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幸福論
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約束当日。
土曜日。
…ではなく金曜日。夕方。
「よう」
「あっ、岩ちゃん!」
部活終わりのジャージ姿で、待ち合わせ場所・近所のローンソに現れた岩ちゃん。
結局あたしは徹に相談するのはやめて、岩ちゃんを呼び出した。
なぜなら奴に相談したら馬鹿にされそうだから。
「話ってなんだ?約束どおり及川は蹴散らして来たぞ」
「岩ちゃんマジ有能!ちょっとさぁ、一緒に考えてほしいんだけどー」
適当に飲み物を2つとって、レジに向かう。
手早く会計を済ませ、イートインコーナーの端っこの席に腰かけた。
「はい、飲むヨーグルトあげるー」
「おうサンキュー」
岩ちゃんにヨーグルトを渡して、あたしは鞄から雑誌を取り出す。
パラパラとめくって、お目当てのページを開いた。
初夏の着まわし特集!
「明日さー、蛍とちょっと出かけるんだよね」
「お?早速デートってやつか?」
「えっそうなのかな…多分そう。で、なんだけど」
「おう」
「何着てったらいいと思う?」
岩ちゃんに視線を向ける。
ハァ?みたいに眉間に皺を寄せながら固まる岩ちゃん。
「…いや、それ俺じゃなくてアイツに聞いた方が良かったんじゃねぇか?」
「徹って手も考えたんだけど、苦渋の選択でやめたんです。わかるでしょう。だから岩ちゃんに聞いてるんです」
「そうかよ」
「何着てったらいいと思う?」
「…俺に分かると思うか?」
たしかによく考えれば全然女っ気ないし、岩ちゃんに聞くのは不正解な気がする。
かと言って徹を頼れば、バカにされるか敢えて変なアドバイスをされるかのどっちかだし。
「岩ちゃん〜、モテないのも分かるけど無い頭捻って一緒に考えてよ〜」
「あ?!なんだと?!」
「だから無い頭…」
「お前、年々及川に似てきてホント腹立つわ…」
「それだけはヤダ!!」
「ヤダってつっても似てるもんは似てんだよ。嫌なら思った事そのまま言うのやめろ」
「なんか同じような事蛍にも言われた気がする…」
岩ちゃんはため息をつきながら、あたしの手元の雑誌を覗く。
数秒間ページを見つめると、さっさと次々めくっていく。
「…どこがどう違うのか全然わかんねぇ」
「組み合わせが違うでしょ!ほら、ここ合わせてるスカートの色も!」
「女ってこんなどうでもいい所までこだわんのかよ」
「細部まで拘ってこそだよ」
「自分の服も選べねえ癖に偉そうな事言うな」
「じゃあ岩ちゃん的にはどれなの!」
「あ?あー…」
面倒臭そうに視線を雑誌に移す岩ちゃん。
さっきよりゆっくりページを見てる。
「これ」
「えーー?これは変だよロリっぽいよぉ」
「聞いといて何なんだよ!」
「岩ちゃん意外とロリコンなの?!」
「マイてめぇいい加減にしろよ…」
フリフリ気味の服を指差してキレる寸前の岩ちゃん。
だってそれは無いよー、岩ちゃんファッションセンス無さそうだけどさすがに変だよ。
「そっかぁそんなフリフリ系かー。そういう方が好きなのかな?」
「お前の相手の趣味なんて知らねぇよ」
「まぁこれは好きじゃなさそうなタイプだよね。絶対違うよ」
「そう思うなら俺に聞かずに自分で考えろ!」
「待って!まだ行かないで!」
足早に去ろうとする岩ちゃんを引き止める。
嫌な顔をしながらも、岩ちゃんは再び席についた。
「あたし本気で悩んでんだよ?もうちょい付き合ってよ〜」
「お前のちょっとはちょっとじゃねぇんだよ」
「で?どんなのがいいかな。やっぱスカートだと思う?」
「そもそもどこ行くんだ?」
「知らない」
「……」
「だって家で待ってろって言われただけだし」
「それとなく聞きゃいいだろ」
「めんどくさいから嫌!ほら、早くどこでも対応できそうな奴考えて!」
*
グダグダの議論が続く。
時間が経つにつれだんだんあたしの集中が切れてきて、岩ちゃんはイライラしだした。
「…まだ決まんねえのか?」
「だってー、こっちだと靴が…」
「んなもん慣れた奴履いときゃいいだろ!」
「はぁー?この服と合わないじゃん!」
「そこまで見ねえよ!」
「気になるんだからしょうがないでしょ!!」
「それはお前の問題だろうが!」
議論どころか口論になってくる。
だって岩ちゃん絶対めんどくさくなってきてるし!あたしの一世一代の大舞台なのに!
「もうアレだ、俺らでは決めらんねぇんだからアイツに頼るしかねえよ」
「まっ、まさか…!」
狼狽えるあたしを尻目に、岩ちゃんは携帯で誰かに電話をかけ始めた。
「おい、今すぐローンソ来い。今すぐ」
ドスの効いた声で一言だけ言うと、岩ちゃんは電話を切る。
絶対あいつじゃん…岩ちゃんも中々嫌な奴だ…
悪いことをしたわけでもないのに冷や汗が伝う。
これから来るであろう刺客を想定して、大人しく縮こまる。
岩ちゃんは不機嫌そうな顔で腕組みして座ってる。
くそー、徹が来るぐらいなら逃げようかな…
逃げ道を探してキョロキョロしていたら、お待ちかねの徹が仏頂面でやってきた。
「岩ちゃ〜ん、俺の事さんっざん突き放しといて呼び出すって何?しかも俺抜きでマイと密会?」
「違ぇよ。いいから座れ」
「ハイハイ」
徹がわざとらしくあたしの顔を見てから横に座る。
きっとあたしが蹴散らせって言ったこと気づいたんだと思う。
「で、マイ。本題は?わざわざ俺抜きで話してたのに埒あかなくなったのかな?」
「……左様でございマス」
「ほぉ〜〜、都合いいねぇマイちゃんは〜。何?この雑誌なんか関係あんの?」
「……服を選んで頂きたいデス」
「選んで欲しいって、どっかお出かけでもするのかなぁ?まさかあいつとデートでも行くの?」
バカにする気満々でニヤつく徹。
どう返そうか迷って固まっていると、岩ちゃんが助け船を出してくれる。
「そのまさかだってよ」
「ハァー?じゃあなんでもいいんじゃない?裸じゃなかったら」
「……選んでくだサイ」
「あ、裸でも喜ぶかもね?メガネくんどんな奴かあんま知らないけどさー」
「……」
む、むかつく…
すんごく言い返したい気分だけど、ここで帰られてしまっては耐えてる意味がない。
もうちょっと、もうちょっと我慢だ!あたし!
「そうかーマイが着る服な〜〜」
ペラペラ雑誌を捲りながら呟く徹。
一通りページを捲ると、何ページか戻った所で本を開いて机に置いた。
「こんなワンピースとかでいいんじゃない。普通にしなよ、普通」
「……!」
「お、いいんじゃねーか?」
「俺が直々に選んでやったんだから感謝しろ!」
徹が指差したのは、ちょっとだけ丈が短めの白いワンピース。
確かに、色々考えるよりも絶対失敗がなくていいかもしれない。
徹の態度と顔がむかつくけど、それは致し方ない。
センス、ばっちり!
やっぱり徹に聞くのが正解だったのか…!
「徹さま…!」
「それよりマイこんな服持ってんの?靴も見たことないけど」
徹が面倒臭そうに言う。
言われてみれば、無い…
「明日の朝買いに行く」
「何そのギリギリスケジュール。やっぱマイは素人だな」
「何事も経験を積んで玄人になるんですぅー」
「へぇ〜マイちゃん何の経験積むつもりなの?下着も俺が選んであげよっか?」
「やめろうんこ野郎!」
「徹死ね!!!」
「俺は親切で言ってやっただけだろ!この恩知らずども!いだっ」
徹があまりにも調子に乗り出したから、岩ちゃんが制裁を加える。
2人が揉み合ってる姿なんて全く視界に入らないほど、明日の事が楽しみになる。
人生初デート…
この2人以外とのお出かけ…
「あ、そういえばどこにこの服売ってるかわかんないからついてきてよ」
「明日は部活だよバァーーーカ!」
「じゃあ今からでもいいでしょ!!行くよ!」
「もうそのうち店閉まんじゃねえか」
約束当日。
土曜日。
…ではなく金曜日。夕方。
「よう」
「あっ、岩ちゃん!」
部活終わりのジャージ姿で、待ち合わせ場所・近所のローンソに現れた岩ちゃん。
結局あたしは徹に相談するのはやめて、岩ちゃんを呼び出した。
なぜなら奴に相談したら馬鹿にされそうだから。
「話ってなんだ?約束どおり及川は蹴散らして来たぞ」
「岩ちゃんマジ有能!ちょっとさぁ、一緒に考えてほしいんだけどー」
適当に飲み物を2つとって、レジに向かう。
手早く会計を済ませ、イートインコーナーの端っこの席に腰かけた。
「はい、飲むヨーグルトあげるー」
「おうサンキュー」
岩ちゃんにヨーグルトを渡して、あたしは鞄から雑誌を取り出す。
パラパラとめくって、お目当てのページを開いた。
初夏の着まわし特集!
「明日さー、蛍とちょっと出かけるんだよね」
「お?早速デートってやつか?」
「えっそうなのかな…多分そう。で、なんだけど」
「おう」
「何着てったらいいと思う?」
岩ちゃんに視線を向ける。
ハァ?みたいに眉間に皺を寄せながら固まる岩ちゃん。
「…いや、それ俺じゃなくてアイツに聞いた方が良かったんじゃねぇか?」
「徹って手も考えたんだけど、苦渋の選択でやめたんです。わかるでしょう。だから岩ちゃんに聞いてるんです」
「そうかよ」
「何着てったらいいと思う?」
「…俺に分かると思うか?」
たしかによく考えれば全然女っ気ないし、岩ちゃんに聞くのは不正解な気がする。
かと言って徹を頼れば、バカにされるか敢えて変なアドバイスをされるかのどっちかだし。
「岩ちゃん〜、モテないのも分かるけど無い頭捻って一緒に考えてよ〜」
「あ?!なんだと?!」
「だから無い頭…」
「お前、年々及川に似てきてホント腹立つわ…」
「それだけはヤダ!!」
「ヤダってつっても似てるもんは似てんだよ。嫌なら思った事そのまま言うのやめろ」
「なんか同じような事蛍にも言われた気がする…」
岩ちゃんはため息をつきながら、あたしの手元の雑誌を覗く。
数秒間ページを見つめると、さっさと次々めくっていく。
「…どこがどう違うのか全然わかんねぇ」
「組み合わせが違うでしょ!ほら、ここ合わせてるスカートの色も!」
「女ってこんなどうでもいい所までこだわんのかよ」
「細部まで拘ってこそだよ」
「自分の服も選べねえ癖に偉そうな事言うな」
「じゃあ岩ちゃん的にはどれなの!」
「あ?あー…」
面倒臭そうに視線を雑誌に移す岩ちゃん。
さっきよりゆっくりページを見てる。
「これ」
「えーー?これは変だよロリっぽいよぉ」
「聞いといて何なんだよ!」
「岩ちゃん意外とロリコンなの?!」
「マイてめぇいい加減にしろよ…」
フリフリ気味の服を指差してキレる寸前の岩ちゃん。
だってそれは無いよー、岩ちゃんファッションセンス無さそうだけどさすがに変だよ。
「そっかぁそんなフリフリ系かー。そういう方が好きなのかな?」
「お前の相手の趣味なんて知らねぇよ」
「まぁこれは好きじゃなさそうなタイプだよね。絶対違うよ」
「そう思うなら俺に聞かずに自分で考えろ!」
「待って!まだ行かないで!」
足早に去ろうとする岩ちゃんを引き止める。
嫌な顔をしながらも、岩ちゃんは再び席についた。
「あたし本気で悩んでんだよ?もうちょい付き合ってよ〜」
「お前のちょっとはちょっとじゃねぇんだよ」
「で?どんなのがいいかな。やっぱスカートだと思う?」
「そもそもどこ行くんだ?」
「知らない」
「……」
「だって家で待ってろって言われただけだし」
「それとなく聞きゃいいだろ」
「めんどくさいから嫌!ほら、早くどこでも対応できそうな奴考えて!」
*
グダグダの議論が続く。
時間が経つにつれだんだんあたしの集中が切れてきて、岩ちゃんはイライラしだした。
「…まだ決まんねえのか?」
「だってー、こっちだと靴が…」
「んなもん慣れた奴履いときゃいいだろ!」
「はぁー?この服と合わないじゃん!」
「そこまで見ねえよ!」
「気になるんだからしょうがないでしょ!!」
「それはお前の問題だろうが!」
議論どころか口論になってくる。
だって岩ちゃん絶対めんどくさくなってきてるし!あたしの一世一代の大舞台なのに!
「もうアレだ、俺らでは決めらんねぇんだからアイツに頼るしかねえよ」
「まっ、まさか…!」
狼狽えるあたしを尻目に、岩ちゃんは携帯で誰かに電話をかけ始めた。
「おい、今すぐローンソ来い。今すぐ」
ドスの効いた声で一言だけ言うと、岩ちゃんは電話を切る。
絶対あいつじゃん…岩ちゃんも中々嫌な奴だ…
悪いことをしたわけでもないのに冷や汗が伝う。
これから来るであろう刺客を想定して、大人しく縮こまる。
岩ちゃんは不機嫌そうな顔で腕組みして座ってる。
くそー、徹が来るぐらいなら逃げようかな…
逃げ道を探してキョロキョロしていたら、お待ちかねの徹が仏頂面でやってきた。
「岩ちゃ〜ん、俺の事さんっざん突き放しといて呼び出すって何?しかも俺抜きでマイと密会?」
「違ぇよ。いいから座れ」
「ハイハイ」
徹がわざとらしくあたしの顔を見てから横に座る。
きっとあたしが蹴散らせって言ったこと気づいたんだと思う。
「で、マイ。本題は?わざわざ俺抜きで話してたのに埒あかなくなったのかな?」
「……左様でございマス」
「ほぉ〜〜、都合いいねぇマイちゃんは〜。何?この雑誌なんか関係あんの?」
「……服を選んで頂きたいデス」
「選んで欲しいって、どっかお出かけでもするのかなぁ?まさかあいつとデートでも行くの?」
バカにする気満々でニヤつく徹。
どう返そうか迷って固まっていると、岩ちゃんが助け船を出してくれる。
「そのまさかだってよ」
「ハァー?じゃあなんでもいいんじゃない?裸じゃなかったら」
「……選んでくだサイ」
「あ、裸でも喜ぶかもね?メガネくんどんな奴かあんま知らないけどさー」
「……」
む、むかつく…
すんごく言い返したい気分だけど、ここで帰られてしまっては耐えてる意味がない。
もうちょっと、もうちょっと我慢だ!あたし!
「そうかーマイが着る服な〜〜」
ペラペラ雑誌を捲りながら呟く徹。
一通りページを捲ると、何ページか戻った所で本を開いて机に置いた。
「こんなワンピースとかでいいんじゃない。普通にしなよ、普通」
「……!」
「お、いいんじゃねーか?」
「俺が直々に選んでやったんだから感謝しろ!」
徹が指差したのは、ちょっとだけ丈が短めの白いワンピース。
確かに、色々考えるよりも絶対失敗がなくていいかもしれない。
徹の態度と顔がむかつくけど、それは致し方ない。
センス、ばっちり!
やっぱり徹に聞くのが正解だったのか…!
「徹さま…!」
「それよりマイこんな服持ってんの?靴も見たことないけど」
徹が面倒臭そうに言う。
言われてみれば、無い…
「明日の朝買いに行く」
「何そのギリギリスケジュール。やっぱマイは素人だな」
「何事も経験を積んで玄人になるんですぅー」
「へぇ〜マイちゃん何の経験積むつもりなの?下着も俺が選んであげよっか?」
「やめろうんこ野郎!」
「徹死ね!!!」
「俺は親切で言ってやっただけだろ!この恩知らずども!いだっ」
徹があまりにも調子に乗り出したから、岩ちゃんが制裁を加える。
2人が揉み合ってる姿なんて全く視界に入らないほど、明日の事が楽しみになる。
人生初デート…
この2人以外とのお出かけ…
「あ、そういえばどこにこの服売ってるかわかんないからついてきてよ」
「明日は部活だよバァーーーカ!」
「じゃあ今からでもいいでしょ!!行くよ!」
「もうそのうち店閉まんじゃねえか」