運命の刻
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
満開の桜の花も終わりを告げ、その花弁が儚く散り始めた頃。
実験で、羅刹となってしまった人が、数人屯所内から逃げ出し、大きな騒ぎになっていた。
私と沖田さん、斎藤さん、そして土方さんで "処理" をする事になった。
深夜、静まり返った京の町を月明かりだけが静かに灯している。
「キャャャャャア‥‥‥ッ‼」
女の人の悲鳴が静かな空に響き渡る。
「ゆき!あっちだ‥‥!」
「はい!」
土方さんは焦りの色を抑え、冷静に指揮を取る。
「急がないとまた被害が出るぞ!」
女性の声のした方に駆け付けると、刀を持った浪士と思われる男が二人、血を流し地面に倒れていた。
「チッ! 遅かったか‥‥‥おまえら行くぞ!」
思わず舌打ちを洩らした土方さんが、声を荒らげる。
三人の羅刹は血を求め、まだその場で彷徨っていた。
「速やかに処理してあげます…!」
羅刹を見つけ、強く地面を蹴った。
其々、斬り掛かっていく斎藤さんと沖田さんの姿を視界に捉え、私は空いていた羅刹に向け、走って行く。
素早い動きをする男の後ろに、速度を上げて周り込み、心臓を一突き。
"処理" は一瞬だった。
返り血を浴び、顔を拭う。
斎藤さんと沖田さんの方に視線を移すと、既に "処理" を終えていた。
「ああ〜僕が全部斬ろうと思ったのに」
両手を頭の後ろで組んだ沖田さんが、斎藤さんを見つめながら不満を口にする。
「…………」
斎藤さんは聞こえているのかいないのか、角を曲がったところにある樽の横をじっと見つめ、立ち竦んでいた。
「一君…何突っ立ってるの?」
不思議そうに首を傾げ、沖田さんが覗き込む。
「斎藤さん?」
私も、彼の後ろで立ち止まった。
「どうした…何か居たのか、一」
土方さんが、斎藤さんの横に、並ぶ様に立つ。
「‥‥‥‥‥‥‥!」
その瞬間、眉間に皺を寄せた副長が、樽に向け刀を突き出したのが見えた。
刹那、京の町に涼やかな風が吹き抜ける。
風は、桜の花びらを纏いながら私達の間を通り過ぎる。
背後に浮かぶ月と、桜の花弁を従えた土方さんはとても美しく、目を奪われた。
樽に向かって何か話しをしている二人。
何があるのか気になった私は、その場所に近づいてみる。
余程、この状況が怖かったのか、女の子が気を失って倒れていた。
「羅刹を見られたんですか‥‥? この娘を…殺すのですか…?」
私は真剣な眼差しで、副長を見つめる。
「いや…生かしたまま屯所に連れて帰る」
彼の言葉に、私は心から安堵した。
秘密を見られたからと言って、同じ歳くらいの女の子を殺すのも、それを見るのも嫌だった。
「へー斬らないんだ…? じゃ、僕は疲れたから帰るよ」
沖田さんはそう言うと、一人で何処かへ消えて行った。
「総司の野郎…一、 こいつを背負うのを手伝ってくれ」
呆れたような表情を浮かべ、目の前の女の子に手を掛ける土方さん。
「はい、副長」
斎藤さんが女の子の頭を持ち上げたので、私も足元に周り、手を添えた。
「私も手伝います!」
女の子の身体を、無事に土方さんの背に乗せた私達。
(この子‥‥‥懐かしい匂いがする‥‥‥)
「ゆき‥‥大丈夫か…?」
彼女の匂いに違和感を感じ、ぼーっと佇む私を、心配そうな面持ちで覗き込む斎藤さん。
「わっ…!はい…!少し考え事をしていただけで‥‥‥大丈夫です」
驚いた私は、思わずその場を飛び退いた。
「そうか‥‥今日はゆっくり休め‥‥‥」
斎藤さんは、労うように優しく頭を撫でてくれた。
「有難うございます…」
屯所に戻り、近藤さんと山南さんに報告を済ました私達。
解散となり、部屋に戻ると、疲れていたのか直ぐに睡魔に襲われた。
あの子を知っている気がする。
そんな事を考えながら、私は深い眠りへと落ちていった。
実験で、羅刹となってしまった人が、数人屯所内から逃げ出し、大きな騒ぎになっていた。
私と沖田さん、斎藤さん、そして土方さんで "処理" をする事になった。
深夜、静まり返った京の町を月明かりだけが静かに灯している。
「キャャャャャア‥‥‥ッ‼」
女の人の悲鳴が静かな空に響き渡る。
「ゆき!あっちだ‥‥!」
「はい!」
土方さんは焦りの色を抑え、冷静に指揮を取る。
「急がないとまた被害が出るぞ!」
女性の声のした方に駆け付けると、刀を持った浪士と思われる男が二人、血を流し地面に倒れていた。
「チッ! 遅かったか‥‥‥おまえら行くぞ!」
思わず舌打ちを洩らした土方さんが、声を荒らげる。
三人の羅刹は血を求め、まだその場で彷徨っていた。
「速やかに処理してあげます…!」
羅刹を見つけ、強く地面を蹴った。
其々、斬り掛かっていく斎藤さんと沖田さんの姿を視界に捉え、私は空いていた羅刹に向け、走って行く。
素早い動きをする男の後ろに、速度を上げて周り込み、心臓を一突き。
"処理" は一瞬だった。
返り血を浴び、顔を拭う。
斎藤さんと沖田さんの方に視線を移すと、既に "処理" を終えていた。
「ああ〜僕が全部斬ろうと思ったのに」
両手を頭の後ろで組んだ沖田さんが、斎藤さんを見つめながら不満を口にする。
「…………」
斎藤さんは聞こえているのかいないのか、角を曲がったところにある樽の横をじっと見つめ、立ち竦んでいた。
「一君…何突っ立ってるの?」
不思議そうに首を傾げ、沖田さんが覗き込む。
「斎藤さん?」
私も、彼の後ろで立ち止まった。
「どうした…何か居たのか、一」
土方さんが、斎藤さんの横に、並ぶ様に立つ。
「‥‥‥‥‥‥‥!」
その瞬間、眉間に皺を寄せた副長が、樽に向け刀を突き出したのが見えた。
刹那、京の町に涼やかな風が吹き抜ける。
風は、桜の花びらを纏いながら私達の間を通り過ぎる。
背後に浮かぶ月と、桜の花弁を従えた土方さんはとても美しく、目を奪われた。
樽に向かって何か話しをしている二人。
何があるのか気になった私は、その場所に近づいてみる。
余程、この状況が怖かったのか、女の子が気を失って倒れていた。
「羅刹を見られたんですか‥‥? この娘を…殺すのですか…?」
私は真剣な眼差しで、副長を見つめる。
「いや…生かしたまま屯所に連れて帰る」
彼の言葉に、私は心から安堵した。
秘密を見られたからと言って、同じ歳くらいの女の子を殺すのも、それを見るのも嫌だった。
「へー斬らないんだ…? じゃ、僕は疲れたから帰るよ」
沖田さんはそう言うと、一人で何処かへ消えて行った。
「総司の野郎…一、 こいつを背負うのを手伝ってくれ」
呆れたような表情を浮かべ、目の前の女の子に手を掛ける土方さん。
「はい、副長」
斎藤さんが女の子の頭を持ち上げたので、私も足元に周り、手を添えた。
「私も手伝います!」
女の子の身体を、無事に土方さんの背に乗せた私達。
(この子‥‥‥懐かしい匂いがする‥‥‥)
「ゆき‥‥大丈夫か…?」
彼女の匂いに違和感を感じ、ぼーっと佇む私を、心配そうな面持ちで覗き込む斎藤さん。
「わっ…!はい…!少し考え事をしていただけで‥‥‥大丈夫です」
驚いた私は、思わずその場を飛び退いた。
「そうか‥‥今日はゆっくり休め‥‥‥」
斎藤さんは、労うように優しく頭を撫でてくれた。
「有難うございます…」
屯所に戻り、近藤さんと山南さんに報告を済ました私達。
解散となり、部屋に戻ると、疲れていたのか直ぐに睡魔に襲われた。
あの子を知っている気がする。
そんな事を考えながら、私は深い眠りへと落ちていった。