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幸福論
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6月某日。
日向たちと約束(?)していたインターハイ予選を観に来た。
人は多い。これならあたしも目立たない。
みんなの言う通り青城はシードで、一回戦は出ないみたいだ。
でも万が一のことを考えて、髪はいつものように結ばずに下ろしたままで来た。月島のアドバイスだけど。
視界にチラつく髪が鬱陶しい。
「あっ!!問題児!!」
「ようマイちゃん!」
「あ、どーも」
入り口付近に立っていると、烏野の2年生に遭遇した。えっと、坊主の田中サンとイワトビペンギンの西谷サン。
相変わらず二人とも元気で、見ているこっちは生気を奪われてしまいそうな勢いだ。
「もしかして今日、観に来てくれたのか?!」
「ハイ、日向たちと約束してたんで。でも一回戦終わったら帰りますね〜」
「なんでだよ!折角だから最後まで居たらいいだろ!」
「ちょっと事情があるのでー。それじゃ、頑張ってくださ〜い」
あの二人目立つし捕まったら最後っぽいから、適当に笑顔を作って逃げる。
次の関門は席探し。
堂々と烏野の応援席に座るのも目立ちそうだし、相手側に座るわけにも行かないしで結構悩む。
とりあえずトイレに行こうと思って廊下を歩くと、うんざりするほど女子トイレはごった返しているようだった。
なんだよこれ…青城まだのはずでしょ?
予想通りこれはきっと徹の親衛隊たちだと思う。
アイドルでもあるまいし、アホくさい。
だいぶげんなりした顔で頭の悪い親衛隊の皆さんを見つめてトイレ待ちをする。
そこまで顔綺麗に作っても誰も見てねーよっ
一人心の中で悪態をついていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
一緒にいるっぽい奴の口から、アレって月咲マイじゃないすか?なんて言葉も聞こえる。
えっ…まさか…
「お?やっぱりマイか?」
「っっっっ!!岩チャン!!!」
今世紀最大のピンチ。
合わないよう願っていた相手に思いっきり遭遇してしまった。
顔が青ざめていくのを感じながら岩ちゃんの隣を見ると、まだ幸いなことに徹ではなく背の高いらっきょうっぽい奴だった。
「今日は来ねえんじゃなかったのか?及川の野郎、マイに断られたって凹んでたぞ」
「そそ、それが…あの…そのですね…」
「…あー、アレか。自分の学校の応援に来た感じか?いい事じゃねえか、馴染んでるみたいで」
「岩ちゃん…!!」
岩ちゃんは笑顔で、菩薩のように広い心で受け入れてくれた。
本当にこの人友達で良かった!!
「まあどっちの応援だとしても、折角来たんだろ。アイツに会ってけば?」
「…ちょっとそれはね」
岩ちゃんはサラッと言うけど、徹が結構嫌な性格してることぐらいあたしは知ってる。
もし裏切ってここに居ることがバレたら、どんな仕返しをされることか。
考えるだけで悪寒がする。
「あのさ岩ちゃん…お願いなんだけど…」
「どうした?」
「徹にあたしが居たってこと絶対言わないでくんない?!めんどくさくなること目に見えてるし、なんならアイツ変な誤解したままだしややこしくなる以外の道は無いから!!」
「お、おう…でもその、マイ…」
岩ちゃんが珍しく歯切れの悪い言い方をする。
岩ちゃんの視線があたしを通り抜けて、あたしの後ろを見たまま固まってる。
あたしも釣られて後ろを向く。
「あっれぇ〜〜マイちゃ〜〜ん??」
「!!!」
目の前に、目が笑っていない笑顔であたしを見る徹。
状況が飲み込めない岩ちゃんとらっきょヘッド君は、お互い顔を見合わせている。
徹の雰囲気が怖すぎて、冷や汗が伝った。
「と、徹…奇遇デスネ…」
「なんでここに居るのかなー?こないだ俺が言った時、絶対行かない的なこと言ってたよね?」
「そうだっけ…」
「それにさっき俺のことめんどくさいって言ってなかった〜〜?マイちゃん裏ではそんなこと思ってたなんて、及川さん悲しいなぁ〜〜」
目が怖い笑顔のまま徹が詰め寄ってくる。
ヤバイ…久しぶりに徹がコワイ…
徹の怒りを察してか、親衛隊の方々は目の前にいるのにあまり騒がない。
なんで今騒がないんだよ!!タイミング間違ってるよ!!!
「岩ちゃん、まだちょっと時間あるよね?」
「あ?おう、あるけど…」
「マイちゃんはお話あるからちょっとこっち来ようか?」
「は?!やだし!!!岩チャン助けて!!」
「だめだよ。ちゃんと説明してよ」
だんだん顔が怖くなってる徹に腕を掴まれて引き摺られる。
あたしと力の差はどんどん開いているみたいで、外そうとしてもびくともしない。
なんだか必要以上に怒ってる気がする。徹が怒るなんて何年振りだろう。あたしが徹の虫かごぶちまけた時以来かな。
やっぱり来なきゃよかったかな…思ったより傷つけたかな…
ガシッ
「あの、チョット」
誰かに反対側の腕を掴まれる。
細くて白い手。
あたしを引き摺る手が止まって、別の人間の声がした。
「あ、蛍…」
「何してんの」
「…引き摺られてる」
何も出て来なくて、そのままの状況だけを伝える。
きっと今あたしの顔はものすごくアホっぽい。
「えぇ?マイ何の冗談なの?」
「…なにが?」
「マイが俺に引き摺られてて、それを助ける友達が居たなんて聞いてないよ!しかも男!」
「……」
「だから今日ここに居んの?俺に対する嫌がらせかな?」
「別に嫌がらせじゃないもん」
今日の徹は本当に意地悪で怖い。
怒らせたのはきっとあたしなんだろうけど、滅多にあたしに怒ることなんてないから、余計怖く感じた。
二人に腕を思いっきり掴まれているから、じんじんと痛い。
「で、メガネくんお前はなんなの?まさか本当にマイの彼氏とか?!」
「…だったら何かあるんですか」
「まぁそれは嘘だよね〜、マイは鈍いからそういうの」
「そうとも限らないですよ」
「何?それって俺にやきもち妬いてるのかな?マイ可愛いもんねー見た目だけは。お前にはあげないけど〜」
「あなたの物でもないですよね?」
「…腹立つクソガキばっかだなぁ」
月島と徹はお互い嫌味合戦をしながらあたしを掴んでいる。
もう疲れた…何でもいいから二人とも離してほしい…
「及川!!そろそろ行くぞ!」
あたしのことを気にして追いかけてくれたのか、救世主岩ちゃん登場。
いとも簡単に徹の手を引き剥がしてくれた。
「岩ちゃんはいいの?!俺たちのかわいいかわいいマイがぽっと出の変な奴に取られても!!」
「やっと親離れだってテメーが言ってたんだろうが!ほっといてやれよ。行くぞ」
「なんでみんなして俺を責めるの…及川さん悲しいよ…」
「そんなに悔しいんなら試合で勝てばいいだろ!」
「…それもそうだね」
岩ちゃんに一喝され、徹がいつも通りの笑みを浮かべる。違う意味で怖い。
「おいマイちゃん」
「なに」
「及川さんはマイに彼氏ができたりするの不快だからね!!出来たらもう家に上げてやんないからな!!」
「ハァ?何それ」
「マイのバーカ!!バーカ!烏野負けろ!!」
「おいさっさと行くぞ。じゃあマイ、後でな」
バーカバーカと連呼しながら岩ちゃんに強制連行される徹。
大人げない……
嵐のような徹が去って、あたしの腕を持ったままの月島と二人、廊下に残された。
6月某日。
日向たちと約束(?)していたインターハイ予選を観に来た。
人は多い。これならあたしも目立たない。
みんなの言う通り青城はシードで、一回戦は出ないみたいだ。
でも万が一のことを考えて、髪はいつものように結ばずに下ろしたままで来た。月島のアドバイスだけど。
視界にチラつく髪が鬱陶しい。
「あっ!!問題児!!」
「ようマイちゃん!」
「あ、どーも」
入り口付近に立っていると、烏野の2年生に遭遇した。えっと、坊主の田中サンとイワトビペンギンの西谷サン。
相変わらず二人とも元気で、見ているこっちは生気を奪われてしまいそうな勢いだ。
「もしかして今日、観に来てくれたのか?!」
「ハイ、日向たちと約束してたんで。でも一回戦終わったら帰りますね〜」
「なんでだよ!折角だから最後まで居たらいいだろ!」
「ちょっと事情があるのでー。それじゃ、頑張ってくださ〜い」
あの二人目立つし捕まったら最後っぽいから、適当に笑顔を作って逃げる。
次の関門は席探し。
堂々と烏野の応援席に座るのも目立ちそうだし、相手側に座るわけにも行かないしで結構悩む。
とりあえずトイレに行こうと思って廊下を歩くと、うんざりするほど女子トイレはごった返しているようだった。
なんだよこれ…青城まだのはずでしょ?
予想通りこれはきっと徹の親衛隊たちだと思う。
アイドルでもあるまいし、アホくさい。
だいぶげんなりした顔で頭の悪い親衛隊の皆さんを見つめてトイレ待ちをする。
そこまで顔綺麗に作っても誰も見てねーよっ
一人心の中で悪態をついていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
一緒にいるっぽい奴の口から、アレって月咲マイじゃないすか?なんて言葉も聞こえる。
えっ…まさか…
「お?やっぱりマイか?」
「っっっっ!!岩チャン!!!」
今世紀最大のピンチ。
合わないよう願っていた相手に思いっきり遭遇してしまった。
顔が青ざめていくのを感じながら岩ちゃんの隣を見ると、まだ幸いなことに徹ではなく背の高いらっきょうっぽい奴だった。
「今日は来ねえんじゃなかったのか?及川の野郎、マイに断られたって凹んでたぞ」
「そそ、それが…あの…そのですね…」
「…あー、アレか。自分の学校の応援に来た感じか?いい事じゃねえか、馴染んでるみたいで」
「岩ちゃん…!!」
岩ちゃんは笑顔で、菩薩のように広い心で受け入れてくれた。
本当にこの人友達で良かった!!
「まあどっちの応援だとしても、折角来たんだろ。アイツに会ってけば?」
「…ちょっとそれはね」
岩ちゃんはサラッと言うけど、徹が結構嫌な性格してることぐらいあたしは知ってる。
もし裏切ってここに居ることがバレたら、どんな仕返しをされることか。
考えるだけで悪寒がする。
「あのさ岩ちゃん…お願いなんだけど…」
「どうした?」
「徹にあたしが居たってこと絶対言わないでくんない?!めんどくさくなること目に見えてるし、なんならアイツ変な誤解したままだしややこしくなる以外の道は無いから!!」
「お、おう…でもその、マイ…」
岩ちゃんが珍しく歯切れの悪い言い方をする。
岩ちゃんの視線があたしを通り抜けて、あたしの後ろを見たまま固まってる。
あたしも釣られて後ろを向く。
「あっれぇ〜〜マイちゃ〜〜ん??」
「!!!」
目の前に、目が笑っていない笑顔であたしを見る徹。
状況が飲み込めない岩ちゃんとらっきょヘッド君は、お互い顔を見合わせている。
徹の雰囲気が怖すぎて、冷や汗が伝った。
「と、徹…奇遇デスネ…」
「なんでここに居るのかなー?こないだ俺が言った時、絶対行かない的なこと言ってたよね?」
「そうだっけ…」
「それにさっき俺のことめんどくさいって言ってなかった〜〜?マイちゃん裏ではそんなこと思ってたなんて、及川さん悲しいなぁ〜〜」
目が怖い笑顔のまま徹が詰め寄ってくる。
ヤバイ…久しぶりに徹がコワイ…
徹の怒りを察してか、親衛隊の方々は目の前にいるのにあまり騒がない。
なんで今騒がないんだよ!!タイミング間違ってるよ!!!
「岩ちゃん、まだちょっと時間あるよね?」
「あ?おう、あるけど…」
「マイちゃんはお話あるからちょっとこっち来ようか?」
「は?!やだし!!!岩チャン助けて!!」
「だめだよ。ちゃんと説明してよ」
だんだん顔が怖くなってる徹に腕を掴まれて引き摺られる。
あたしと力の差はどんどん開いているみたいで、外そうとしてもびくともしない。
なんだか必要以上に怒ってる気がする。徹が怒るなんて何年振りだろう。あたしが徹の虫かごぶちまけた時以来かな。
やっぱり来なきゃよかったかな…思ったより傷つけたかな…
ガシッ
「あの、チョット」
誰かに反対側の腕を掴まれる。
細くて白い手。
あたしを引き摺る手が止まって、別の人間の声がした。
「あ、蛍…」
「何してんの」
「…引き摺られてる」
何も出て来なくて、そのままの状況だけを伝える。
きっと今あたしの顔はものすごくアホっぽい。
「えぇ?マイ何の冗談なの?」
「…なにが?」
「マイが俺に引き摺られてて、それを助ける友達が居たなんて聞いてないよ!しかも男!」
「……」
「だから今日ここに居んの?俺に対する嫌がらせかな?」
「別に嫌がらせじゃないもん」
今日の徹は本当に意地悪で怖い。
怒らせたのはきっとあたしなんだろうけど、滅多にあたしに怒ることなんてないから、余計怖く感じた。
二人に腕を思いっきり掴まれているから、じんじんと痛い。
「で、メガネくんお前はなんなの?まさか本当にマイの彼氏とか?!」
「…だったら何かあるんですか」
「まぁそれは嘘だよね〜、マイは鈍いからそういうの」
「そうとも限らないですよ」
「何?それって俺にやきもち妬いてるのかな?マイ可愛いもんねー見た目だけは。お前にはあげないけど〜」
「あなたの物でもないですよね?」
「…腹立つクソガキばっかだなぁ」
月島と徹はお互い嫌味合戦をしながらあたしを掴んでいる。
もう疲れた…何でもいいから二人とも離してほしい…
「及川!!そろそろ行くぞ!」
あたしのことを気にして追いかけてくれたのか、救世主岩ちゃん登場。
いとも簡単に徹の手を引き剥がしてくれた。
「岩ちゃんはいいの?!俺たちのかわいいかわいいマイがぽっと出の変な奴に取られても!!」
「やっと親離れだってテメーが言ってたんだろうが!ほっといてやれよ。行くぞ」
「なんでみんなして俺を責めるの…及川さん悲しいよ…」
「そんなに悔しいんなら試合で勝てばいいだろ!」
「…それもそうだね」
岩ちゃんに一喝され、徹がいつも通りの笑みを浮かべる。違う意味で怖い。
「おいマイちゃん」
「なに」
「及川さんはマイに彼氏ができたりするの不快だからね!!出来たらもう家に上げてやんないからな!!」
「ハァ?何それ」
「マイのバーカ!!バーカ!烏野負けろ!!」
「おいさっさと行くぞ。じゃあマイ、後でな」
バーカバーカと連呼しながら岩ちゃんに強制連行される徹。
大人げない……
嵐のような徹が去って、あたしの腕を持ったままの月島と二人、廊下に残された。