シュ色の外側
ヒトツハ クラエ、ヒトツハ シヅメ、ヒトツハ カエセ
だくだくと流れる鮮かで、それでいてつうと伝う液体。
黒が白に剥かれる。手触りは良いとは言えない。ただ無機質な感情の無い人形。
イツノネ、サクワラ、ホトホトノ
ア……ア、アッと贄は息が詰まった言葉を発す。
オロロ、バラエ、モモソノ、カカカ…
ギラリと睨む剣の銀が怪しく笑う。獰猛な獣の牙が剥き出しになる。
そして…
──肉塊に銀の残忍なきらめきが振り下ろされる!!
刹那、奉納者は何者かの手を視界に映した。
右手で剣を握った両腕を捻り、左手で礼服の胸ぐらを掴まれそのまま地面に叩きつけられた。心陽は唸り声をあげ、屈辱的な痛みに耐えた。
失敗した。……否、失敗させられた。
「……え?」
島の栄光、家族からの期待、そして島民からの信頼。それらをいま、全て裏切ったとでも?
いやいやいや、違う。そんなはずはない。
嫌、嫌嫌嫌!!!!
「目を覚ませ!!これは嘘だ、作り話だ!!!」
「何が、何が作り話って言うんですか!!何も知らないくせに、分かろうとする気も無いのに!!!あなたが、煉獄さんが言わないで下さい!!!!」
「俺は、君のことが大切だから引き取めているんだ」
はあ、と心陽からは疑問の声が漏れる。興奮してうまく話せない。
「朔間が、壊れるだけだ。こんな業の深いものは!」
「でも私が…私がここでやらないと島が壊れるんです!!!この島に祟りが起きる前に、早く、やらなきゃ……」
心陽が剣に手を伸ばし、思い切り握ったそのとき
「っっ!?血が、何してっ…!!!」
「俺はこの島がどうなろうと構わない。だが、朔間を人殺しにはさせん!!」
がっちりと鍔に最も近い刃物部分を握りしめられた。刃が肉に食い込んでいる。僅かに流れる血の香りに目を眩ませた。心陽は見ているうちに徐々に手から力が抜け、脱力していった。
傷つけた。傷つけてしまった。サー……と血の気が引く。
「ごめ……ごめんなさい、煉獄さん、こんなつもりじゃ……。」
「君はこれ以上のことを成そうとしていたのだぞ?」
「あれは、島に必要なことですので!!」
「もう必要はない!!おいで、大丈夫だ。」
刀も何も持たずに歩き出す。
手を取られるがまま、導びかれるがままにうっそうとした林を歩いていく。
島民の祝詞が耳には残り続けているものの、それよりもだいぶ前から絆されてしまった心は大人しくこの男に従った。
「……祠ですか?」
書かれているものは、鬼神に供物をささげるようになった所以である。
鬼神は激しい気性の持ち主で、活き活きとした人間の血肉を好む。そう、朔間では習わされるのだ。
煉獄はライターでそこらにある枝に着火するなり、それに投げ捨てた。
