短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幼馴染の徹はよくモテる。
それも尋常じゃないレベルに。
「及川さんっ!これ、食べてください!」
「わ、わたしのも!」
あたしにとって先輩か何か知らないけど女子がいっぱい群がって、徹を取り囲む。
当の本人もまんざらでもなく爽やか対応。
…なんでそんなどうでも良い奴らに媚び売んのさ!
囲まれる徹を仁王立ちで遠目に見る。
既になくなった紙パックのジュースは、潰れながら断末魔のような音を軽く立てた。
くそ。あいつらもこうなればいいのに。
今日は月曜日だから、バレー部の練習は無い。
そんな週初めはあたしと徹と岩ちゃんの3人で帰るんだけど、岩ちゃんは委員会があるらしく置き去りにすることにした。
…早く帰りたいなー。徹も置いてこっかな…
「マイちゃ〜ん、そんな所で覗き見なんて趣味悪いぞ〜?」
ふと時計に目をやっていたら、女子から解放された徹が戻ってきた。
「覗き見じゃなくて待ってただけだよ。早く帰ろうよ」
「早く早く言うけど、マイ帰っても用事ないじゃん」
「うるさい。用事なくても学校に長時間いたくないの」
「ふ〜ん」
2人で並んで歩き出す。
徹とあたしは2歳違う。
身長も全然違うし、歩幅も違う。
違うだらけで合わせるのは大変だけど、何となく心地の良い距離。
お互い悪口を言ってばっかりだし日々罵り合ってるけど、本当はものすごく気心の知れた仲。
あたしのとっても好きな時間。徹と2人で帰る放課後。
言わないけど、いや今更言えないけど、あたしは徹のことがずっと好き。
そんな事、関係を崩したくないから絶対に言えないけど。
あたしのその気持ちは、ずっと言えないまま10年近くが経過してる。
小学校の時も中学校の時も、そして高校に上がってからも徹は常にモテる。
みんな愛想を振りまいて徹に見てもらおうとする。
徹があたしを無視することは無い。なんたって幼馴染だから。
でもそれ以下にもそれ以上にもなれなくて、媚を売って徹に振り向いてもらう女の子達がちょっと羨ましかった。あたしの立場は、あくまで妹みたいな幼馴染、だから。
「そういえばマイさ」
「なに?」
「高校生にもなったのにまだ好きな人居ないの?」
「……」
徹の突拍子もない質問にびくっとする。
今それ聞く?!あたしの考えも知らずに!
「…そんなの徹に言う必要ある?」
「大アリだよ!勉強も運動も出来て見た目もかわい〜のに、いつまで子供でいるのかなって」
「18歳までは子供だし」
「そういう返しホント可愛くない!」
可愛いって言ったり可愛くないって言ったり、徹の話は忙しい。
居るよ、居るに決まってるんだけど。
ニコニコとあたしの返答を心待ちにする意中の彼は、あたしの心なんて知らないみたいに振る舞ってる。
ホントに気づいてないの?何年一緒にいると思ってんの?
「じゃあ徹はどうなの?今彼女いないんでしょ?」
「痛いとこ突かないでくれる?!」
「ホントの事じゃん。ていうか、そんなにポンポン好きな人変えれる方がすごい」
「え?」
「徹いつも違う女子と付き合ってるし」
「…別に、それとこれは違うよ」
「はぁ?」
徹の表情が変わる。
いつもみたいに飄々とした感じじゃなく、なんか影のある感じ。
それとこれは違うって、どういう意味なんだろ。
まさか、身体で割り切ってる的な?!
クズだとは思ってたけどそこまでクズなの?!
「だから、俺にいつも違う彼女がいるのと好きな人が変わるって言うのは別の話なの」
「意味わかんない。身体目当てなの?」
「人聞き悪い事言うなよ!!そうじゃなくて、彼女が居ても俺のホントに好きな人はずーっと変わってないの!」
「え」
それを聞いて衝撃。
それじゃあ益々あたしの付け入る隙が無くなる。
ずっと?ずっとっていつから?
あたしの知ってる人?徹が仲良い人って誰だっけ…
ぐるぐると不安が渦巻く。
楽しい時間の筈なのに、逃げ出したくなってきた。
徹はあたしの心をぐさぐさ刺すようにお構いなく話を続ける。
「気持ち悪いぐらいずっとなんだけどさ、その子全く気付いてくれなくて」
「……」
「むしろ最近俺嫌われてるんじゃないかなって心配で心配で」
「…徹の事邪険にする女子なんていんの?」
「いるよ!本人は気付いてないみたいだけどすっごい辛辣。岩ちゃんにはそんな事ないのになー。贔屓だよ贔屓!はっ、もし岩ちゃんの事好きだったらどうしよう…!」
「……岩ちゃんも含めてそんな仲良い人居た?」
「うん、いる」
ぐさりと完全に刺さった。
もうやめてほしい。どう頑張ってもあたしには敵わないんだから。
「ほんっとに鈍くて困るよ。俺こんなにアピールしてんのに分かんないらしいから」
「ふーん」
「…え、ちょっとマイちゃん?本気で誰のことか分かんないの?」
「知らない」
「ここまで言って分かんないの?!」
「だから知らないってば!!」
徹があたしの前に立ち塞がって焦った顔をし始める。
なんでそんな赤くなってんの?あたしに好きな人の話してそんなに嬉しい?!
分かってくれないし鈍いのは徹の方だよ!って言いたかったけど、言えない。やっぱり怖い。
「…はぁ〜〜、なんで伝わらないんだろ…」
「知らない」
それはあたしの台詞だよ。
「なんでそんな機嫌悪くなってんのさ」
「なんでもいいでしょ」
「…やっぱりマイ、俺脈ナシかな?」
「あたしに聞かれても知らない」
「知らなくないよ!マイは俺のこと嫌いなの?!」
徹に両肩を掴まれる。
そんな話を聞かされた後で触れられると、結構辛い。
「…別に、嫌いじゃないよ」
「じゃあ好き?」
真っ直ぐ徹に見つめられる。
冗談で言ってんの?なんなの?
言いたい、好きだよ、すごく!って言いたい。
でもやっぱり言えなくて、あたしは黙り込んでしまった。
「…俺さ、さっきからマイの事言ってんだよね」
「…え?!」
「もうヤケだし言うけど、俺はマイの事がずっと好きなの。小学生ぐらいから」
予想外過ぎて頭がついていかない。
徹の目を見つめると頭がフラフラして、なんとなく視線を外してしまった。
「まさか全然気付いてなかったの?及川さん辛いな…」
「…うん、全く知らなかった」
「じゃあ俺ほんとに脈ナシ…?」
「それは…!」
徹が悲しげな顔をする。
違うよ、脈アリなんてもんじゃないよ!
今、言わなきゃ。
「徹こそ鈍いよ!」
「は?!」
「あたしの方がずっと前から徹の事好きだったんだもん!!」
「そうなの?!」
お互いヤケになって大声で話す。
徹もあたしも、きっと他の人に見られたくないくらいに変な顔をしてる。
一時の間をおいて、徹はフラフラと力なくあたしを抱きしめた。
徹の体温が伝わる。長い間一緒にいるけど、こんな事をされるのは初めて。
あたしより全然大きくなった徹の身体に、更にあたしの体温が上がる。
ずっと求めてたもの。あたしだけの、このあったかさ。
「そうだったんだ…そうなんだ……はぁ〜良かったぁ」
「…何のこと」
「だって最近、マイがすんごい綺麗になってくから俺危機感感じてたんだよね。誰かに取られると思うともう悔しくて悔しくて!」
「…じゃあなんでもっと早く言ってくれなかったの」
「それは、」
徹の心臓の音が大きく聞こえる。
鼓動も早くなってる。多分、あたしも。
「もし俺がマイにフラれたら、3人で居られなくなるだろ?」
徹が軽く笑う。
徹も同じ気持ちだったんだ。
そう思うと、あたしも自然に笑みがこぼれた。
ライバルの親衛隊の女の子たちなんかどうでもいい具合に。
「…あたしもおんなじこと思ってた」
「えー?!じゃあチラッと岩ちゃんに通してくれれば良かったのに!」
「なんで?」
「岩ちゃんはこの事知ってたんだよ!岩ちゃん伝いにでも知れてたら、こんなに悩まなかったのにー」
「なにそれ!岩ちゃんそんな事一言も言ってなかったよ!」
「不本意だけど、マイにとって俺なんか眼中にないと思って気遣って言わなかったんだろ。くそー、変な気遣いばっかして!」
あたしを抱きしめたまま、徹が岩ちゃんの愚痴を言う。
長年の想いが実った事が何よりも嬉しくて、あたしは強く徹を抱きしめ返した。
徹の手があたしの頭の上に回る。
2人ともの体温が上がりすぎて、その場所だけ溶けてしまいそう。
「マイ」
「なに」
「俺と付き合う?」
「…うん」
改まった徹の告白に、更に顔が赤くなる。
徹はこういうの慣れてる筈なのに、なんだかぎこちない。
思った以上にぎこちない動きをしながら、徹はあたしの頭を引き寄せた。
熱を持った唇が重なる。
本当に好きな人とだからなのか、そういうもんなのか。
気が遠くなるほどの時間が過ぎたように感じる。
お互いの唇が離れかけた時、徹の息が肌を掠めてあたしは倒れこみそうになった。
「もしかしてマイ、キスするの初めて?」
「…分かってんのにわざとらしく言わないでくれる」
「念のための確認!どうしよ、俺嬉し過ぎて変になりそう」
「徹はいつも変だよ」
「ちょっと、雰囲気ぶち壊しにすんなよ!」
なんだかこの空気が恥ずかしくて、いつも通りの軽口を叩いてしまう。
仕切り直し、とでもいう風に、徹はまたあたしの頭を引き寄せた。
再び重なる暖かい感触。
ぶわっと何かが溢れ出そうな感覚に、またあたしの姿勢は崩れかけた。
それを徹が抱きとめる。
「マイ、可愛い」
「……」
「俺、このままずっと大事にするからね」
「…してもらわないと困るし」
幼馴染の徹はよくモテる。
でも今日、徹はついにあたしのものになった。
☆☆☆
息抜きに及川さん短編。
もしお相手及川さんだったなら、月島より手が早いんだろうなぁって。
お読みいただきありがとうございます!
それも尋常じゃないレベルに。
「及川さんっ!これ、食べてください!」
「わ、わたしのも!」
あたしにとって先輩か何か知らないけど女子がいっぱい群がって、徹を取り囲む。
当の本人もまんざらでもなく爽やか対応。
…なんでそんなどうでも良い奴らに媚び売んのさ!
囲まれる徹を仁王立ちで遠目に見る。
既になくなった紙パックのジュースは、潰れながら断末魔のような音を軽く立てた。
くそ。あいつらもこうなればいいのに。
今日は月曜日だから、バレー部の練習は無い。
そんな週初めはあたしと徹と岩ちゃんの3人で帰るんだけど、岩ちゃんは委員会があるらしく置き去りにすることにした。
…早く帰りたいなー。徹も置いてこっかな…
「マイちゃ〜ん、そんな所で覗き見なんて趣味悪いぞ〜?」
ふと時計に目をやっていたら、女子から解放された徹が戻ってきた。
「覗き見じゃなくて待ってただけだよ。早く帰ろうよ」
「早く早く言うけど、マイ帰っても用事ないじゃん」
「うるさい。用事なくても学校に長時間いたくないの」
「ふ〜ん」
2人で並んで歩き出す。
徹とあたしは2歳違う。
身長も全然違うし、歩幅も違う。
違うだらけで合わせるのは大変だけど、何となく心地の良い距離。
お互い悪口を言ってばっかりだし日々罵り合ってるけど、本当はものすごく気心の知れた仲。
あたしのとっても好きな時間。徹と2人で帰る放課後。
言わないけど、いや今更言えないけど、あたしは徹のことがずっと好き。
そんな事、関係を崩したくないから絶対に言えないけど。
あたしのその気持ちは、ずっと言えないまま10年近くが経過してる。
小学校の時も中学校の時も、そして高校に上がってからも徹は常にモテる。
みんな愛想を振りまいて徹に見てもらおうとする。
徹があたしを無視することは無い。なんたって幼馴染だから。
でもそれ以下にもそれ以上にもなれなくて、媚を売って徹に振り向いてもらう女の子達がちょっと羨ましかった。あたしの立場は、あくまで妹みたいな幼馴染、だから。
「そういえばマイさ」
「なに?」
「高校生にもなったのにまだ好きな人居ないの?」
「……」
徹の突拍子もない質問にびくっとする。
今それ聞く?!あたしの考えも知らずに!
「…そんなの徹に言う必要ある?」
「大アリだよ!勉強も運動も出来て見た目もかわい〜のに、いつまで子供でいるのかなって」
「18歳までは子供だし」
「そういう返しホント可愛くない!」
可愛いって言ったり可愛くないって言ったり、徹の話は忙しい。
居るよ、居るに決まってるんだけど。
ニコニコとあたしの返答を心待ちにする意中の彼は、あたしの心なんて知らないみたいに振る舞ってる。
ホントに気づいてないの?何年一緒にいると思ってんの?
「じゃあ徹はどうなの?今彼女いないんでしょ?」
「痛いとこ突かないでくれる?!」
「ホントの事じゃん。ていうか、そんなにポンポン好きな人変えれる方がすごい」
「え?」
「徹いつも違う女子と付き合ってるし」
「…別に、それとこれは違うよ」
「はぁ?」
徹の表情が変わる。
いつもみたいに飄々とした感じじゃなく、なんか影のある感じ。
それとこれは違うって、どういう意味なんだろ。
まさか、身体で割り切ってる的な?!
クズだとは思ってたけどそこまでクズなの?!
「だから、俺にいつも違う彼女がいるのと好きな人が変わるって言うのは別の話なの」
「意味わかんない。身体目当てなの?」
「人聞き悪い事言うなよ!!そうじゃなくて、彼女が居ても俺のホントに好きな人はずーっと変わってないの!」
「え」
それを聞いて衝撃。
それじゃあ益々あたしの付け入る隙が無くなる。
ずっと?ずっとっていつから?
あたしの知ってる人?徹が仲良い人って誰だっけ…
ぐるぐると不安が渦巻く。
楽しい時間の筈なのに、逃げ出したくなってきた。
徹はあたしの心をぐさぐさ刺すようにお構いなく話を続ける。
「気持ち悪いぐらいずっとなんだけどさ、その子全く気付いてくれなくて」
「……」
「むしろ最近俺嫌われてるんじゃないかなって心配で心配で」
「…徹の事邪険にする女子なんていんの?」
「いるよ!本人は気付いてないみたいだけどすっごい辛辣。岩ちゃんにはそんな事ないのになー。贔屓だよ贔屓!はっ、もし岩ちゃんの事好きだったらどうしよう…!」
「……岩ちゃんも含めてそんな仲良い人居た?」
「うん、いる」
ぐさりと完全に刺さった。
もうやめてほしい。どう頑張ってもあたしには敵わないんだから。
「ほんっとに鈍くて困るよ。俺こんなにアピールしてんのに分かんないらしいから」
「ふーん」
「…え、ちょっとマイちゃん?本気で誰のことか分かんないの?」
「知らない」
「ここまで言って分かんないの?!」
「だから知らないってば!!」
徹があたしの前に立ち塞がって焦った顔をし始める。
なんでそんな赤くなってんの?あたしに好きな人の話してそんなに嬉しい?!
分かってくれないし鈍いのは徹の方だよ!って言いたかったけど、言えない。やっぱり怖い。
「…はぁ〜〜、なんで伝わらないんだろ…」
「知らない」
それはあたしの台詞だよ。
「なんでそんな機嫌悪くなってんのさ」
「なんでもいいでしょ」
「…やっぱりマイ、俺脈ナシかな?」
「あたしに聞かれても知らない」
「知らなくないよ!マイは俺のこと嫌いなの?!」
徹に両肩を掴まれる。
そんな話を聞かされた後で触れられると、結構辛い。
「…別に、嫌いじゃないよ」
「じゃあ好き?」
真っ直ぐ徹に見つめられる。
冗談で言ってんの?なんなの?
言いたい、好きだよ、すごく!って言いたい。
でもやっぱり言えなくて、あたしは黙り込んでしまった。
「…俺さ、さっきからマイの事言ってんだよね」
「…え?!」
「もうヤケだし言うけど、俺はマイの事がずっと好きなの。小学生ぐらいから」
予想外過ぎて頭がついていかない。
徹の目を見つめると頭がフラフラして、なんとなく視線を外してしまった。
「まさか全然気付いてなかったの?及川さん辛いな…」
「…うん、全く知らなかった」
「じゃあ俺ほんとに脈ナシ…?」
「それは…!」
徹が悲しげな顔をする。
違うよ、脈アリなんてもんじゃないよ!
今、言わなきゃ。
「徹こそ鈍いよ!」
「は?!」
「あたしの方がずっと前から徹の事好きだったんだもん!!」
「そうなの?!」
お互いヤケになって大声で話す。
徹もあたしも、きっと他の人に見られたくないくらいに変な顔をしてる。
一時の間をおいて、徹はフラフラと力なくあたしを抱きしめた。
徹の体温が伝わる。長い間一緒にいるけど、こんな事をされるのは初めて。
あたしより全然大きくなった徹の身体に、更にあたしの体温が上がる。
ずっと求めてたもの。あたしだけの、このあったかさ。
「そうだったんだ…そうなんだ……はぁ〜良かったぁ」
「…何のこと」
「だって最近、マイがすんごい綺麗になってくから俺危機感感じてたんだよね。誰かに取られると思うともう悔しくて悔しくて!」
「…じゃあなんでもっと早く言ってくれなかったの」
「それは、」
徹の心臓の音が大きく聞こえる。
鼓動も早くなってる。多分、あたしも。
「もし俺がマイにフラれたら、3人で居られなくなるだろ?」
徹が軽く笑う。
徹も同じ気持ちだったんだ。
そう思うと、あたしも自然に笑みがこぼれた。
ライバルの親衛隊の女の子たちなんかどうでもいい具合に。
「…あたしもおんなじこと思ってた」
「えー?!じゃあチラッと岩ちゃんに通してくれれば良かったのに!」
「なんで?」
「岩ちゃんはこの事知ってたんだよ!岩ちゃん伝いにでも知れてたら、こんなに悩まなかったのにー」
「なにそれ!岩ちゃんそんな事一言も言ってなかったよ!」
「不本意だけど、マイにとって俺なんか眼中にないと思って気遣って言わなかったんだろ。くそー、変な気遣いばっかして!」
あたしを抱きしめたまま、徹が岩ちゃんの愚痴を言う。
長年の想いが実った事が何よりも嬉しくて、あたしは強く徹を抱きしめ返した。
徹の手があたしの頭の上に回る。
2人ともの体温が上がりすぎて、その場所だけ溶けてしまいそう。
「マイ」
「なに」
「俺と付き合う?」
「…うん」
改まった徹の告白に、更に顔が赤くなる。
徹はこういうの慣れてる筈なのに、なんだかぎこちない。
思った以上にぎこちない動きをしながら、徹はあたしの頭を引き寄せた。
熱を持った唇が重なる。
本当に好きな人とだからなのか、そういうもんなのか。
気が遠くなるほどの時間が過ぎたように感じる。
お互いの唇が離れかけた時、徹の息が肌を掠めてあたしは倒れこみそうになった。
「もしかしてマイ、キスするの初めて?」
「…分かってんのにわざとらしく言わないでくれる」
「念のための確認!どうしよ、俺嬉し過ぎて変になりそう」
「徹はいつも変だよ」
「ちょっと、雰囲気ぶち壊しにすんなよ!」
なんだかこの空気が恥ずかしくて、いつも通りの軽口を叩いてしまう。
仕切り直し、とでもいう風に、徹はまたあたしの頭を引き寄せた。
再び重なる暖かい感触。
ぶわっと何かが溢れ出そうな感覚に、またあたしの姿勢は崩れかけた。
それを徹が抱きとめる。
「マイ、可愛い」
「……」
「俺、このままずっと大事にするからね」
「…してもらわないと困るし」
幼馴染の徹はよくモテる。
でも今日、徹はついにあたしのものになった。
☆☆☆
息抜きに及川さん短編。
もしお相手及川さんだったなら、月島より手が早いんだろうなぁって。
お読みいただきありがとうございます!
1/4ページ