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幸福論
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月島と別れ、烏野の応援席の目立たない場所に移動した。
開会式は飲み物を買いに行っていたから見てない。
選んだのは一番上の端の席。
もう会ってしまったけど、何となくあの二人に見つかりたくない一心で一番どこからも見え辛い席に座る。
ここなら、あのうるさい及川親衛隊に会うこともない。は〜、やっと落ち着いた。
「集合ーー!」
「「お願いしァーーース!!!」」
烏野の一回戦が始まる。
パンフレットなんかは持ってないし入り口のトーナメント表もちゃんと見てないから、対戦校が何処かは全然知らない。
だいぶ熱気のこもった会場。
あたしも中学の時に助っ人で大会に出た事はあるけど、自分自身のやる気が無さすぎてあまりそれを感じたことはなかった。
今もだけど、熱心に部活に取り組む人の気が知れない。
とりあえず、戦況というより人を観察する。
主将サン、レシーブうまいな。さすがぁー。
ロン毛の人はもっと気弱いと思ってた。試合になると変わるってやつ?
坊主先輩は見たまんま。長時間居たくないタイプだなぁ。
イワトビペンギンは上手すぎて天才さんっぽい。
あとはみんな一年生。
日向と王様は相変わらず色々と変だ。意味不明すぎてみてて面白いけど。どっから打ってんの?
部活の時から思ったけど、月島は…
「やる気ねーな…」
つい、ボソッと口に出してしまった。
下手とか、そういうのじゃないけど。
いつか言ってた「ソツなく」っていう表現。本当ぴったりだと思う。
足を引っ張らず、影薄く、さらっと。スマートに。
って風な考えなんだろうけど、この人はなんか決定打に欠ける。
ひとりだけ、この会場の雰囲気とまるで違う異質な感じ。
「…他の人、これでよく怒らないなぁ」
周りに誰も居ないからボソボソ独り言。
スマートにというより只々覇気にかける。
あたしは何やってももっと上手だけど、顔を出した部活で何度かやる気が無いことを注意されて喧嘩になった。
ひとりだけ気力がないと、チームの覇気も落ちる!なんて言われたりして。
こいつも団体競技向いてないな。
なんでバレーやってんのかな。
やる気のない姿がどうしてもあたしと重なって、ちょっと気が重くなる。
ほんと、嫌な部分だけ似てるし。
さらーっとめんどくさそうにブロックを飛んでる月島を見る。
むかつくほど色白だし、手脚がすごい長い。
徹と岩ちゃんも背が高いけど、月島はもっと高いしスッと綺麗。マネキンみたい。
…指折れてないかな。痣とかできてないかな。
折角綺麗なのにな。
スポーツマンに対して侮辱になりそうな事ばっかりが浮かぶ。
でもやっぱり会場に似合わない月島は、異質なマネキンのように見える。
頼ったらいいから、なんて言っていたけど、ほんとに頼っちゃったら潰れてしまいそう。
なんて心許ない。
キュッキュッ
ダンッ
素早く進んでいく試合を見てると、幼い頃、徹と岩ちゃんとあたしで遊んでいた事を思い出す。
家で宿題をしてたらいつも二人が迎えに来て、夕方くらいまで3人で遊んだ。
それはバレーもどきだったり、サッカーだったり、虫捕りだったり。
あたしは二人よりも2歳年下で更には女だけど、御構いなしで全力でかかってくる。
最初は泣きこそしていたものの、毎日毎日遊んでたらあたしはクラスで一番運動が得意になったいた。
徹と岩ちゃんが「マイ〜〜!」って玄関先で叫ぶ声にいつもワクワクした。
今日は何するんだろ、誰が勝つだろって。
あたしが一番キラキラしてて、楽しかった頃。
純粋にただひたすら笑えた頃。
弱冠15歳だけど、昔が懐かしく思える。
幼いあたしならきっと、今より楽しそうにこの試合を見るんだろう。
もし、この関係が戻ってこなかったら。
そう思うと少し怖くなった。
ピーーー
試合終了の合図が鳴る。
烏野は一回戦突破らしい。
あたしは我に返って、心の中で拍手をした。
さて。さっさと帰ろう。
月島と別れ、烏野の応援席の目立たない場所に移動した。
開会式は飲み物を買いに行っていたから見てない。
選んだのは一番上の端の席。
もう会ってしまったけど、何となくあの二人に見つかりたくない一心で一番どこからも見え辛い席に座る。
ここなら、あのうるさい及川親衛隊に会うこともない。は〜、やっと落ち着いた。
「集合ーー!」
「「お願いしァーーース!!!」」
烏野の一回戦が始まる。
パンフレットなんかは持ってないし入り口のトーナメント表もちゃんと見てないから、対戦校が何処かは全然知らない。
だいぶ熱気のこもった会場。
あたしも中学の時に助っ人で大会に出た事はあるけど、自分自身のやる気が無さすぎてあまりそれを感じたことはなかった。
今もだけど、熱心に部活に取り組む人の気が知れない。
とりあえず、戦況というより人を観察する。
主将サン、レシーブうまいな。さすがぁー。
ロン毛の人はもっと気弱いと思ってた。試合になると変わるってやつ?
坊主先輩は見たまんま。長時間居たくないタイプだなぁ。
イワトビペンギンは上手すぎて天才さんっぽい。
あとはみんな一年生。
日向と王様は相変わらず色々と変だ。意味不明すぎてみてて面白いけど。どっから打ってんの?
部活の時から思ったけど、月島は…
「やる気ねーな…」
つい、ボソッと口に出してしまった。
下手とか、そういうのじゃないけど。
いつか言ってた「ソツなく」っていう表現。本当ぴったりだと思う。
足を引っ張らず、影薄く、さらっと。スマートに。
って風な考えなんだろうけど、この人はなんか決定打に欠ける。
ひとりだけ、この会場の雰囲気とまるで違う異質な感じ。
「…他の人、これでよく怒らないなぁ」
周りに誰も居ないからボソボソ独り言。
スマートにというより只々覇気にかける。
あたしは何やってももっと上手だけど、顔を出した部活で何度かやる気が無いことを注意されて喧嘩になった。
ひとりだけ気力がないと、チームの覇気も落ちる!なんて言われたりして。
こいつも団体競技向いてないな。
なんでバレーやってんのかな。
やる気のない姿がどうしてもあたしと重なって、ちょっと気が重くなる。
ほんと、嫌な部分だけ似てるし。
さらーっとめんどくさそうにブロックを飛んでる月島を見る。
むかつくほど色白だし、手脚がすごい長い。
徹と岩ちゃんも背が高いけど、月島はもっと高いしスッと綺麗。マネキンみたい。
…指折れてないかな。痣とかできてないかな。
折角綺麗なのにな。
スポーツマンに対して侮辱になりそうな事ばっかりが浮かぶ。
でもやっぱり会場に似合わない月島は、異質なマネキンのように見える。
頼ったらいいから、なんて言っていたけど、ほんとに頼っちゃったら潰れてしまいそう。
なんて心許ない。
キュッキュッ
ダンッ
素早く進んでいく試合を見てると、幼い頃、徹と岩ちゃんとあたしで遊んでいた事を思い出す。
家で宿題をしてたらいつも二人が迎えに来て、夕方くらいまで3人で遊んだ。
それはバレーもどきだったり、サッカーだったり、虫捕りだったり。
あたしは二人よりも2歳年下で更には女だけど、御構いなしで全力でかかってくる。
最初は泣きこそしていたものの、毎日毎日遊んでたらあたしはクラスで一番運動が得意になったいた。
徹と岩ちゃんが「マイ〜〜!」って玄関先で叫ぶ声にいつもワクワクした。
今日は何するんだろ、誰が勝つだろって。
あたしが一番キラキラしてて、楽しかった頃。
純粋にただひたすら笑えた頃。
弱冠15歳だけど、昔が懐かしく思える。
幼いあたしならきっと、今より楽しそうにこの試合を見るんだろう。
もし、この関係が戻ってこなかったら。
そう思うと少し怖くなった。
ピーーー
試合終了の合図が鳴る。
烏野は一回戦突破らしい。
あたしは我に返って、心の中で拍手をした。
さて。さっさと帰ろう。