変革の刻
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池田屋事件の噂は、京の町中に広がり、人々は私達に、一目置くようになっていた。
先の事件での功績が、幕府に認められ、会津兵と共に、長州藩を警戒する為、九条河原へ布陣する事となった新撰組。
「ゆき、交代だ」
この日の当番は、私。
交代を知らせる男が、優しい笑みを浮かべて歩んで来る。
「原田さん、お疲れ様です」
私は鉢巻を取り、頭を下げた。
「気をつけて帰れよ」
労いの言葉を掛けてくれる原田さん。
無事に、警備を終えた私は、寄り道する事なく、屯所へと戻った。
「疲れた…」
顔を洗おうと思い、井戸へ向かっている途中、夕餉の支度をしていた千鶴が、視界に入る。
「千鶴さん、手伝います」
一人では大変そうだったので、手伝う事にした。
「ゆきさん…風間さんの事なんですが…」
瞳の奥を不安げに揺らしながら、語り出す千鶴。
「実は私…幼少の頃から傷の治りが早くて‥‥あの人に同胞だと言われた時…」
「千鶴さん…」
彼女の言葉を遮り、問い掛ける。
「千鶴さんは…どうしたいですか?」
少し驚いた様子の千鶴。
「…ここに居たいです」
彼女は小さな声で呟き、睫毛を伏せた。
「千鶴さん…それなら貴方は、何も考えず…此処に居ればいいんですよ」
俯いた千鶴の顔を、覗き込むように語り掛ける私。
「ゆきさん‥でも…私がここに居る事で…皆さんに迷惑がかかったら‥‥」
彼女は顔を上げ、哀しそうな表情で視線を合わす。
「私も同じです…千鶴さん…貴方と私は同じなんです‥‥」
私は髪を掬い、千鶴の頭を優しく撫でた。
「 私と…ゆきさんが…同じ‥‥」
彼女は目を見開き、私を凝視する。
「見ていてください…」
私は微笑みを浮かべ、自分の腕を少しだけ切って見せた。
「ゆきさん!」
慌て出す千鶴。
けれど、目の前で切った傷が一瞬で塞がったのを見て、彼女は言葉を失った。
「貴方と同じでしょ?」
私と、腕から消えた傷を交互に見遣る。
「ゆきさん…有難うございます…」
彼女はそれ以上、弱音を口にしなかった。
「もし…風間達が新撰組に何かするつもりなら…私が、それを止めてみせます… だから…千鶴さんは安心して、此処に居てください」
深く頷き、微笑む千鶴。
風間は次に会った時、私達を連れて行くと言っていた。
けれど、千鶴はここに居たいと願っている。
私も同じ。
誓いを果たす前に、鬼達の処へ戻る気はない。
(きちんとお話すれば…きっと、分かって下さる筈…)
そう心で呟き、お腹を空かしてる隊士の為、夕餉の仕度を再開した。
先の事件での功績が、幕府に認められ、会津兵と共に、長州藩を警戒する為、九条河原へ布陣する事となった新撰組。
「ゆき、交代だ」
この日の当番は、私。
交代を知らせる男が、優しい笑みを浮かべて歩んで来る。
「原田さん、お疲れ様です」
私は鉢巻を取り、頭を下げた。
「気をつけて帰れよ」
労いの言葉を掛けてくれる原田さん。
無事に、警備を終えた私は、寄り道する事なく、屯所へと戻った。
「疲れた…」
顔を洗おうと思い、井戸へ向かっている途中、夕餉の支度をしていた千鶴が、視界に入る。
「千鶴さん、手伝います」
一人では大変そうだったので、手伝う事にした。
「ゆきさん…風間さんの事なんですが…」
瞳の奥を不安げに揺らしながら、語り出す千鶴。
「実は私…幼少の頃から傷の治りが早くて‥‥あの人に同胞だと言われた時…」
「千鶴さん…」
彼女の言葉を遮り、問い掛ける。
「千鶴さんは…どうしたいですか?」
少し驚いた様子の千鶴。
「…ここに居たいです」
彼女は小さな声で呟き、睫毛を伏せた。
「千鶴さん…それなら貴方は、何も考えず…此処に居ればいいんですよ」
俯いた千鶴の顔を、覗き込むように語り掛ける私。
「ゆきさん‥でも…私がここに居る事で…皆さんに迷惑がかかったら‥‥」
彼女は顔を上げ、哀しそうな表情で視線を合わす。
「私も同じです…千鶴さん…貴方と私は同じなんです‥‥」
私は髪を掬い、千鶴の頭を優しく撫でた。
「 私と…ゆきさんが…同じ‥‥」
彼女は目を見開き、私を凝視する。
「見ていてください…」
私は微笑みを浮かべ、自分の腕を少しだけ切って見せた。
「ゆきさん!」
慌て出す千鶴。
けれど、目の前で切った傷が一瞬で塞がったのを見て、彼女は言葉を失った。
「貴方と同じでしょ?」
私と、腕から消えた傷を交互に見遣る。
「ゆきさん…有難うございます…」
彼女はそれ以上、弱音を口にしなかった。
「もし…風間達が新撰組に何かするつもりなら…私が、それを止めてみせます… だから…千鶴さんは安心して、此処に居てください」
深く頷き、微笑む千鶴。
風間は次に会った時、私達を連れて行くと言っていた。
けれど、千鶴はここに居たいと願っている。
私も同じ。
誓いを果たす前に、鬼達の処へ戻る気はない。
(きちんとお話すれば…きっと、分かって下さる筈…)
そう心で呟き、お腹を空かしてる隊士の為、夕餉の仕度を再開した。