短編
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家族じゃねーけど、俺たちの妹。
°°°
「うっさい!おまえらには関係ねーだろバァァーーーカ!!!」
「何なのアンタ!ほんとムカつく、1年のくせに!」
「歳食ってるだけで別に偉くもねーだろババア!!くそババア!!ぶん殴るぞテメー!!」
「…っ!もういこっ!」
バタバタと駆ける、数人の女子。
走って来た方に視線を向ければ、仁王立ちで仏頂面をしているちっさい人影。
はあ…こいつはまた…
「マイ!」
「あ、岩ちゃん」
俺が名前を呼ぶと、勢いよく振り返るクソチビ。
こいつは俺と及川の幼馴染で、俺たちが小1の時、即ちマイが小学校に上がる前からの付き合い。
だいぶわがままで横暴だからか、俺たちが甘やかし過ぎたのか、俺たち以外に友達はいないみたいだ。
「ねぇ見た?!また徹のファンババアズが呼び出してきたんだよ!何回めだと思う?!」
「知らねーけど、もうそいつらと関わるなって及川に言われてただろ」
「関わりたくなくてもあっちから関わってくんの!岩ちゃん助けてよー」
「前に俺が言っても無駄だっただろ。あとお前口悪すぎ。まずそこなんとかしろ」
「おとなしくなって泣き寝入りしろって事ですかぁ?」
反省のそぶりもなく、ひらひらと手を振るマイ。
今日は口論だけで、手を出したり出されたりした訳じゃないみたいだ。
こうは言うけど、本当の所けっこう心配してる。
やたらと及川がモテるもんだから、幼馴染で2歳下のマイは取り巻き達の格好の獲物だ。
マイが中学に上がってきてからというもの、取り巻き達はだいぶ過敏になっている。しかもマイはマイであの性格だから、トラブル必至。
「…何もされてねぇか?」
「されてたら殴り返してるよ!」
「そうか」
だんだん及川に似てくるムカつく笑顔で答えるマイ。
その顔にイラッともするけど、俺にとっては手のかかる妹みたいなもんだから、マイが笑顔でいるのはかなり安心する。
それと、俺のいらんところ(暴言)だけキッチリ真似してくれるのは先行き不安だ。
ああ、今年一年はまた3人で過ごせるんだな。
そう思うのと同時に、今年が終わればまた俺たちとこいつは別々の生活になることに気付いて、少しだけ物悲しくなった。
残念な事に、俺と及川はまた一緒なんだろうけどな。
「悪りぃな、クソ川のせいで。俺らが卒業するまで我慢してくれ」
「……」
「なんだよ」
「岩ちゃんが改まってあたしに謝るとか気持ち悪い」
「マイてめえ!」
マイは俺の言葉を屈託ない笑顔で茶化す。
今更こいつに恋愛感情なんて物はない。
只々無邪気に笑うマイが親的な意味で可愛くて、何をされてもやっぱり甘やかしてしまう。
ずっとこいつの事を実の親よりも見てきて、だんだん成長していくマイに少しだけ寂しさも感じている。
理不尽なのは昔からだけど、最近は素直さが失われてなかなか小狡い感じになってきてるしな。悪い傾向だ。
マイもいつかは、俺たちの手を離れるんだろうか。
及川はこいつの事を恋愛的な意味で好きだと言っていたから(よくそんな目で見れるな)、及川とマイが付き合ってくれれば俺たちは3人ずっと一緒に居られるのか。
まあ、あいつはマイに伝えるつもりは無いって言っていたし、マイもまったく気づいてないみたいだからそれは無いだろうけど。
マイは手持ち無沙汰に、腰をぐりんぐりん捻りながら腕を振り始めた。
やっぱり中1。まだまだ子供っぽい。
「確かにババア達迷惑だしすんごいウザイけどさぁ」
「お前な…」
「あたしは岩ちゃんと徹とまた一緒に学校行けるのが嬉しいからいいの。あいつらなんて犬のうんこぐらいどうでもいいよ!」
「おい、そういうのを直せって言ってんだよ」
「じゃあ馬糞」
「お前に何言っても無駄な気がしてきた」
マイは手に持つ通学バッグも振り回す。
小さい身体に似合わない大きさ。辛い事も嫌な事も、まだまだ知らないんだろう。
いや、マイの家庭事情はなかなか複雑だ。知ってて理解してないだけなのか、マイはいつでも無邪気だ。
どうかそのままで居てくれ、大人にならないでくれ、と思う自分がいる。
「岩ちゃん」
じっと見つめる俺の視線に気づいたのか、マイはバッグを振り回したまま俺の名前を呼ぶ。
「なんだよ」
「岩ちゃんと徹が先に中学出てもさ、また2年後一緒に学校行けるよ!嬉しい?」
「…気が早えーよ、ボケ」
再び及川風スマイルで笑うマイ。
未来のことは分からないけど、俺もつられて笑った。
ガラじゃねーけど。
これからも3人で、一緒に帰れますように。
「あ、そういえば徹は?」
「知らねー。どっかでくたばってんじゃね」
「はー?つまんねーなー徹ちゃんはよぉー」
「言葉遣いどうにかしろって」
------------
お読み頂きありがとうございます!
岩ちゃんの願いも虚しく、彼女はサラッと烏野に進学してしまいますが…笑
岩ちゃんみたいな幼馴染が欲しかった!
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「うっさい!おまえらには関係ねーだろバァァーーーカ!!!」
「何なのアンタ!ほんとムカつく、1年のくせに!」
「歳食ってるだけで別に偉くもねーだろババア!!くそババア!!ぶん殴るぞテメー!!」
「…っ!もういこっ!」
バタバタと駆ける、数人の女子。
走って来た方に視線を向ければ、仁王立ちで仏頂面をしているちっさい人影。
はあ…こいつはまた…
「マイ!」
「あ、岩ちゃん」
俺が名前を呼ぶと、勢いよく振り返るクソチビ。
こいつは俺と及川の幼馴染で、俺たちが小1の時、即ちマイが小学校に上がる前からの付き合い。
だいぶわがままで横暴だからか、俺たちが甘やかし過ぎたのか、俺たち以外に友達はいないみたいだ。
「ねぇ見た?!また徹のファンババアズが呼び出してきたんだよ!何回めだと思う?!」
「知らねーけど、もうそいつらと関わるなって及川に言われてただろ」
「関わりたくなくてもあっちから関わってくんの!岩ちゃん助けてよー」
「前に俺が言っても無駄だっただろ。あとお前口悪すぎ。まずそこなんとかしろ」
「おとなしくなって泣き寝入りしろって事ですかぁ?」
反省のそぶりもなく、ひらひらと手を振るマイ。
今日は口論だけで、手を出したり出されたりした訳じゃないみたいだ。
こうは言うけど、本当の所けっこう心配してる。
やたらと及川がモテるもんだから、幼馴染で2歳下のマイは取り巻き達の格好の獲物だ。
マイが中学に上がってきてからというもの、取り巻き達はだいぶ過敏になっている。しかもマイはマイであの性格だから、トラブル必至。
「…何もされてねぇか?」
「されてたら殴り返してるよ!」
「そうか」
だんだん及川に似てくるムカつく笑顔で答えるマイ。
その顔にイラッともするけど、俺にとっては手のかかる妹みたいなもんだから、マイが笑顔でいるのはかなり安心する。
それと、俺のいらんところ(暴言)だけキッチリ真似してくれるのは先行き不安だ。
ああ、今年一年はまた3人で過ごせるんだな。
そう思うのと同時に、今年が終わればまた俺たちとこいつは別々の生活になることに気付いて、少しだけ物悲しくなった。
残念な事に、俺と及川はまた一緒なんだろうけどな。
「悪りぃな、クソ川のせいで。俺らが卒業するまで我慢してくれ」
「……」
「なんだよ」
「岩ちゃんが改まってあたしに謝るとか気持ち悪い」
「マイてめえ!」
マイは俺の言葉を屈託ない笑顔で茶化す。
今更こいつに恋愛感情なんて物はない。
只々無邪気に笑うマイが親的な意味で可愛くて、何をされてもやっぱり甘やかしてしまう。
ずっとこいつの事を実の親よりも見てきて、だんだん成長していくマイに少しだけ寂しさも感じている。
理不尽なのは昔からだけど、最近は素直さが失われてなかなか小狡い感じになってきてるしな。悪い傾向だ。
マイもいつかは、俺たちの手を離れるんだろうか。
及川はこいつの事を恋愛的な意味で好きだと言っていたから(よくそんな目で見れるな)、及川とマイが付き合ってくれれば俺たちは3人ずっと一緒に居られるのか。
まあ、あいつはマイに伝えるつもりは無いって言っていたし、マイもまったく気づいてないみたいだからそれは無いだろうけど。
マイは手持ち無沙汰に、腰をぐりんぐりん捻りながら腕を振り始めた。
やっぱり中1。まだまだ子供っぽい。
「確かにババア達迷惑だしすんごいウザイけどさぁ」
「お前な…」
「あたしは岩ちゃんと徹とまた一緒に学校行けるのが嬉しいからいいの。あいつらなんて犬のうんこぐらいどうでもいいよ!」
「おい、そういうのを直せって言ってんだよ」
「じゃあ馬糞」
「お前に何言っても無駄な気がしてきた」
マイは手に持つ通学バッグも振り回す。
小さい身体に似合わない大きさ。辛い事も嫌な事も、まだまだ知らないんだろう。
いや、マイの家庭事情はなかなか複雑だ。知ってて理解してないだけなのか、マイはいつでも無邪気だ。
どうかそのままで居てくれ、大人にならないでくれ、と思う自分がいる。
「岩ちゃん」
じっと見つめる俺の視線に気づいたのか、マイはバッグを振り回したまま俺の名前を呼ぶ。
「なんだよ」
「岩ちゃんと徹が先に中学出てもさ、また2年後一緒に学校行けるよ!嬉しい?」
「…気が早えーよ、ボケ」
再び及川風スマイルで笑うマイ。
未来のことは分からないけど、俺もつられて笑った。
ガラじゃねーけど。
これからも3人で、一緒に帰れますように。
「あ、そういえば徹は?」
「知らねー。どっかでくたばってんじゃね」
「はー?つまんねーなー徹ちゃんはよぉー」
「言葉遣いどうにかしろって」
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お読み頂きありがとうございます!
岩ちゃんの願いも虚しく、彼女はサラッと烏野に進学してしまいますが…笑
岩ちゃんみたいな幼馴染が欲しかった!