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幸福論
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「「おつかれーっしたぁーー!!」」
きっちり最後まで残ってしまった。
今日は居ないけど、先生以外にもコーチがいるらしい。
後から現れたマネージャーの清水先輩はすごく美人で、なんか日本語が変になってしまうほど美しかった。
「マイちゃん、おつかれ様」
「ありがとうございます、勝手に乱入したのに」
「ううん、助かったよ。また今度よかったら来てね」
「恐縮でゴザイマス…」
正マネにはならない事を伝えたら清水先輩も少し残念そうな顔をしたけど、また手伝いに来ることで話はまとまった。
「すごい…月咲が従順に清水の言う事を聞いてる…」
「女子様様だな」
「……」
色素の薄い人もとい菅原さんと主将の澤村さんに悪口を言われてる気がする。
あたしだって聞くときは聞くの!!!
「なぁマネージャーやらないの?!」
「やらない」
「なんで?!」
「毎日続けるのは困難なの!」
「なんでだよーやってよー!」
「本人が無理だって言ってんだから無理なんデショ」
「ケチ!ケチ咲!」
「そういえばツッキー、今日なんで月咲さんと一緒に来たの?」
山口くんの問いに、月島が苦い顔をした。
「日直で一緒だっただけ。この人が勝手についてきた」
「勝手にじゃないよあたし行くって言ったよ」
「僕は何も言ってないのに君が勝手な解釈でついてきたんデショ」
「月島が追い払わなかったから肯定と取りましたぁ〜」
「屁理屈ばっかり言うね?無駄に頭回るのも良くないね」
「そっくりそのままお返し致しまーす」
「なんなの!?お前月島と仲良いの?!」
「いや別に」
「ツッキーって月咲さんとはよく喋るんだね!」
「だまれ山口」
「ゴメンツッキー!!」
「おい」
あたしたちが喋りながらモップ掛けをしてると、後ろから声がした。
「…王様?なに?」
「月咲、その、お前の友達って…」
「友達?あぁー。それが?」
「……友達って…」
「……」
「……だ、誰ですかコラ…」
「なんなのその言い方」
「コラって(笑)」
みんなに笑われて王様はちょっと怒ってるみたいだけど、なんとか抑えてあたしの方を見た。
「徹」
「…!!」
「と、岩ちゃん」
「え?トールって誰?影山知り合い?」
「及川徹だよ、青城の。知らない?」
「あ゛っ!!大王様!!!」
「なに大王様って」
「王様より偉いから大王様らしいよ」
「あぁ、なるほどね」
「月咲おまえ…大王様の手下なのか…!?」
「何それそんな訳ないじゃん。寧ろあたしが女王様って感じだよ」
「すげぇ!すげぇ月咲!!」
「だから俺のサーブとれたのか?」
目まぐるしい百面相を見せる日向の横で、王様が真剣な顔をして聞いてくる。
よっぽど悔しかったらしい。
「うーん、そうかもね?」
コート一周を終えたモップを片付けに入る。
「元々あたし何でもできるんだけど」
「……」
「アンタのサーブとれたのはマグレの可能性のが高いかなー」
「…(まぐれ…)」
「たまたまさ、ちょっと前に徹のサーブ受けたんだよ。とれなかったけど〜」
「それで弟子の俺のサーブなら取れると?」
「うん大体そんな感じー。まぁ次はとれないと思うよ。痛かったし」
「…及川さんのサーブ、そんなにすごいのか?」
「専門じゃないから知らない。アンタよりは痛い」
「…クソっ」
片付けを終えて倉庫から出ると、主将さんが「早く帰りなさいよー暗いし1人で帰るなよー」って呼びかけていた。
お疲れ様ですの挨拶をして、体育館から出た。
5月の夜はもう結構暖かい。
「そういえば王様さー」
「あ?」
「中学同じってことは帰り道同じだよね?一緒に帰る?」
「なっ、なんっ…?!」
当たり前の事を言っただけなのに、なぜかすごく動揺してる。
どうせ同じ道通るくせに。
「やめときなよ。今度こそ馬鹿が移るよ」
「何だとボゲェ!!」
「だから移ったとしてもあたしは東大A判定だって」
「あ、そう。じゃあ僕も馬鹿菌は移らなさそうだから途中まで行くよ」
「別に来なくていいよ」
「ツッキーほんとは月咲さんと帰りたいんだって!」
「うるさい山口。勝手な事言うなよ」
「俺も!!俺も途中まで一緒に行く!!」
「結局みんなじゃん」
1年生みんなで並んで坂を下る。
沢山の護衛に囲まれて、あたしは初めて友達と帰路に着いた。