じゃーな」
不知火さんは私を彼らに手渡すと、町の方へと戻って行った。
「待て!不知火!」
風間さんの怒声が、虚しくこの場に響き渡る。
「一ノ瀬殿、申し訳ない」
溜息をつきながら深く頭を下げる天霧さん。
「天霧、少し離れる‥‥」
そう云うと、一瞬だけ私を見遣り、背を向け歩き出す風間さん。
「置いて行くぞ、ついて来い」
どうやら送ってくれる様子。
「はい‥‥!」
意外にも、屯所の方角ヘ向けて歩き出した彼の後を、私は慌てて追いかけた。
帰り道、風間さんが静かに口を開く。
「貴様の言っていた誓いとはなんだ」
突然の問に、少し驚いた私。
それでも、同胞である彼には、本当の事を話しておこうと思った。
「‥‥里が滅びた日の真実を知り、私達の一族を再興する事です」
私を試すように、真っ直ぐ此方を見据える風間さん。
「‥‥それなら何故…貴様は奴らと共に居る」
表情一つ変えず、風間さんは私に問い掛ける。
「確かに‥‥両親を亡き者にし、里を滅ぼした人間は憎いです…でも…それは、あの人達とは関係ありません!」
私も、怯むことなく視線を絡ます。
「新撰組と私は “雪村 綱道” を探しています…目的は違えど道は同じです…お世話になっている恩も返さなければなりません…」
私の真意を探っているのか、男は鋭い視線を送り続ける。
絶対に、目を逸らしてはいけない気がして、彼が口を開くまで、その双眼を睨み続けた。
「フッ…面白い女だ…ならば、やってみせろ」
不意に見せた笑顔が、嘘のように優しくて、ほんの一瞬、時が止まった気がした。
「認めてくれるんですか‥‥?」
私の問いかけに答えが返ってくる事はなく、気がついた時には、腕の中に閉じ込められていた。
「ゆき…攫われたくなければ、あまり俺を待たせるな…」
耳元で囁く彼の低い声に、心臓が飛び跳ねる。
彼の肩越しに映るのは、満開の桜。
私を開放し、背を向けた彼は、風に舞う桜の花弁に紛れ、消えて行った。
残された私は、囚われたまま動けずにいた。
近頃、体調の優れない沖田さんに、少しでも元気になって欲しくて、彼の好物を買いに出掛けていたのだ。
「あれ?お前…風間の言ってた新撰組の女だろ」
突然知らない男に声をかけられ、困惑したが、“風間”という名を耳にしたので、足を止め、男の方に向き直った私。
「誰…ですか…」
見知らぬ男は、私の行く道を塞いで、意味深な笑みを浮かべる。
「俺は 不知火 匡 …ちょっとついて来いよ」
不意に腕を掴まれ、驚いた私。
「えっ‥‥あの‥‥!」
強引に、引き摺られる。
「不知火さん…離してください!」
抵抗してみるも、力強いその腕には、到底敵いそうにもない。
「まぁ待てよ、もう少しだって…お、ほら…!いたいた! 」
不知火さんが、指差す方向に、目線を移す。
視線の先には、町外れの関所の前に佇む、風間と天霧の姿が確認できた。
「不知火‥‥何故貴様がこの女を連れている」
不機嫌そうに口を開く風間さん。
「まぁそう怖い顔するなって…態々連れて来てやったんだぜ!」
静かに怒る男の背を、気にする様子もなく、叩いて見せる不知火さん。
怖いもの知らずだ。
「貴様に…その様な事を頼んだ覚えは無い」
益々機嫌を損ねた様子の風間さん。
「なんだよ折角連れて来たのに…まぁいいや、俺様は忙しいんで、後は好きにしてくれ!じゃーな」
不知火さんは私を彼らに手渡すと、町の方へと戻って行った。
「待て!不知火!」
風間さんの怒声が、虚しくこの場に響き渡る。
「一ノ瀬殿、申し訳ない」
溜息をつきながら深く頭を下げる天霧さん。
「天霧、少し離れる‥‥」
そう云うと、一瞬だけ私を見遣り、背を向け歩き出す風間さん。
「置いて行くぞ、ついて来い」
どうやら送ってくれる様子。
「はい‥‥!」
意外にも、屯所の方角ヘ向けて歩き出した彼の後を、私は慌てて追いかけた。
帰り道、風間さんが静かに口を開く。
「貴様の言っていた誓いとはなんだ」
突然の問に、少し驚いた私。
それでも、同胞である彼には、本当の事を話しておこうと思った。
「‥‥里が滅びた日の真実を知り、私達の一族を再興する事です」
私を試すように、真っ直ぐ此方を見据える風間さん。
「‥‥それなら何故…貴様は奴らと共に居る」
表情一つ変えず、風間さんは私に問い掛ける。
「確かに‥‥両親を亡き者にし、里を滅ぼした人間は憎いです…でも…それは、あの人達とは関係ありません!」
私も、怯むことなく視線を絡ます。
「新撰組と私は “雪村 綱道” を探しています…目的は違えど道は同じです…お世話になっている恩も返さなければなりません…」
私の真意を探っているのか、男は鋭い視線を送り続ける。
絶対に、目を逸らしてはいけない気がして、彼が口を開くまで、その双眼を睨み続けた。
「フッ…面白い女だ…ならば、やってみせろ」
不意に見せた笑顔が、嘘のように優しくて、ほんの一瞬、時が止まった気がした。
「認めてくれるんですか‥‥?」
私の問いかけに答えが返ってくる事はなく、気がついた時には、腕の中に閉じ込められていた。
「ゆき…攫われたくなければ、あまり俺を待たせるな…」
耳元で囁く彼の低い声に、心臓が飛び跳ねる。
彼の肩越しに映るのは、満開の桜。
私を開放し、背を向けた彼は、風に舞う桜の花弁に紛れ、消えて行った。
残された私は、囚われたまま動けずにいた。