シュ色の外側





海岸線に沿って少しばかり歩くと、明るい朱色の鳥居が見えた。普通の境内に、お社。どこにでもある神社だ。

木が風に揺らされ冷たい空気が広がる。湧き水もある。田舎によくある自然豊かな場所だった。


「どうやら祭が近いらしいな!」

「そうですね。」

「あの神楽の舞台の鼓や刀剣も使われるのだろう、きっと」


祭が楽しみ、という話題で帰り道は盛り上がった。ひどく、苦しかった。どこかで焚いている焚き木のせいだろうということにした。


「海で泳ぐことができたら更に良いのだがな……。まあ、いいだろう!」

「そんなに泳ぎたかったんですか。」

「都内は水が汚いからな、ここは綺麗で美しい!」


そう真っすぐに海を指さす。日が沈みかけていた。


「聞き忘れていたが、朔間は泳げるのか?」

「泳げます!泳げなかったら、もっと前に断ってます。」

「ははは、ならば良かった!俺は朔間にとって酷なことはしない。安心しろ!」


取り繕うかのように、隠し事をするかのように、ははは……とぎこちなく笑ってみせる。冷や汗が流れる。理由ははっきりとある。ギラリとした何かを感じたからだ。

ざわめいている。何もかもが。


「朔間……」

「朔間様!!このような縁起の良い日に出会えるとは!運が良いことです!!!」

「今晩もよい夜となるでしょう、ああ、ありがたや。ありがたや…!!」

「準備の方はもうよろしいのですか?」

「平安から始まり、この130回目の良き日にお会いできて光栄です!!」


その声たちに引け目を感じ後ずさると思わず彼にぶつかる。私に何も言わなかった。目をぱちぱちともせず、彼は私を見つめ続けている。
今まで込み上げ続けていた緊張とは違うものが奥に入ってくるのを感じた。


「朔間様。この方は、今晩の…」

「俺は大学の先輩だ!!!それ以上、それ以下でもない!」


私は、この訳の分からない一言でなぜか救われた。



部屋に戻るなり、


「何か隠しているだろう。」


と今まで聞いたこともない、怒っているのだか落ちついているのだか分からない声で問うた。


「この島の住人であること以外で、俺に話してくれないか?」


こんなに近くで、そんなに優しい声で、言われたら最後。皆誰しも、白状しないことがあるわけないだろう。


「私、神社の娘なんです。祭で演舞を披露するんです。」


こう告げるしか無かった。上皮でしかない。あれは…口外できないと教えられている。誇り高い務めだとしても。


「そうか。…では祭に行かなくてはな!!君がそんなことまでできるとは!」

「言われると緊張しちゃいますって。」

「ははは。君なら最後までやりきれる!!大丈夫だ」




だくだくと流れる鮮かで、それでいてつうと伝う液体。
黒が白に剥かれる。手触りは良いとは言えない。ただ無機質な感情の無い人形。


緊張してしまう、期待されたくない。どうか来ないで欲しい。…なんて言えない。


「煉獄さん、行ってきます。突然ですみません。」

「謝らないでいい。頑張れ!」




この時期の家はいつも恐ろしい。1匹の獣のようだ。静かにうずくまっているが、目を離しふとした瞬間に躍り出る獣。



ぴんぽーん。




インターホンを鳴らすと『はーい』と妹の声がする。


「さすが、忘れてなかったんだね。参っちゃうよ〜、心陽がいないとできないから。」

「咲希の演奏だって必要だよ。」

「でも主役は『奉納者』の心陽だよ。」

「うん、そっか。そうだよね。」




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