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幸福論
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インターハイ予選初日。
高校初の正式試合。
開会式までまだ時間があったから、僕は一人トイレに行こうと歩いていた。
「ねぇあいつ居たよ?!見た?!」
「見たぁ!なんでいるんだろ?」
謎の女子の行列。
多分、青城のあの人のファンの人たち。
及川さん及川さん言っていて結構鬱陶しい。
誰のことを言ってるのかは知らないけど、時折悪口のようなものが聞こえてくる。
「あいつ、及川さんのこと馬鹿にしすぎだよね?中学の時ずっと一緒にいたしさぁ」
「うちらの及川さんなのにね!」
「ほんっとうざい!なんで今更また来てんの?」
ずっと一緒って、エースの岩泉さんのことだろうか?
君たちにそんなこと言われる筋合いないだろ、と思う。
「月咲マイ!」
背筋に嫌な汗が伝った。
そういうことか。
さっきから聞こえてくる悪口は、大王様の幼馴染でもあるマイの事だ。
月咲は別に媚びるようなタイプではないし、第一幼馴染にそんな態度を取る事は絶対にないと言える。
それにマイの幼馴染は及川徹だけじゃなくて、岩泉さんもだろ。
きっと月咲は、中学の間ずっとこういう事を言われ続けてきたんだと思う。
幼馴染のいる青城に進まず烏野に来た理由も、これが関係してるのかも知れない。
…勝手な勘違い。
口々に言われる月咲の悪口に、僕は怒りを覚えた。
「岩ちゃん助けてーっ!!」
「ダメだよ。ちゃんと説明してよ」
突如聞こえる張本人の声。
と、噂の大王様の声。
ナニ?どういう状況?
ていうか、なんでいきなり捕まってんの?
例の及川サンにずるずる引き摺られている月咲。
冗談でやっている顔ではなくて、珍しく怯えている。
「あの、チョット」
咄嗟に僕は彼女の手を掴んだ。
「あ、蛍…」
何やってんだろ、僕。面倒ごとに首突っ込むなんて。
ぽかーんとした顔のマイと目が合う。
視線を上げると、大王様が僕を睨みつけていた。
「えぇ?マイ何の冗談なの?」
「…なにが?」
「マイが俺に引き摺られてて、それを助ける友達が居たなんて聞いてないよ!しかも男!」
大王様の言葉におどおどする月咲。
なんでいつもみたいに言い返さないのさ?
「だから今日ここに居んの?俺に対する嫌がらせかな?」
「…別に嫌がらせじゃないもん」
どういう状況なのかは知らないけど、彼女はかなり弱気。
幼馴染を裏切ったことがよっぽど応えているのかもしれない。
「で、メガネくんお前はなんなの?まさか本当にマイの彼氏とか?!」
「…だったら何かあるんですか」
全然彼氏じゃないし自信もないけど、とりあえずハッタリで話す。
大王様は嫌な笑みを浮かべている。
マイはと言えば、肯定も否定もせず僕と大王様を交互に見て不安げな顔をしている。
「まぁそれは嘘だよね〜、マイは鈍いからそういうの」
「そうとも限らないですよ」
そんな根拠はない。読み通りかなり鈍い。
「何?それって俺にやきもち妬いてるのかな?マイ可愛いもんねー見た目だけは。お前にはあげないけど〜」
「あなたの物でもないですよね?」
「…腹立つクソガキばっかだなぁ」
だんだんなんの会話なのかわからなくなってくるけど、このまま月咲を取られるのがなんとなく癪だった。
当の本人は脱出口を探すようにキョロキョロしている。本当に自分のことしか考えないらしい。
僕からも逃げようとしてるように見えたから、細い腕を握る力を強めた。
「及川!!そろそろ行くぞ!」
無理矢理マイを引っ張ろうか考えていたところで、もう一人の幼馴染が現れた。
マイの本当に困った顔を見逃さず、大王様の手を素早く引き剥がした。
この人はどういう立場なんだろう。
大王様ほどマイに執着してるわけではなさそう。言うならば、保護者的な。
そのまま二人の会話を聞いていると、親離れだかなんだか僕には理解不能な言葉が聞こえて来た。
「そんなに悔しいなら試合で勝てばいいだろ!」
ド正論。本当にそれに尽きると思う。
「おいマイちゃん」
「なに」
「及川さんはマイに彼氏ができたりするの不快だからね!!出来たらもう家に上げてやんないからな!!」
「ハァ?何それ!!」
げんなりするほどお互い超自己中な会話。
マイの性格形成に一役買っているのは、この人なんだろうなと実感する。
それと同時に、小さい頃からマイを知っている及川サンに劣等感を感じた。
こんな事、思ってもしょうがないんだけど。
「マイのバーカ!!バーカ!烏野負けろ!!」
「おいさっさと行くぞ。じゃあマイ、後でな」
大人げない台詞を吐いて、大王様はエースに引き摺られて行く。
ホント、こっちの人の影響受ければよかったのに。
廊下に僕と月咲二人だけが残され、沈黙が生まれる。
「…早々に災難だね」
「やっぱり大人しく家にいればよかった」
さっきの女子の話といい幼馴染との関係といい、意外と大変な思いをしているらしい月咲。
表情はいつもより暗い。
どういうつもりで彼女が言ったのか、僕は知らない。
インターハイ予選初日。
高校初の正式試合。
開会式までまだ時間があったから、僕は一人トイレに行こうと歩いていた。
「ねぇあいつ居たよ?!見た?!」
「見たぁ!なんでいるんだろ?」
謎の女子の行列。
多分、青城のあの人のファンの人たち。
及川さん及川さん言っていて結構鬱陶しい。
誰のことを言ってるのかは知らないけど、時折悪口のようなものが聞こえてくる。
「あいつ、及川さんのこと馬鹿にしすぎだよね?中学の時ずっと一緒にいたしさぁ」
「うちらの及川さんなのにね!」
「ほんっとうざい!なんで今更また来てんの?」
ずっと一緒って、エースの岩泉さんのことだろうか?
君たちにそんなこと言われる筋合いないだろ、と思う。
「月咲マイ!」
背筋に嫌な汗が伝った。
そういうことか。
さっきから聞こえてくる悪口は、大王様の幼馴染でもあるマイの事だ。
月咲は別に媚びるようなタイプではないし、第一幼馴染にそんな態度を取る事は絶対にないと言える。
それにマイの幼馴染は及川徹だけじゃなくて、岩泉さんもだろ。
きっと月咲は、中学の間ずっとこういう事を言われ続けてきたんだと思う。
幼馴染のいる青城に進まず烏野に来た理由も、これが関係してるのかも知れない。
…勝手な勘違い。
口々に言われる月咲の悪口に、僕は怒りを覚えた。
「岩ちゃん助けてーっ!!」
「ダメだよ。ちゃんと説明してよ」
突如聞こえる張本人の声。
と、噂の大王様の声。
ナニ?どういう状況?
ていうか、なんでいきなり捕まってんの?
例の及川サンにずるずる引き摺られている月咲。
冗談でやっている顔ではなくて、珍しく怯えている。
「あの、チョット」
咄嗟に僕は彼女の手を掴んだ。
「あ、蛍…」
何やってんだろ、僕。面倒ごとに首突っ込むなんて。
ぽかーんとした顔のマイと目が合う。
視線を上げると、大王様が僕を睨みつけていた。
「えぇ?マイ何の冗談なの?」
「…なにが?」
「マイが俺に引き摺られてて、それを助ける友達が居たなんて聞いてないよ!しかも男!」
大王様の言葉におどおどする月咲。
なんでいつもみたいに言い返さないのさ?
「だから今日ここに居んの?俺に対する嫌がらせかな?」
「…別に嫌がらせじゃないもん」
どういう状況なのかは知らないけど、彼女はかなり弱気。
幼馴染を裏切ったことがよっぽど応えているのかもしれない。
「で、メガネくんお前はなんなの?まさか本当にマイの彼氏とか?!」
「…だったら何かあるんですか」
全然彼氏じゃないし自信もないけど、とりあえずハッタリで話す。
大王様は嫌な笑みを浮かべている。
マイはと言えば、肯定も否定もせず僕と大王様を交互に見て不安げな顔をしている。
「まぁそれは嘘だよね〜、マイは鈍いからそういうの」
「そうとも限らないですよ」
そんな根拠はない。読み通りかなり鈍い。
「何?それって俺にやきもち妬いてるのかな?マイ可愛いもんねー見た目だけは。お前にはあげないけど〜」
「あなたの物でもないですよね?」
「…腹立つクソガキばっかだなぁ」
だんだんなんの会話なのかわからなくなってくるけど、このまま月咲を取られるのがなんとなく癪だった。
当の本人は脱出口を探すようにキョロキョロしている。本当に自分のことしか考えないらしい。
僕からも逃げようとしてるように見えたから、細い腕を握る力を強めた。
「及川!!そろそろ行くぞ!」
無理矢理マイを引っ張ろうか考えていたところで、もう一人の幼馴染が現れた。
マイの本当に困った顔を見逃さず、大王様の手を素早く引き剥がした。
この人はどういう立場なんだろう。
大王様ほどマイに執着してるわけではなさそう。言うならば、保護者的な。
そのまま二人の会話を聞いていると、親離れだかなんだか僕には理解不能な言葉が聞こえて来た。
「そんなに悔しいなら試合で勝てばいいだろ!」
ド正論。本当にそれに尽きると思う。
「おいマイちゃん」
「なに」
「及川さんはマイに彼氏ができたりするの不快だからね!!出来たらもう家に上げてやんないからな!!」
「ハァ?何それ!!」
げんなりするほどお互い超自己中な会話。
マイの性格形成に一役買っているのは、この人なんだろうなと実感する。
それと同時に、小さい頃からマイを知っている及川サンに劣等感を感じた。
こんな事、思ってもしょうがないんだけど。
「マイのバーカ!!バーカ!烏野負けろ!!」
「おいさっさと行くぞ。じゃあマイ、後でな」
大人げない台詞を吐いて、大王様はエースに引き摺られて行く。
ホント、こっちの人の影響受ければよかったのに。
廊下に僕と月咲二人だけが残され、沈黙が生まれる。
「…早々に災難だね」
「やっぱり大人しく家にいればよかった」
さっきの女子の話といい幼馴染との関係といい、意外と大変な思いをしているらしい月咲。
表情はいつもより暗い。
どういうつもりで彼女が言ったのか、僕は知らない。