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幸福論
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カランカラン…
重い木製のドアを開けると、控えめにベルが鳴った。
いらっしゃいませ、と店員が声をかけてくる。
窓際の席に案内され、あたしと月島はそこに腰を下ろした。
「…チョット」
「何?」
「何屋さんなの、ここ」
「ご飯屋さん」
「それはわかるけど」
月島が仏頂面で聞いてくる。
周りを見渡すと、髪をこれでもかというくらい巻いた女の人とオジサンがセットで座る席が大多数。
所謂お仕事前の同伴ってやつが多い。
高校生っぽい客はあたしたちしかいなくて、言ってみれば場違いのような感じ。
「ここ、あたしのバイト先。おいしいよ」
「そうデスカ」
月島は諦めた顔をしてため息をついた。
そう、ここはあたしが週末にバイトしているイタリアンバー。
本当は高校生禁止かも知れないけど、母親の仕事のツテでここでバイトすることになった。
「マイちゃん」
「あ、店長。お邪魔してまーす」
「珍しいね〜、お友達連れてきたの初めてだね」
「居たので連れてきただけでーす」
「はは、居たのでって。マイちゃん、お代いらないから好きなもの頼んでってね」
「やった!ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
初老の男、店長がニコニコしながら話す。
月島も無愛想ながらもお礼を言っていた。
ここ、結構高いはずなんだけど、あたしが食べる時はいつもタダにしてくれる。
バイトの特権てやつだ。
「ねぇ、何食べる?」
「…オススメはなんなの」
「全部」
「それじゃ分かんないデショ。君が決めてよ」
「店長〜〜」
さっき去ったばかりの店長を呼ぶ。
「もう決まったの?」
「決まらないそうなので、今日一番出たやつとデザートください!」
「難しいな〜、まぁ、頑張るね」
「どーもでーす」
笑いながら店長が厨房に入っていく。
月島と二人また残されて、会話が無くなった。
「…マイ」
「っ、はい?!」
「なんでここでバイトしてんの?」
「え、うーん、母親のツテで」
「ふーん」
それだけ聞くと、月島はまた黙り始めた。
てかなんでこいつは呼び捨てにするんだ?
そこまで親しい気はしないんだけど。
「こういう人たち、軽蔑する?」
「…いや、別に」
お互い周りを見渡して言う。
きらきらの髪、派手な格好。水商売のお姉様方。
「そっか」
「…なに笑ってんの」
「別にー」
あたしのことを否定されなかった気がして、嬉しくなった。
あたしがそういう商売をしてるわけじゃないけど、ずっと身近にあったことだから。
「おまたせ」
「やった!キッシュだ!」
しばらく待っていると、店長が甘い香りのキッシュと香ばしい匂いのピザを持ってやってきた。
「ありがとうございまーす!いただきまーす」
「おかわりするなら言ってね」
「はーい」
サーモンとポテトの入ったキッシュ。あと小さめのマルゲリータ。
特に焼きたてはすごく美味しい。
「アンタ先に食べなよ」
「ドーモ。いただきます」
「……」
「……何見てんの」
「いや、つき…蛍って、美味しいものでも美味しくなさそうに食べるなぁって」
「…失礼だな、ちゃんと美味しいよ」
「ならもっと美味しそうな顔したらぁ?」
「コレがスタンダードなんで」
あんまりいつもと変わらない顔でキッシュを食べる月島。
あたしは先にピザの方を食べることにした。
「あのさ」
「ナニ」
「観に行くよ、試合。ちょっとだけ」
「例の青葉城西はもういいの?」
「徹と岩ちゃんに会わない時間だけ観る。日向が、最初は違うとこと当たるって言ってた」
「まぁ、向こうはシードだからね。同じブロックだけど」
「え?そうなんだ?会ったらイヤだなー」
徹と岩ちゃんに遭遇した時のことを考える。
あんだけ思いっきり行かないって宣言したから、もし会っちゃったら気まずくなること間違いなしだ。
それで友達解消しちゃったらどうしよう。でも、そこまで二人とも心狭くないかな?
「いつもと違う感じで来たらいいんじゃない。今日みたいな感じでさ」
「は?何それ」
「だから、髪型変えてくるとか」
「あぁーそうね、いいかもね」
言われてみればそれもありかなぁ。
ぱっと見でわかんなかったらいいんだし。
てか、月島って髪型とかそういうの気づくタイプなんだ?見かけによらない。
「山口くんは?出るの?」
「僕に聞かれても知らないよ」
「ふーん、そっかぁ」
「マイさ」
「……」
「普段人の気持ち全く気にしない癖に、幼馴染サンたちにはだいぶ気遣うんだね」
月島が不服そうな顔をして言う。
…え?!あたし徹と岩ちゃんに気遣ってる?!
「別に、そういうのじゃないし…なんか、数少ない友達裏切ったみたいでイヤじゃん…」
「へぇ、じゃあ僕の前で嬉しそ〜に青城の人たちの話ばっかりするのは裏切りじゃないの?」
「…ハァ?」
何意味分かんないこと言ってんだ、こいつは。
「どういう意味?」
「君は僕の数少ない友達なんデショ?」
…斜め上の特大ホームラン的発言。
月島、あたしのこと友達って認識してたんだ?!
「えぇ、あっ、あー…そう、そうだね、うん。友達かもね」
「じゃあもうしないでよ」
「え」
「え、じゃなくて返事は?天才サンは人との接し方全く知らないんだね」
「わ、わかったよ!てか蛍食べすぎ!あたしの分無くなる!」
よくわからないからはぐらかしたくて、月島が食べていたキッシュを奪い取った。
ちらっと月島を見ると、勝ち誇った顔をしていてちょっとむかついた。
スプーンでキッシュを口に運ぶ。
うん、今日も美味しい。
「チョット」
「まだなんかあんの?」
「それ、僕のスプーンだけど」
「…それが?」
たしかに月島が使っていたスプーンのような気もするけど、別段問題があるわけでは無いと思う。
子供の頃から徹や岩ちゃんと回し飲みなんかは普通だし、特に悪いと思ったことも気にしたこともなかった。
「君さぁ、そういうデリカシー無いとこどうにかした方がいいと思うよ」
「イヤだった?」
「そうじゃなくて。そういうの、他の人にしない方がいいよ。君、社会性ないし無意識にしちゃってるんだろうけどさ」
「じゃあこれ替えた方がいい?」
「別に僕はいいよ…これから気をつけてって言ってんの。常識だよ」
「…?はーい覚えときまーす」
友達はOK。ってことでいいのかな。
正直あたしは人との距離感があんまり分からない。
すごく幼い頃に徹たちと友達になって、それ以降誰かと仲良くなることがなかったから。
「じゃあ日向たちは?」
「それもアウト。考えればわかるでしょ」
「蛍は?」
「推奨はしない。ていうか、他人にそういう事しないよ普通は」
友達はアウト?
何が何だかよくわからなくなってきた。
「何が普通で何が普通じゃないのか」
「…もう君の存在がイレギュラーなんだよ」
「ハァ?じゃあどうしろと」
「頭良いんだから考えろってコト。まあ、気分によっては僕が助けてあげるよ」
月島が意地悪そうに笑う。
はたまた言ってる事はよくわからないけど、ちょっとだけどきっとした。
「なんで上から目線なの」
「僕の方が視点高いから」
カランカラン…
重い木製のドアを開けると、控えめにベルが鳴った。
いらっしゃいませ、と店員が声をかけてくる。
窓際の席に案内され、あたしと月島はそこに腰を下ろした。
「…チョット」
「何?」
「何屋さんなの、ここ」
「ご飯屋さん」
「それはわかるけど」
月島が仏頂面で聞いてくる。
周りを見渡すと、髪をこれでもかというくらい巻いた女の人とオジサンがセットで座る席が大多数。
所謂お仕事前の同伴ってやつが多い。
高校生っぽい客はあたしたちしかいなくて、言ってみれば場違いのような感じ。
「ここ、あたしのバイト先。おいしいよ」
「そうデスカ」
月島は諦めた顔をしてため息をついた。
そう、ここはあたしが週末にバイトしているイタリアンバー。
本当は高校生禁止かも知れないけど、母親の仕事のツテでここでバイトすることになった。
「マイちゃん」
「あ、店長。お邪魔してまーす」
「珍しいね〜、お友達連れてきたの初めてだね」
「居たので連れてきただけでーす」
「はは、居たのでって。マイちゃん、お代いらないから好きなもの頼んでってね」
「やった!ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
初老の男、店長がニコニコしながら話す。
月島も無愛想ながらもお礼を言っていた。
ここ、結構高いはずなんだけど、あたしが食べる時はいつもタダにしてくれる。
バイトの特権てやつだ。
「ねぇ、何食べる?」
「…オススメはなんなの」
「全部」
「それじゃ分かんないデショ。君が決めてよ」
「店長〜〜」
さっき去ったばかりの店長を呼ぶ。
「もう決まったの?」
「決まらないそうなので、今日一番出たやつとデザートください!」
「難しいな〜、まぁ、頑張るね」
「どーもでーす」
笑いながら店長が厨房に入っていく。
月島と二人また残されて、会話が無くなった。
「…マイ」
「っ、はい?!」
「なんでここでバイトしてんの?」
「え、うーん、母親のツテで」
「ふーん」
それだけ聞くと、月島はまた黙り始めた。
てかなんでこいつは呼び捨てにするんだ?
そこまで親しい気はしないんだけど。
「こういう人たち、軽蔑する?」
「…いや、別に」
お互い周りを見渡して言う。
きらきらの髪、派手な格好。水商売のお姉様方。
「そっか」
「…なに笑ってんの」
「別にー」
あたしのことを否定されなかった気がして、嬉しくなった。
あたしがそういう商売をしてるわけじゃないけど、ずっと身近にあったことだから。
「おまたせ」
「やった!キッシュだ!」
しばらく待っていると、店長が甘い香りのキッシュと香ばしい匂いのピザを持ってやってきた。
「ありがとうございまーす!いただきまーす」
「おかわりするなら言ってね」
「はーい」
サーモンとポテトの入ったキッシュ。あと小さめのマルゲリータ。
特に焼きたてはすごく美味しい。
「アンタ先に食べなよ」
「ドーモ。いただきます」
「……」
「……何見てんの」
「いや、つき…蛍って、美味しいものでも美味しくなさそうに食べるなぁって」
「…失礼だな、ちゃんと美味しいよ」
「ならもっと美味しそうな顔したらぁ?」
「コレがスタンダードなんで」
あんまりいつもと変わらない顔でキッシュを食べる月島。
あたしは先にピザの方を食べることにした。
「あのさ」
「ナニ」
「観に行くよ、試合。ちょっとだけ」
「例の青葉城西はもういいの?」
「徹と岩ちゃんに会わない時間だけ観る。日向が、最初は違うとこと当たるって言ってた」
「まぁ、向こうはシードだからね。同じブロックだけど」
「え?そうなんだ?会ったらイヤだなー」
徹と岩ちゃんに遭遇した時のことを考える。
あんだけ思いっきり行かないって宣言したから、もし会っちゃったら気まずくなること間違いなしだ。
それで友達解消しちゃったらどうしよう。でも、そこまで二人とも心狭くないかな?
「いつもと違う感じで来たらいいんじゃない。今日みたいな感じでさ」
「は?何それ」
「だから、髪型変えてくるとか」
「あぁーそうね、いいかもね」
言われてみればそれもありかなぁ。
ぱっと見でわかんなかったらいいんだし。
てか、月島って髪型とかそういうの気づくタイプなんだ?見かけによらない。
「山口くんは?出るの?」
「僕に聞かれても知らないよ」
「ふーん、そっかぁ」
「マイさ」
「……」
「普段人の気持ち全く気にしない癖に、幼馴染サンたちにはだいぶ気遣うんだね」
月島が不服そうな顔をして言う。
…え?!あたし徹と岩ちゃんに気遣ってる?!
「別に、そういうのじゃないし…なんか、数少ない友達裏切ったみたいでイヤじゃん…」
「へぇ、じゃあ僕の前で嬉しそ〜に青城の人たちの話ばっかりするのは裏切りじゃないの?」
「…ハァ?」
何意味分かんないこと言ってんだ、こいつは。
「どういう意味?」
「君は僕の数少ない友達なんデショ?」
…斜め上の特大ホームラン的発言。
月島、あたしのこと友達って認識してたんだ?!
「えぇ、あっ、あー…そう、そうだね、うん。友達かもね」
「じゃあもうしないでよ」
「え」
「え、じゃなくて返事は?天才サンは人との接し方全く知らないんだね」
「わ、わかったよ!てか蛍食べすぎ!あたしの分無くなる!」
よくわからないからはぐらかしたくて、月島が食べていたキッシュを奪い取った。
ちらっと月島を見ると、勝ち誇った顔をしていてちょっとむかついた。
スプーンでキッシュを口に運ぶ。
うん、今日も美味しい。
「チョット」
「まだなんかあんの?」
「それ、僕のスプーンだけど」
「…それが?」
たしかに月島が使っていたスプーンのような気もするけど、別段問題があるわけでは無いと思う。
子供の頃から徹や岩ちゃんと回し飲みなんかは普通だし、特に悪いと思ったことも気にしたこともなかった。
「君さぁ、そういうデリカシー無いとこどうにかした方がいいと思うよ」
「イヤだった?」
「そうじゃなくて。そういうの、他の人にしない方がいいよ。君、社会性ないし無意識にしちゃってるんだろうけどさ」
「じゃあこれ替えた方がいい?」
「別に僕はいいよ…これから気をつけてって言ってんの。常識だよ」
「…?はーい覚えときまーす」
友達はOK。ってことでいいのかな。
正直あたしは人との距離感があんまり分からない。
すごく幼い頃に徹たちと友達になって、それ以降誰かと仲良くなることがなかったから。
「じゃあ日向たちは?」
「それもアウト。考えればわかるでしょ」
「蛍は?」
「推奨はしない。ていうか、他人にそういう事しないよ普通は」
友達はアウト?
何が何だかよくわからなくなってきた。
「何が普通で何が普通じゃないのか」
「…もう君の存在がイレギュラーなんだよ」
「ハァ?じゃあどうしろと」
「頭良いんだから考えろってコト。まあ、気分によっては僕が助けてあげるよ」
月島が意地悪そうに笑う。
はたまた言ってる事はよくわからないけど、ちょっとだけどきっとした。
「なんで上から目線なの」
「僕の方が視点高いから」