変革の刻
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深夜、誰かが廊下を歩く気配がして、目が覚めた私。
(誰‥‥)
相手に気付かれないように、そっと襖を開ける。
視界に飛び込んで来たのは、隠れるように歩を進める千鶴の姿だった。
(こんな時間に…一体何を‥‥)
気になった私は、気付かれないよう、慎重に彼女の後をつける。
辿り着いたのは、山南さんが変若水の研究に使っている、屋敷だった。
(こんな夜中に何故‥‥千鶴さんが…)
静かな屋敷の中から、何かが割れる音と、女の悲鳴が木魂する。
「千鶴さん!」
地面を蹴り、叫び声のした方へ急いで駆け付ける。
部屋の襖を勢い良く開けたその瞬間、私の視界には、千鶴の首を絞める羅刹が飛び込んできた。
「羅刹…!…違う…そんな‥‥まさか山南さん‥‥!」
狂気に暴れる黒い影は、紛れも無く、私の尊敬する" 山南 敬助 "だった。
「しっかりして!千鶴さんを離してください…山南さん!」
このままでは千鶴が殺られてしまう。
私は、鬼の力を開放して、山南さんの腕から彼女を引き剥がし、刀の鞘で急所を突いた。
男は床に倒れ、苦しそうに藻掻いている。
「おい!どうした!」
騒ぎを聞きつけ、駆け付けてきた幹部達はその場に立ち竦んだ。
「山南さん…これは一体どういう事だ!」
土方さんは、珍しく焦りの色を見せ、私を睨みつける。
「まさか変若水を‥‥なんでだ山南さん!」
皆は困惑した表情を浮かべながらも、目の前の羅刹を数人で取り抑えた。
鋭い視線を向け、怒りを露にする土方さん。
「お前達、これはどういう事だ…説明してもらう…先に俺の部屋で待ってろ!」
副長は、私達を怒鳴り付け、他の幹部達に指示を飛ばす。
「平助!総司!山南さんを押さえてろ!」
言われた通り私は千鶴を連れ、部屋を後にした。
「左之助、新八は外を見張れ!絶対に誰も近づけるんじゃねぇ!」
足取りの覚束ない千鶴さんを支えながら、土方さんの部屋まで行き、その場で待機した。
「千鶴さん…大丈夫?」
俯いたまま、押し黙る千鶴の背を、子供を落ち着かせる様に、優しく撫で続けた。
漸く、静けさを取り戻した屯所内に、激しい怒りを打ち付ける様な足音が、響き渡る。
「どういう事か説明しろ…話によってはお前達を斬る」
千鶴は山南さんが変若水を飲んだ経緯を説明し始めた。
「何だよそれ!俺はあの人を心から尊敬してるんだ!他の隊士達だって‥‥‥くそっ!」
泣きそうな表情で、拳を震わせる土方さん。
「ゆき…疑って悪かった…山南さんを止めてくれて助かった」
頭を下げる副長に、慌てた私。
「やめて下さい…!私が…あと少し…早く追いついていたら‥‥」
悔しさが込み上げてくる。
「ゆきさん…それは違います…! 私が…何も出来なかったから…土方さん、ゆきさん…ごめんなさい…」
涙を流し、自分を責める千鶴。
「千鶴さん…あなたは悪くないです‥‥誰も…悪くない…」
肩を支え、着物の袖で彼女の涙を拭った。
「ゆきの言う通りだ…千鶴、お前のせいじゃねぇ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
そのまま、三人は何も言えず、暫くの間、沈黙が続いた。
「今日はもう休め、俺は戻る…ゆき、後を頼む」
立ち上がり、部屋を出ていく副長を見送り、私達も席を立った。
「行きましょう…」
泣きやまない千鶴を部屋まで送り、自室に戻った私。
床につき、目を閉じてみる。
羅刹と化した山南さんの顔が、頭の中を何度も巡る。
その日も結局、眠れない夜を過ごすこととなった。
(誰‥‥)
相手に気付かれないように、そっと襖を開ける。
視界に飛び込んで来たのは、隠れるように歩を進める千鶴の姿だった。
(こんな時間に…一体何を‥‥)
気になった私は、気付かれないよう、慎重に彼女の後をつける。
辿り着いたのは、山南さんが変若水の研究に使っている、屋敷だった。
(こんな夜中に何故‥‥千鶴さんが…)
静かな屋敷の中から、何かが割れる音と、女の悲鳴が木魂する。
「千鶴さん!」
地面を蹴り、叫び声のした方へ急いで駆け付ける。
部屋の襖を勢い良く開けたその瞬間、私の視界には、千鶴の首を絞める羅刹が飛び込んできた。
「羅刹…!…違う…そんな‥‥まさか山南さん‥‥!」
狂気に暴れる黒い影は、紛れも無く、私の尊敬する" 山南 敬助 "だった。
「しっかりして!千鶴さんを離してください…山南さん!」
このままでは千鶴が殺られてしまう。
私は、鬼の力を開放して、山南さんの腕から彼女を引き剥がし、刀の鞘で急所を突いた。
男は床に倒れ、苦しそうに藻掻いている。
「おい!どうした!」
騒ぎを聞きつけ、駆け付けてきた幹部達はその場に立ち竦んだ。
「山南さん…これは一体どういう事だ!」
土方さんは、珍しく焦りの色を見せ、私を睨みつける。
「まさか変若水を‥‥なんでだ山南さん!」
皆は困惑した表情を浮かべながらも、目の前の羅刹を数人で取り抑えた。
鋭い視線を向け、怒りを露にする土方さん。
「お前達、これはどういう事だ…説明してもらう…先に俺の部屋で待ってろ!」
副長は、私達を怒鳴り付け、他の幹部達に指示を飛ばす。
「平助!総司!山南さんを押さえてろ!」
言われた通り私は千鶴を連れ、部屋を後にした。
「左之助、新八は外を見張れ!絶対に誰も近づけるんじゃねぇ!」
足取りの覚束ない千鶴さんを支えながら、土方さんの部屋まで行き、その場で待機した。
「千鶴さん…大丈夫?」
俯いたまま、押し黙る千鶴の背を、子供を落ち着かせる様に、優しく撫で続けた。
漸く、静けさを取り戻した屯所内に、激しい怒りを打ち付ける様な足音が、響き渡る。
「どういう事か説明しろ…話によってはお前達を斬る」
千鶴は山南さんが変若水を飲んだ経緯を説明し始めた。
「何だよそれ!俺はあの人を心から尊敬してるんだ!他の隊士達だって‥‥‥くそっ!」
泣きそうな表情で、拳を震わせる土方さん。
「ゆき…疑って悪かった…山南さんを止めてくれて助かった」
頭を下げる副長に、慌てた私。
「やめて下さい…!私が…あと少し…早く追いついていたら‥‥」
悔しさが込み上げてくる。
「ゆきさん…それは違います…! 私が…何も出来なかったから…土方さん、ゆきさん…ごめんなさい…」
涙を流し、自分を責める千鶴。
「千鶴さん…あなたは悪くないです‥‥誰も…悪くない…」
肩を支え、着物の袖で彼女の涙を拭った。
「ゆきの言う通りだ…千鶴、お前のせいじゃねぇ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
そのまま、三人は何も言えず、暫くの間、沈黙が続いた。
「今日はもう休め、俺は戻る…ゆき、後を頼む」
立ち上がり、部屋を出ていく副長を見送り、私達も席を立った。
「行きましょう…」
泣きやまない千鶴を部屋まで送り、自室に戻った私。
床につき、目を閉じてみる。
羅刹と化した山南さんの顔が、頭の中を何度も巡る。
その日も結局、眠れない夜を過ごすこととなった。