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幸福論
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徹が去って、立ち尽くす。
…やべ〜〜〜
本当、どうしよう。
思ったより状況は悪そう。
最後は強気に言い返してみたけど、今回こそ友達やめられちゃうかも知れない。
徹、友達はいないけど、女の子なら周りにいっぱい居るし。
あたしの代わりなんてもう居るのかも知れない。
どうしよう。
あたしの大事な居場所。
「ねぇ、チョット」
「…次は何?」
「なんでいつもみたいに言い返さなかったの」
「…別に」
「君さ、やっぱり幼馴染の前では弱いね」
月島に痛いところを突かれた。
人に言われると腹が立つけど、本当にそうだ。
あたしは威張ってるように見えて、内心徹と岩ちゃんの心情は伺ってるんだと思う。
弱いっていうか、関係が崩れるのが怖い。
人にはきっと、わかんない。
「だから何なの?あんたに関係ないでしょ。開会式始まるんじゃないの。行ったら?」
「生憎まだだよ。さっきの幼馴染サンのはハッタリ」
今ほっといて欲しい気分なのに、まだこいつ居るつもりなんだ。
てか、何しにきたの?
なんで余計ややこしくすんの?
これ以上…
「蛍」
「ナニ?」
「あたしの大事な味方が、あたしのせいで消えちゃうかも知んない」
「だから?」
「あたしのことちゃんと理解してくれる人って他にいないの。これで絶交とかされたら、手詰まりって感じ」
「……」
「はー。どうすればいいんだろー」
入って来ないで、とは言えなかった。
なぜか言いたくなかった。
徹は優しいから、杞憂かもしれない。
けど、大事な事はいつでも最悪の想定で臨まないと。
代わりは、多分いない。
「マイさ」
「何」
「友達って、その人達しかいないとでも思ってんの?僕らに対する嫌味?」
「そういう事言ってんじゃないんだけど」
「新参者の僕じゃ役不足なんだ?」
「…だからぁ」
ため息をついて月島を見上げる。
こいつ、色白いな。
背もすごく高いし、よく見たら綺麗な顔してるんだな。
知らないところで結構モテるんだろうな。
腕はまだ掴まれたまま。
側から見たら、何してんだって感じ。
また勘違い女共が増えたりして?
そんな綺麗な月島は、あたしの友達だってアピールしてくれる。
それは嬉しいことだけど、彼はあたしのことをまだ全然知らない。
「…さっきはどーも。結局助けに来たのは岩ちゃんだし、お礼言うとこか分かんないけど」
「君は一言余計なんだよいつも」
丁寧に月島の手を剥がす。
もうさっきみたいな力は込められてなくて、長くて細い指があっさり剥がれた。
ボール触って、折れたりしないのかな。この手。
「…試合でこのほっそい指折らないように頑張ってね。ちょっと離れたとこから見てるから」
「君みたいに無茶しないから大丈夫だよ」
「どうだか」
月島の手を離して、廊下を引き返す。
正直もう帰りたい気持ち。
未だにヒソヒソ囁く及川親衛隊が鬱陶しい。
「マイ」
「…まだ何か?」
「手詰まりになったら、頼ったらいいから」
「…それはそれは頼もしい限りで」
「ドーモ」
月島はあたしに視線を合わせないままそう言って、おそらく烏野メンバーのいる方へ戻っていく。
頼ったらいいから。
出会ってちょっとしか立たない癖に、何様だよ。
心の中で、あたしはちょっとだけ笑った。
さあ、今日の所は気を取り直して席探ししないと。