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幸福論
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状況が理解できない。
ど、どうすれば…?!
**
「………」
ズット居テ???
あたしが?言った?どういう状況で?!
何そのプロポーズっぽい言葉!
あたし月島の事が好きなのかな〜程度に気付いたのもついさっきだし、ご飯には行くけどあくまで表面上はそういう仲じゃ無いと思うし、何故?!
ていうか、親の事に引いたからサヨナラの話かと思ったけど、見当違いみたい。
確かに内心家帰るとすんごい寂しいし親にクタバレなんて思うけど、月島にそんなこと言う資格はあたしにはないはず…
「…なんか言いなよ」
「言いますね?よく分からないから離してくれません?」
「無理」
「はぁ?ふざけてんの?」
「それはコッチのセリフ」
ちらっと視線を上げると、仏頂面のまま赤くなってる月島と目が合う。
鈍行状態のあたしが首を傾げると、月島は溜息をついた。
「…ナニ?自分はこういうの慣れてるとでも言いたいの?」
「何それ本当にそう思ってる?蛍意外と見る目ないねー」
「そういう態度だよ」
「逆パターンって事です〜、一周回ってなんとやら」
「…ああ、スプーンの件とかね」
「ぐっ…そうだよ…」
常識が無いって遠回しに言われたような気がする。
じゃあもし常識のある人ならどういう態度取るの?教えて?
月島の華奢で大きな手が背中に回ってる。
体温が直に伝わってくるから、ちょっと鼓動が早くなる。
「…そろそろ察してくれないデスカ?」
「…んー?」
「君はどういうつもりなのか知らないけど」
あたしは心情を察するようなスキル持ち合わせてないけど?
とは言え、何となく月島が言いたいことはわかってきた。
まっすぐ見つめてくる月島。
でも本当に?そうなの?
「僕が何にも思って無い人に、ご飯付いてったり世話焼いたりこういう事したりすると思う?」
「…いや、思わない」
「ここまで言ってまだ分かんない?」
分かる、分かるけども。
「なに?あたしに言わせたいの?捻くれてるねー」
「捻くれてて結構デース」
「はぁー」
今度はこっちがむずむずしてため息をつく。
改めて月島に視線を合わせると、目がばっちり合ってしまう。
ちょっと恥ずかしい。いや、結構。
「チョットマイ、目逸らさないで」
「…無理」
「ちゃんとこっち見て」
この人はどうしても自分から言いたくないらしい。
何なのそのプライドみたいなの。
そこまでして言ってほしいってか?
意を決して、月島に向き直る。と言っても、視線を合わせ直すだけ。
「……。
蛍、あたしの事好きでしょ」
言ってしまった。
もう知らない。
「…うん。マイはどうなの」
月島は当たり前かのようにサラッとそれに答えると、さっきよりもきつくあたしを抱きしめた。
目一杯月島の匂いがする。
答えとそれとが相まって、なんだかふわふわした表現しようの無い気持ちになってくる。
好きってこういう感じなのかな。
人からそんな意味の好きって言われたのも初めてだし、未体験ゾーン突入な訳だけど。
きっと、そう。
あたしも月島の事が好きなんだと思う。
「…おんなじだよ」
「あ、そう」
月島は素っ気なくも、ちょっと嬉しそうに答えた。
何だか更にあったかくなった気がする。
「マイ」
「…何?」
「付き合う?」
「…うん?」
「何で疑問形なの」
「いや…こういうの初めてで…」
そっか、どっちも好きなら、付き合うのが自然なのか…
でも、月島は気にならないのかな。
昨日いろいろ醜態晒したみたいだし。
「ていうか、蛍はあたしの事嫌じゃないの?」
「何それ。会話が噛み合ってないんですケド」
「んー、えっと、親の仕事の事とか…家庭環境とか…」
「僕はそういうの気にしてない」
「ほんとに?」
「ここまで言って嘘言う意味ないでしょ」
「全部受け入れてくれんの?家の事も徹たちのことも…あと、あたしの常識のなさも?」
「うん。そのつもり」
あたしの鬱蒼とした不安に、月島は即答で答えてくれた。
目の前がぱっと明るくなった気がした。
何よりあたしの全部を受け入れてくれた事が嬉しくて、ちょっと泣きそうになる。
素っ気なくて、自分と同じくらい捻くれてて、でもすごく優しくて綺麗な人。
こんな人に会ったのは初めて。
何でもできる表面上のあたしじゃなく、嫌な所も全部良いって言ってくれる。
さっきまで持て余していた手を月島に回す。
細くて綺麗な手と同じく、全部あったかい。
「蛍」
「ナニ」
「…ありがとう」
「どういたしマシテ」
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴る。
濃く過ぎていった昼休みは終わりだ。
昼休みの終わりとともに、あたしたちの新しい関係が始まる。
「あっ!!お弁当食べれなかった!!」
「次の休み時間にでも食べればいいデショ」