運命の刻
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私を捉える真紅の瞳。
「其処の女は何だ」
まるで、己以外の全てを見下したような、鋭く冷酷な瞳を此方に向け、口を開く。
「貴様‥‥死にたいのか」
油断すれば、怯んでしまいそうになる威圧感。
このままでは勝ち目はないと判断した私は、鬼の力を開放するしかないと、静かに目を閉じた。
「風間殿」
瞬間、二人の間に割り込んできた見知らぬ男。
「皆さん申し訳ない…私は天霧と申します…私達はあなた方と争うつもりはありません…この場は引いて頂きたい」
耳に飛び込んで来た言葉を聞き、一先ず力の開放を止め、瞼を開けた。
天霧と名乗った男は、丁寧にお辞儀をしながら確かに闘う意思はないと告げた。
その言葉に怒りを露にした平助君が怒声を上げる。
「お前達に争うつもりがなくても…こっちは逃がす訳にはいかねぇんだよ!」
天霧さんの視線が、刀を振り上げ飛びかかろうとする平助君に、ゆっくりと向けられる。
「平助君!!だめ…!!!」
平助君の頭目掛けて向けられた天霧さんの拳を、寸でのところで受け止めた。
「間に合った‥‥」
鬼の私でも、開放しなければ対等に闘えない程の力。
その差は歴然だった。
平助君は、天霧の放った風圧だけで廊下まで飛ばされ、頭を打ち付けたのか、気を失っていた。
男は、自分の拳を片手で止めた私を、驚いた様子で凝視する。
「貴方は‥「貴様…」
天霧の言葉を遮り、鋭い視線を向けるのは、先程 "風間" と呼ばれた男。
彼はこちらを見つめたまま、静かに口を開いた。
「貴様‥‥‥同胞か」
沖田さんに向けている刀を下ろし、冷たい視線で私を睨みつける風間。
「ちょっと…待って…君の相手は僕だよ!」
その様子を見ていた沖田さんが、庇うように間に立つ。
「そんな身体で…止めてください!」
既にボロボロにやられているのに、まだ闘おうとする彼を、必死に止める。
「君…煩いよ…僕はそう簡単に…破られたりしない…」
普通なら、彼の意見に賛同出来る。
けれど、今回は違う。
(彼等は私と同じ‥‥‥鬼なんです)
口に出せず、心の中で呟いても、当然彼には届かない。
「面白い…ならば、もう少し…遊んでやろう」
私達を嘲笑うかのように、襲ってくる風間という名の鬼。
「沖田さん!!」
やはり、彼の刀を受けきれなかった沖田さんは、その勢いのまま、壁に打ち付けられた。
「その程度の力で俺に刃向かうか…」
面白くないといった様子の鬼が、私に視線を戻し、剣を向けた。
「しまった…」
背後に千鶴の気配を感じた私は、それを庇うように立ち、剣を構える。
「これは‥‥‥‥!沖田さん!平助君!」
青褪めていく彼女に、微笑みかける。
「千鶴さん、平助君は大丈夫…彼の処置をお願いします」
私の目を見つめ、落ち着きを取り戻した千鶴は頷くと、沖田さんに駆け寄った。
彼女に背を向け、私は目の前の男に集中する。
斬り合う男の速さが、私を上回り、半歩早くなった瞬間、私は力の限りに腕を掴まれ、捉えられた。
「貴様、何故人間如きの下等な生き物と…共に居る」
腕を握る手に力を込め、強い口調で問う風間。
「あなたには…関係ありません!」
私は一歩も引かず、彼の紅い双眼を睨みつけた。
私の腕を掴んだまま、千鶴に視線を移し口を開く男。
「貴様も同胞か…名は何と言う」
彼女も負けじと、強い瞳で風間を睨みつけた。
「雪村 千鶴 です…同胞って何なんですか!? ゆきさんを離してください!」
千鶴に何も答えず、視線を此方に戻した男は、目を細めると、私を見つめながら呟いた。
「雪村‥‥‥本家の女鬼だな…貴様も雪村の者か‥‥‥」
少し憂いを帯びた表情を見せる美しい鬼。
「風間殿」
再び、二人の間に割り込んだ天霧が、彼を制止する。
溜息を吐いた風間は、目を逸らし、私の腕を開放した。
「まあいい…今は見逃してやろう…だが次に会う時は…お前達を連れて行く… 俺の名は 風間 千景…覚えておけ」
最後にそう言い残すと、二人は闇に溶け込み消えて行った。
風間 千景。
男の名が頭の中を支配し、私は暫くその場に立ち尽くしていた。
後に「池田屋事件」として歴史に名を残すこの闘いは、新撰組側の勝利で幕を閉じた。
「其処の女は何だ」
まるで、己以外の全てを見下したような、鋭く冷酷な瞳を此方に向け、口を開く。
「貴様‥‥死にたいのか」
油断すれば、怯んでしまいそうになる威圧感。
このままでは勝ち目はないと判断した私は、鬼の力を開放するしかないと、静かに目を閉じた。
「風間殿」
瞬間、二人の間に割り込んできた見知らぬ男。
「皆さん申し訳ない…私は天霧と申します…私達はあなた方と争うつもりはありません…この場は引いて頂きたい」
耳に飛び込んで来た言葉を聞き、一先ず力の開放を止め、瞼を開けた。
天霧と名乗った男は、丁寧にお辞儀をしながら確かに闘う意思はないと告げた。
その言葉に怒りを露にした平助君が怒声を上げる。
「お前達に争うつもりがなくても…こっちは逃がす訳にはいかねぇんだよ!」
天霧さんの視線が、刀を振り上げ飛びかかろうとする平助君に、ゆっくりと向けられる。
「平助君!!だめ…!!!」
平助君の頭目掛けて向けられた天霧さんの拳を、寸でのところで受け止めた。
「間に合った‥‥」
鬼の私でも、開放しなければ対等に闘えない程の力。
その差は歴然だった。
平助君は、天霧の放った風圧だけで廊下まで飛ばされ、頭を打ち付けたのか、気を失っていた。
男は、自分の拳を片手で止めた私を、驚いた様子で凝視する。
「貴方は‥「貴様…」
天霧の言葉を遮り、鋭い視線を向けるのは、先程 "風間" と呼ばれた男。
彼はこちらを見つめたまま、静かに口を開いた。
「貴様‥‥‥同胞か」
沖田さんに向けている刀を下ろし、冷たい視線で私を睨みつける風間。
「ちょっと…待って…君の相手は僕だよ!」
その様子を見ていた沖田さんが、庇うように間に立つ。
「そんな身体で…止めてください!」
既にボロボロにやられているのに、まだ闘おうとする彼を、必死に止める。
「君…煩いよ…僕はそう簡単に…破られたりしない…」
普通なら、彼の意見に賛同出来る。
けれど、今回は違う。
(彼等は私と同じ‥‥‥鬼なんです)
口に出せず、心の中で呟いても、当然彼には届かない。
「面白い…ならば、もう少し…遊んでやろう」
私達を嘲笑うかのように、襲ってくる風間という名の鬼。
「沖田さん!!」
やはり、彼の刀を受けきれなかった沖田さんは、その勢いのまま、壁に打ち付けられた。
「その程度の力で俺に刃向かうか…」
面白くないといった様子の鬼が、私に視線を戻し、剣を向けた。
「しまった…」
背後に千鶴の気配を感じた私は、それを庇うように立ち、剣を構える。
「これは‥‥‥‥!沖田さん!平助君!」
青褪めていく彼女に、微笑みかける。
「千鶴さん、平助君は大丈夫…彼の処置をお願いします」
私の目を見つめ、落ち着きを取り戻した千鶴は頷くと、沖田さんに駆け寄った。
彼女に背を向け、私は目の前の男に集中する。
斬り合う男の速さが、私を上回り、半歩早くなった瞬間、私は力の限りに腕を掴まれ、捉えられた。
「貴様、何故人間如きの下等な生き物と…共に居る」
腕を握る手に力を込め、強い口調で問う風間。
「あなたには…関係ありません!」
私は一歩も引かず、彼の紅い双眼を睨みつけた。
私の腕を掴んだまま、千鶴に視線を移し口を開く男。
「貴様も同胞か…名は何と言う」
彼女も負けじと、強い瞳で風間を睨みつけた。
「雪村 千鶴 です…同胞って何なんですか!? ゆきさんを離してください!」
千鶴に何も答えず、視線を此方に戻した男は、目を細めると、私を見つめながら呟いた。
「雪村‥‥‥本家の女鬼だな…貴様も雪村の者か‥‥‥」
少し憂いを帯びた表情を見せる美しい鬼。
「風間殿」
再び、二人の間に割り込んだ天霧が、彼を制止する。
溜息を吐いた風間は、目を逸らし、私の腕を開放した。
「まあいい…今は見逃してやろう…だが次に会う時は…お前達を連れて行く… 俺の名は 風間 千景…覚えておけ」
最後にそう言い残すと、二人は闇に溶け込み消えて行った。
風間 千景。
男の名が頭の中を支配し、私は暫くその場に立ち尽くしていた。
後に「池田屋事件」として歴史に名を残すこの闘いは、新撰組側の勝利で幕を閉じた。