変革の刻
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意識が戻った山南さんは、いつもの優しい表情で、それは変若水の改良が成功していた事を意味した。
薬を与える事によって、意識を保てるようになった羅刹達。
腕も完治した山南さんは、彼等を率いて、“羅刹隊”を結成した。
それは、勿論極秘。
信頼出来る幹部達以外には、絶対に隠し通さなければならなかったので、土方さんの指示で、山南さんはあの日、切腹して亡くなった事になっていた。
「山南さん、失礼します」
屯所から、少し離れた場所にある屋敷に足を踏み入れる。
「ゆきさんですか…どうぞ」
落ち着きを取り戻した男は、穏やかな笑みを浮かべていた。
「少しでもいいので…食べてください」
困った顔で、昼駒を受け取る山南さん。
「あまり腹は空かないのですが…折角なので頂きます」
彼が食事をしている間、変若水を作っている器具を、ぼんやりと見つめていた。
「ゆきさん、それが気になりますか?」
箸を置き、私を見つめる山南さん。
「あ、いえ…少し見ていただけです」
視線を彼に戻し、笑顔を取り繕う。
「私は…間違っているんでしょうね」
山南さんは、少し哀しそうに語り始めた。
「変若水を改良し…それによって人間を羅刹に変えているんです…それなのに‥‥私は今、喜びを感じています」
私は意味を理解出来ず、首を傾げる。
「羅刹になってしまったのに…ですか?」
器具を見つめ、彼は溜息を吐いた。
「そうです…羅刹となったことで、また剣を握れる…皆と共に闘える…武士としてこれ程、嬉しい事はありません」
心が、苦しくなる。
"武士として"
その言葉は、私をまた酷く後悔させた。
もし、私が全てを明かし鬼の力を使っていたら。
今更考えても仕方ないのに、考えずにはいられなかった。
そんな私の様子を、静かに見つめていた山南さんが口を開く。
「ゆきさん…貴方は羅刹の私は嫌いですか?」
切ない問に、声を荒らげる私。
「そんな筈ありません!どんな山南さんでも私は尊敬していますし…何も変わりません!」
眉を下げ、軽く頷いた山南さん。
「では…他の皆さんも同じなのでは? そう思いませんか?」
私は言葉の意味を理解し、頷いた。
「そうだと思います…誰かが羅刹になったからといって…その人に対する気持ちや、態度を変えるつもりはありません」
男はゆっくりと、首を縦に振る。
「そうです…私も他の幹部の方々も同じなんです…貴方も、一人で思い悩んでいるなら…皆さんに、全て打ち明けて、楽になった方がいいと思いますよ…」
驚いた私は、握った拳に力を込める。
「それは‥‥」
見透かされていた。
「貴方が皆さんに何か隠している事は…前から気付いてましたよ」
この人には、敵わない。
「山南さん‥‥わかりました、少し考えてみます」
真っ直ぐ、彼を見つめ決意した。
「貴方にとって一番いいと思える選択をしてくださいね」
穏やかな表情へと戻った山南さん。
「はい、有難うございます」
私も、精一杯の笑顔を作って、それに応えた。
「いえ…貴方が笑顔でいてくれる事が、私の楽しみでもありますから」
ごめんなさい、山南さん。
私は、信頼が足りていなかったのかも知れません。
信じます、新撰組を。
話します、私の全てを。
薬を与える事によって、意識を保てるようになった羅刹達。
腕も完治した山南さんは、彼等を率いて、“羅刹隊”を結成した。
それは、勿論極秘。
信頼出来る幹部達以外には、絶対に隠し通さなければならなかったので、土方さんの指示で、山南さんはあの日、切腹して亡くなった事になっていた。
「山南さん、失礼します」
屯所から、少し離れた場所にある屋敷に足を踏み入れる。
「ゆきさんですか…どうぞ」
落ち着きを取り戻した男は、穏やかな笑みを浮かべていた。
「少しでもいいので…食べてください」
困った顔で、昼駒を受け取る山南さん。
「あまり腹は空かないのですが…折角なので頂きます」
彼が食事をしている間、変若水を作っている器具を、ぼんやりと見つめていた。
「ゆきさん、それが気になりますか?」
箸を置き、私を見つめる山南さん。
「あ、いえ…少し見ていただけです」
視線を彼に戻し、笑顔を取り繕う。
「私は…間違っているんでしょうね」
山南さんは、少し哀しそうに語り始めた。
「変若水を改良し…それによって人間を羅刹に変えているんです…それなのに‥‥私は今、喜びを感じています」
私は意味を理解出来ず、首を傾げる。
「羅刹になってしまったのに…ですか?」
器具を見つめ、彼は溜息を吐いた。
「そうです…羅刹となったことで、また剣を握れる…皆と共に闘える…武士としてこれ程、嬉しい事はありません」
心が、苦しくなる。
"武士として"
その言葉は、私をまた酷く後悔させた。
もし、私が全てを明かし鬼の力を使っていたら。
今更考えても仕方ないのに、考えずにはいられなかった。
そんな私の様子を、静かに見つめていた山南さんが口を開く。
「ゆきさん…貴方は羅刹の私は嫌いですか?」
切ない問に、声を荒らげる私。
「そんな筈ありません!どんな山南さんでも私は尊敬していますし…何も変わりません!」
眉を下げ、軽く頷いた山南さん。
「では…他の皆さんも同じなのでは? そう思いませんか?」
私は言葉の意味を理解し、頷いた。
「そうだと思います…誰かが羅刹になったからといって…その人に対する気持ちや、態度を変えるつもりはありません」
男はゆっくりと、首を縦に振る。
「そうです…私も他の幹部の方々も同じなんです…貴方も、一人で思い悩んでいるなら…皆さんに、全て打ち明けて、楽になった方がいいと思いますよ…」
驚いた私は、握った拳に力を込める。
「それは‥‥」
見透かされていた。
「貴方が皆さんに何か隠している事は…前から気付いてましたよ」
この人には、敵わない。
「山南さん‥‥わかりました、少し考えてみます」
真っ直ぐ、彼を見つめ決意した。
「貴方にとって一番いいと思える選択をしてくださいね」
穏やかな表情へと戻った山南さん。
「はい、有難うございます」
私も、精一杯の笑顔を作って、それに応えた。
「いえ…貴方が笑顔でいてくれる事が、私の楽しみでもありますから」
ごめんなさい、山南さん。
私は、信頼が足りていなかったのかも知れません。
信じます、新撰組を。
話します、私の全てを。