お名前をお願いします
幸福論
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
**
ぐらつく頭。
きっと昨日勢いで飲んだウイスキーはストレートに近かったんだろうと思う。
布団から起き上がって時計を見れば、もう10時。
「んーー、遅刻だ…」
高校初の遅刻。
まあ、しょうがないしいいや。
*
だらだら準備をして結局学校に着いたのは、昼休み。
このまま職員室に行くのはめんどくさいからとりあえずお昼ご飯を食べることにしよう。
「おはよー」
あたし抜きでご飯の準備をしている月島と山口くんの間にずかずか割り込む。
来ないと思ってあたしの席を用意しないなんて何事だ!
「マイ、どうしたの?もうお昼だよ!」
「寝すぎたぁー」
「珍しいね?なんかあったの?」
「んーー…」
山口くんに昨日の件を話していいのか、月島にアイコンタクトする。
月島は即座に嫌な顔をしたから、きっとアウトって事だ。
「忘れた!ちょっと痴呆だわー」
「あははっ、早いよ」
ヘラヘラ笑って誤魔化す。
あれ、でも昨日ほんとに何があったんだっけ…
ていうか、あたしいつ家帰ったっけ?
「チョット」
「なに?」
「…来て」
「はぁ?」
「話あるから」
「……はぁーーい?」
月島は山口くんに「ちょっと抜ける」って言い残して教室を出た。
何?あたし行かなきゃダメなの?
座ったままのあたしをみた山口くんがちょっと慌てだした。
「マイ?!呼ばれてるのに座ってちゃダメだよ!」
「えー…来たばっかなのに…」
「ほら、俺はいいからツッキーのとこ行ってあげて!」
「くそーあたしのお弁当タイム削りやがって…」
たしなめられながら、渋々廊下に出る。
突き当たりの所で、月島が仏頂面で待っていた。
何その顔?いきなり呼び出した方が悪いでしょ。
「なんですぐ付いてこれないかなぁ」
「大した用事じゃないと思って」
「あーソウデスカ」
昼休みの、人の多い廊下を月島について歩く。
月島はでかいから、周りの人が気づいて避ける。その後ろを歩いてたらあたしも快適だ。
しばらく歩いて、人気のない棟の屋上前の踊り場に着いた。
「何なの?こんな遠くまで来てさー。お弁当食べれなくなるじゃん」
「いいから黙って聞いて」
「黙れませーん」
「……」
あたしの返しに月島が溜息をつく。
だってほんとの事だし。
「昨日の事、どこまで覚えてる?」
「ハァ?どこまででもいいでしょ」
「…烏養さんに香水ぶちまけた所まで?」
「さすがにもっと覚えてるよ!!ユリさんに渡されたやつイッキしたとこまでは!」
馬鹿にされて腹が立ったから、うっかり正直に言ってしまった。
クソ!本当にそこまでしか知らないんだけど何したんだろう!!
「…あの後、僕が家まで送った」
「……うーん、そんな気もする…」
「君に脅迫されて家に上がった。言っとくけど僕帰ろうとしてたから」
「ハァ?!それは盛ってない?!」
「事実だよ。それで、家族の話とかしてた。君が喋り続けてただけだけどね」
家族の話。
背筋が凍った気がする。
そっか、うっかり話しちゃったって事かぁー。まあでも、ユリさんに会っちゃったりバイト先行ったりしてるから、バレるのも時間の問題だったけど。
月島は、それに引いたからもう関わるなって事で呼び出したのかな?
偏見はない、なんて言ってたっけ?でもそんなの建前かも知れないし。
……そうだったら寂しいな。
「…じゃあもうさぁ、あたしとはバイバイ疎遠てことでオッケーなの?」
「言ってる意味が分かんないんだけど」
「気持ち悪いし幻滅したから、もう喋って来るなって事で呼び出したんでしょ?わざわざ誰も来ないような場所選んでくれたんだ?」
「…チョット」
「月島も意外と優しいよねー。そんじゃーね」
「!…待っ」
月島に背を向けて、階段をゆっくり降りる。
またこのせいで友達居なくなっちゃった。
もう徹だって離れちゃった気がするし、あたしを受け止めてくれる人はもういない。
いつもの事なのに、今回は一層寂しい気がする。
あれかな、あたしには恋愛とかよく分かんないけど、実は月島の事好きだったのかな。
マネキンみたいな手とか、羨ましいし好きだな。
背がすごく高くて、意外に力強いところ。
性格がちょっと似てるところとかも。
本当は優しい所。
最初はあんまり好きじゃなかったけど、多分、だんだん惹かれてったのかなと思う。
考えるほどさみしくなってきて、身体が冷えて行くのを感じる。
まるで、死にかけた人みたい。
「待てって言ってるデショ」
大会の時みたいに、腕を思いっきり掴まれる。
冷えた身体が、ぶわっと温まった。
「…追い討ちでもかけるつもりですかぁ?」
「ホント、どこまでも捻くれてるよね」
「お互い様でしょ。離して」
「無理」
腕をぶんぶん振っても、月島の手は離れない。
それどころか引きずって上まで連れ戻された。
何?まだ何かあんの?
「ホントに何も覚えてないの?」
「知らない」
「自分が言ったことも?」
「覚えてるわけないじゃん」
思い出せと言われても、無理な物は仕方ない。
どれだけ記憶を辿っても、なんとなく月島の声がぼんやり聞こえてきた事とひたすら寂しくなった事しか分からない。
何か言ったのかな。
こんな所まで来て話す事だったのかな。
「……から、言った癖に」
「は…!?」
突如奪われる視界。
目の前は真っ黒。制服。
頭が追いつかないんだけど、いきなり月島に抱きしめられたみたい…?
「だから…マイが自分から、ずっと居てって僕に言ったの」
頭上からボソボソした月島の声。
……。
思考停止。
あたしは月島に抱きしめられたまま完全に固まった。
ぐらつく頭。
きっと昨日勢いで飲んだウイスキーはストレートに近かったんだろうと思う。
布団から起き上がって時計を見れば、もう10時。
「んーー、遅刻だ…」
高校初の遅刻。
まあ、しょうがないしいいや。
*
だらだら準備をして結局学校に着いたのは、昼休み。
このまま職員室に行くのはめんどくさいからとりあえずお昼ご飯を食べることにしよう。
「おはよー」
あたし抜きでご飯の準備をしている月島と山口くんの間にずかずか割り込む。
来ないと思ってあたしの席を用意しないなんて何事だ!
「マイ、どうしたの?もうお昼だよ!」
「寝すぎたぁー」
「珍しいね?なんかあったの?」
「んーー…」
山口くんに昨日の件を話していいのか、月島にアイコンタクトする。
月島は即座に嫌な顔をしたから、きっとアウトって事だ。
「忘れた!ちょっと痴呆だわー」
「あははっ、早いよ」
ヘラヘラ笑って誤魔化す。
あれ、でも昨日ほんとに何があったんだっけ…
ていうか、あたしいつ家帰ったっけ?
「チョット」
「なに?」
「…来て」
「はぁ?」
「話あるから」
「……はぁーーい?」
月島は山口くんに「ちょっと抜ける」って言い残して教室を出た。
何?あたし行かなきゃダメなの?
座ったままのあたしをみた山口くんがちょっと慌てだした。
「マイ?!呼ばれてるのに座ってちゃダメだよ!」
「えー…来たばっかなのに…」
「ほら、俺はいいからツッキーのとこ行ってあげて!」
「くそーあたしのお弁当タイム削りやがって…」
たしなめられながら、渋々廊下に出る。
突き当たりの所で、月島が仏頂面で待っていた。
何その顔?いきなり呼び出した方が悪いでしょ。
「なんですぐ付いてこれないかなぁ」
「大した用事じゃないと思って」
「あーソウデスカ」
昼休みの、人の多い廊下を月島について歩く。
月島はでかいから、周りの人が気づいて避ける。その後ろを歩いてたらあたしも快適だ。
しばらく歩いて、人気のない棟の屋上前の踊り場に着いた。
「何なの?こんな遠くまで来てさー。お弁当食べれなくなるじゃん」
「いいから黙って聞いて」
「黙れませーん」
「……」
あたしの返しに月島が溜息をつく。
だってほんとの事だし。
「昨日の事、どこまで覚えてる?」
「ハァ?どこまででもいいでしょ」
「…烏養さんに香水ぶちまけた所まで?」
「さすがにもっと覚えてるよ!!ユリさんに渡されたやつイッキしたとこまでは!」
馬鹿にされて腹が立ったから、うっかり正直に言ってしまった。
クソ!本当にそこまでしか知らないんだけど何したんだろう!!
「…あの後、僕が家まで送った」
「……うーん、そんな気もする…」
「君に脅迫されて家に上がった。言っとくけど僕帰ろうとしてたから」
「ハァ?!それは盛ってない?!」
「事実だよ。それで、家族の話とかしてた。君が喋り続けてただけだけどね」
家族の話。
背筋が凍った気がする。
そっか、うっかり話しちゃったって事かぁー。まあでも、ユリさんに会っちゃったりバイト先行ったりしてるから、バレるのも時間の問題だったけど。
月島は、それに引いたからもう関わるなって事で呼び出したのかな?
偏見はない、なんて言ってたっけ?でもそんなの建前かも知れないし。
……そうだったら寂しいな。
「…じゃあもうさぁ、あたしとはバイバイ疎遠てことでオッケーなの?」
「言ってる意味が分かんないんだけど」
「気持ち悪いし幻滅したから、もう喋って来るなって事で呼び出したんでしょ?わざわざ誰も来ないような場所選んでくれたんだ?」
「…チョット」
「月島も意外と優しいよねー。そんじゃーね」
「!…待っ」
月島に背を向けて、階段をゆっくり降りる。
またこのせいで友達居なくなっちゃった。
もう徹だって離れちゃった気がするし、あたしを受け止めてくれる人はもういない。
いつもの事なのに、今回は一層寂しい気がする。
あれかな、あたしには恋愛とかよく分かんないけど、実は月島の事好きだったのかな。
マネキンみたいな手とか、羨ましいし好きだな。
背がすごく高くて、意外に力強いところ。
性格がちょっと似てるところとかも。
本当は優しい所。
最初はあんまり好きじゃなかったけど、多分、だんだん惹かれてったのかなと思う。
考えるほどさみしくなってきて、身体が冷えて行くのを感じる。
まるで、死にかけた人みたい。
「待てって言ってるデショ」
大会の時みたいに、腕を思いっきり掴まれる。
冷えた身体が、ぶわっと温まった。
「…追い討ちでもかけるつもりですかぁ?」
「ホント、どこまでも捻くれてるよね」
「お互い様でしょ。離して」
「無理」
腕をぶんぶん振っても、月島の手は離れない。
それどころか引きずって上まで連れ戻された。
何?まだ何かあんの?
「ホントに何も覚えてないの?」
「知らない」
「自分が言ったことも?」
「覚えてるわけないじゃん」
思い出せと言われても、無理な物は仕方ない。
どれだけ記憶を辿っても、なんとなく月島の声がぼんやり聞こえてきた事とひたすら寂しくなった事しか分からない。
何か言ったのかな。
こんな所まで来て話す事だったのかな。
「……から、言った癖に」
「は…!?」
突如奪われる視界。
目の前は真っ黒。制服。
頭が追いつかないんだけど、いきなり月島に抱きしめられたみたい…?
「だから…マイが自分から、ずっと居てって僕に言ったの」
頭上からボソボソした月島の声。
……。
思考停止。
あたしは月島に抱きしめられたまま完全に固まった。