︎✦︎シフト0nサマーバケ∞ション︎✦︎




「…………予算が足りねェわ」

「はい?」


美術部顧問であり、軽音楽部副顧問の宇髄がいきなり手を合わせて詫びてきた。練習していたギターのピックを置くと、「今年度予算」と書かれた紙を目の前に突き出された。


「これ見ろ。どう考えてもうちの部で賄える額じゃない。部員だって多くない。残念だが無理だなこりゃ」


確かに、こんな額ではどう考えても不可能だ。宇髄が謝ってくるのも理解できる。しかし、


「宇髄先生が言ったんじゃないですか。『外部のスタジオ借りたら面白い』って……」

「まさか本気マジで受け止めるとは考えてねェっての!」

「でも借りちゃいました」

「変なときに決断力あるよな……俺の方でもなんとか集金できるようにすっから」


こういう人って冗談なのか本気なのか見当もつかない。体育館や視聴覚室ではない場所での活動に張り切っていた自分が馬鹿馬鹿しくも感じられた。心陽は溜息をついてまたギターを握りしめた。


(私がお金を稼げばいいのでは……?)


某新しい人類が覚醒した効果音と共にこんなことを閃いてしまった。
だが、料理も何もできない彼女が何をするのか……?




「お疲れ様です」


(一日目がようやく終わった。つかれた。はやく寝よう)


一日目は研修で終わった。そそくさとスタッフ用の裏口から外へ出ると、見慣れた姿が見えた。だが、下手に関わられると家に帰るのが遅くなる。夏休みと言えど、貴重な睡眠時間を削るわけには。


「朔間、補導時間スレスレだぞ!早く帰りなさい」

「すみません」

「……友人は?誰とここまで来たんだ?」


彼は車のウィンドウから顔を覗かせ、怪訝そうに言った。駅の近くだが、薄暗いのを心配されているんだとすぐに理解できた。一人で来たと言ったらそれはそれだ。なんせ、ここには居酒屋かホテル、風俗しかない。大したことでもないのに大事にされたら困る。


「気にしないで大丈夫です。お気遣いありがとうございます。さようなら」

「生徒一人で夜道を帰すにはいかないな!乗るといい」

「遠慮しておきます。誰かに見られたら怪しまれます」

「そんなことより君の安全が最優先だろう」


「そんなこと」って……と思いながらも言われるがままに渋々車に乗った。住所を聞かれてそれに答えた。何をしていたんだと聞かれ、何も言わなかった。ハイブリッド車なせいか沈黙が怖いくらい静かだった。


「恋人か?」


赤信号で止まっているときにふいにそう言われた。驚いて運転席を見ると目が合ってしまって思わず目をそらす。


「彼氏なわけないじゃないですか……だって」

「俺が君の彼氏だからな」


突然唇を重ねられ、びっくりして胸板を押し返す。青信号に変わるのと同時だったらしく、キスは止んだがされた身としては悶々としたものが残る。
住んでいるタワマンの前に停めてもらい、礼を告げて無事帰宅した。




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