︎✦︎シフト0nサマーバケ∞ション︎✦︎
翌日。髪型を整え、伊達眼鏡をかけ、鏡で服のシワがないかやパーツの紛失はないかなどを確認してホールに出た。緊張して喉から心臓が飛び出そうだ。
「新人くん?」
お姫様のようなロリータにヘッドドレスをつけた女性がそう言った。先輩がすかさず今日からの子ですとフォローをしてくれた。
昼になると先輩から外に出て客寄せしといてと言われ、外に出る。……暑い。こんな真っ黒な服装にするんじゃなかったと後悔した。
「あなたとっても素敵ね!ここの方?」
まるで桜餅を擬人化したような女性から声を掛けられた。そうです、と答えると私も入ってもいいのかしら!?と少し興奮気味に言われ一緒に中に入った。
「当館にいらしたのは初めてでしょうか?」
「ええ!中の装飾もゴシックで可愛い〜!」
「では、こちらをお読みくださいお嬢様」
(なんとかやったぞ〜〜〜〜!!)
裏で冷えたレモネードをガブ飲みし、天に拳を突き上げた。この調子でおもてなしして初日売上を伸ばし、お給料を順調に稼ぐ!!とバキバキの目で誓う。
「お嬢様、お読みになられたでしょうか?」
「執事のコンセプトカフェなのね!こういうお店来てみたかったの〜!」
「そう言っていただけて光栄です」
「キャー!!かっこいい!!お名前はなんて言うのかしら?」
「シンと申します。」
「シンくんね!私は蜜璃、よろしくね」
確かマニュアルには職業とか趣味とか聞くといいって書いてあったな、と思い出して笑顔を作る。
「お嬢様のご趣味はなんですか?」
「私は絵を描くことが大好きなの〜。芸術系の大学に通ってて」
「ふふ、ベレー帽が画家さんみたいだなと思っておりました。とても似合っていますよ」
「そ、そうかしら!?」
初のお客さんが優しいひとで良かった……と感じた。素の自分で話すより、演じた自分の方が初対面の人とは話しやすかった。
「暑かったですし、お飲み物を淹れましょうか?」
「ぜひお願いしたいわ〜!カフェオレと、いちごのショートケーキとパンケーキ、トッピングでスイーツ二倍、ガトーショコラも!」
「えぇっと……」
「わわ、ちょっと早すぎたわよね!」
デザート系は元から発注された冷凍品にスイーツを乗せれば良いので手間はそれほど無い。だが、ここまでの大食いとは。他のお客さんを見る限りここまで食欲全開のひとはいない。食べ終わるのも凄まじくはやかった。
「これから友人との約束があるので帰ります!今日は楽しかった、ありがとうシンくん」
「こちらこそ。ありがとうございました、蜜璃お嬢様」
