始まりの刻
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
人間達が去った後、会合は夜まで続き、帰ろうとした頃には、辺りは闇に包まれていた。
「それじゃあ…またね…! 薫君…千鶴ちゃん」
私は、名残惜しい気持ちを抑え、二人に別れを告げた。
「うん! また遊ぼうね!」
優しい笑顔で手を振ってくれる千鶴ちゃん。
「ゆきちゃん…気をつけて帰ってね」
薫君も少し寂しそうに手を振ってくれた。
別れの挨拶を済ませ、帰路へと歩を進めようとした瞬間。
『ドオオォォンッ!』
大砲の音が響き渡る。
闇は、一瞬で燃え盛る炎の色へと変化した。
「な…に…?」
私の感じた不安が現実となってしまった。
「キャァァァァァ!」
先程までの平穏が嘘だったかのように、民は突然の襲撃に混乱し、逃げ惑う。
容赦なく襲ってくる大砲と炎に巻かれた私は、その場から動けなくなっていた。
「ゆき!!!」
固まる私を、炎の渦から引摺り出す母。
「ゆき! 今すぐ森の方へ逃げなさい!」
彼女の強い口調に、我にかえった私。
「お母様は‥‥? お父様も‥‥一緒に‥‥」
この場から逃げようと、母の手を引き父の姿を探す。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
母は口を閉じたまま、私を抱き上げると、森の奥深くに向け走り出した。
「お父様は今…民と共に戦っています…民を見捨てて逃げるなど…絶対に出来ません!」
息を切らし、私に言い聞かせる母。
「お母様‥‥ それなら私も連れて行って‥‥」
私は、溢れる涙を拭いながら懇願した。
「成りません‥‥‥‥」
母は、私を優しく地面に降ろすと、次の瞬間強く突き放した。
「さあ…行きなさい!」
彼女の足元に必死に縋りつく。
「嫌だ‥‥嫌です…お母様!」
母は此方を見ようともせず、背を向けたまま口を開いた。
「大切な貴方を…道連れになど出来ません‥‥どうか…お願い…貴方を心から愛し…守ってくださる人を見つけて…共に鬼達を導いてください…」
振り向いた母の瞳は、涙で濡れていた。
「ゆき…必ず生き延びて…幸せになってください…私も…お父様も…貴方を心から愛しています‥‥」
言い終えると同時に、背中を押された私は、零れる涙をそのままに、強く地面を蹴った。
「お母様‥‥‥お父様‥‥‥お母様…お…父様…」
もう二度と逢う事は叶わない。
振り返って、今すぐ両親の元へ戻りたい気持ちを抑え、懸命に走った。
何故、平穏だった里が襲われたのか。
何故、皆殺されなくてはならなかったのか。
いつの日か真実を知り、一族を再興する。
ぼんやりと浮かぶ月を見上げ、私は父と母、そして自らの心に固く誓いを立てた。
「それじゃあ…またね…! 薫君…千鶴ちゃん」
私は、名残惜しい気持ちを抑え、二人に別れを告げた。
「うん! また遊ぼうね!」
優しい笑顔で手を振ってくれる千鶴ちゃん。
「ゆきちゃん…気をつけて帰ってね」
薫君も少し寂しそうに手を振ってくれた。
別れの挨拶を済ませ、帰路へと歩を進めようとした瞬間。
『ドオオォォンッ!』
大砲の音が響き渡る。
闇は、一瞬で燃え盛る炎の色へと変化した。
「な…に…?」
私の感じた不安が現実となってしまった。
「キャァァァァァ!」
先程までの平穏が嘘だったかのように、民は突然の襲撃に混乱し、逃げ惑う。
容赦なく襲ってくる大砲と炎に巻かれた私は、その場から動けなくなっていた。
「ゆき!!!」
固まる私を、炎の渦から引摺り出す母。
「ゆき! 今すぐ森の方へ逃げなさい!」
彼女の強い口調に、我にかえった私。
「お母様は‥‥? お父様も‥‥一緒に‥‥」
この場から逃げようと、母の手を引き父の姿を探す。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
母は口を閉じたまま、私を抱き上げると、森の奥深くに向け走り出した。
「お父様は今…民と共に戦っています…民を見捨てて逃げるなど…絶対に出来ません!」
息を切らし、私に言い聞かせる母。
「お母様‥‥ それなら私も連れて行って‥‥」
私は、溢れる涙を拭いながら懇願した。
「成りません‥‥‥‥」
母は、私を優しく地面に降ろすと、次の瞬間強く突き放した。
「さあ…行きなさい!」
彼女の足元に必死に縋りつく。
「嫌だ‥‥嫌です…お母様!」
母は此方を見ようともせず、背を向けたまま口を開いた。
「大切な貴方を…道連れになど出来ません‥‥どうか…お願い…貴方を心から愛し…守ってくださる人を見つけて…共に鬼達を導いてください…」
振り向いた母の瞳は、涙で濡れていた。
「ゆき…必ず生き延びて…幸せになってください…私も…お父様も…貴方を心から愛しています‥‥」
言い終えると同時に、背中を押された私は、零れる涙をそのままに、強く地面を蹴った。
「お母様‥‥‥お父様‥‥‥お母様…お…父様…」
もう二度と逢う事は叶わない。
振り返って、今すぐ両親の元へ戻りたい気持ちを抑え、懸命に走った。
何故、平穏だった里が襲われたのか。
何故、皆殺されなくてはならなかったのか。
いつの日か真実を知り、一族を再興する。
ぼんやりと浮かぶ月を見上げ、私は父と母、そして自らの心に固く誓いを立てた。