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幸福論
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部活が終わって帰ろうとしていたら、同じく部活帰りと思われる月咲マイに遭遇した。
「あ、月咲さん!」
山口が先に声をかける。
気づいた彼女がこちらを向いた。
「山口くん。と、月島」
いつもと違って髪をポニーテールに結んでいる月咲。
今日も何処かの助っ人に行っていたのか、と聞こうとしたら、先に山口が言ってしまった。ホント、タイミング悪い。
山口と月咲が親しげに話しているのが居心地悪くて、見ないように僕は一歩前を歩くことにした。
なんで、山口にはイヤミっぽく話さないかな…
山口と話している間彼女は僕に全然話を振ってこなくて、更に不快だ。
「俺今日も行くとこあるから、ツッキー先に帰ってて!」
「…あ、そう」
山口は今日も例のサーブ練習に行くらしい。
皆が皆、練習練習って熱血かよ。
部活なんだしそんなに気張らなくてもいいじゃん。
「頑張ってー」
「うん、それじゃ、また明日ね!」
やる気無さげに山口を激励する月咲。
ひらひらと手を振って、別の道に走っていく山口を見送っている。
二人取り残されて、沈黙が生まれる。
…ナニ、これからどうしろって?二人で帰れって?
「ねえ、月島は…」
月咲が口を開く。
あれ、月島って。僕、名前で呼べって言ったよね?
さっきの山口との態度も相まってなんだか腹が立ってきたから、名前で呼ぶまで彼女を無視することにした。
「自主練とかしないの?ないの?」
無意識なんだろうけど、挑発的に言ってくるところが更に腹立つ。
「なに無視してんの?あたしを無視するなんて度胸あるよねー」
君のせいデショ。
「ちょっと、聞いてる?聞こえますかぁ?耳ないのかなぁ?」
いちいち癪な言い方。それだから友達いないんじゃないの。
いい加減彼女に気づいて欲しくて、こっちからけしかける事にした。
「……マイ」
「…は?!何?!」
分かりやすいくらいに動揺する月咲。
いつもの煽り顔が崩れて、ちょっと可愛い。
「僕さ、君になんて言ったっけ?」
「ハァ?今日何も言ってなくない?」
「…今日じゃなくて」
頭は良い癖にこういうとこ本当に鈍い。
もしかして僕との会話覚えてないの?
「蛍って呼べってやつ?」
それ以外に何があるのさ。
「月島」
…。
「……蛍」
…フルネーム呼び?
それでも、彼女の口から恥ずかしそうに僕の名前が出たから、不覚にもちょっとにやけてしまう。
「ナニ」
「つきし…蛍は自主練とかないの?」
「…別に無いよ」
「しなくていいの?」
「うん」
またその話。自分だって別にそういうのしない癖に。
「じゃあ上手なんだ?」
しなくて上手なのは君だけだよ。
天才サンにはそういう気持ち分かんないよね。
サラッと人にそういう事言うのって良くないんじゃない。言わないけど。
「それなりにソツなくこなせる程度には」
「へぇ、ソツなくねぇ…」
「君もそうデショ」
「まぁね」
上手だから、と月咲のように自信満々に言えないのが少し悔しい。
中身のない会話が止まる。
少しの沈黙を置いて、月咲が歩き出した。
1人分スペースを空けて並んで歩く。
風は生温くて気持ち悪い。
「練習ないなら、今から暇なの?」
「帰るくらいしか予定ないケド」
「じゃあお腹空いたからご飯食べてこ」
さらりとご飯に誘われた。
月咲は当たり前のような涼しい顔をして、僕の方は見ていない。
この人ホントに人の心が分からないみたいだから、きっと例の青葉城西の奴にだって自然とこうやって言ってのけるんだろう。
大王様はどう思ってるのか知らないけど、結構ルックスの良い月咲に誘われたりしたら、下心無かったとしても浮かれてしまうのは目に見える。
そして僕もその一人だ。
今日、家のご飯なんて言ってたっけ…
まぁそれは、母さんに連絡したらいいや。
ここで行かないのは、今日一日山口に負けた気になる。
「…お好きにどーぞ」
喜んで、と思っていてもそうは言えず、僕は一人でにやけながら月咲の前を歩いた。
街灯の下を颯爽と歩くローファーの音が聞こえる。
軽快な月咲の足音に、僕は嬉しくなった。
部活が終わって帰ろうとしていたら、同じく部活帰りと思われる月咲マイに遭遇した。
「あ、月咲さん!」
山口が先に声をかける。
気づいた彼女がこちらを向いた。
「山口くん。と、月島」
いつもと違って髪をポニーテールに結んでいる月咲。
今日も何処かの助っ人に行っていたのか、と聞こうとしたら、先に山口が言ってしまった。ホント、タイミング悪い。
山口と月咲が親しげに話しているのが居心地悪くて、見ないように僕は一歩前を歩くことにした。
なんで、山口にはイヤミっぽく話さないかな…
山口と話している間彼女は僕に全然話を振ってこなくて、更に不快だ。
「俺今日も行くとこあるから、ツッキー先に帰ってて!」
「…あ、そう」
山口は今日も例のサーブ練習に行くらしい。
皆が皆、練習練習って熱血かよ。
部活なんだしそんなに気張らなくてもいいじゃん。
「頑張ってー」
「うん、それじゃ、また明日ね!」
やる気無さげに山口を激励する月咲。
ひらひらと手を振って、別の道に走っていく山口を見送っている。
二人取り残されて、沈黙が生まれる。
…ナニ、これからどうしろって?二人で帰れって?
「ねえ、月島は…」
月咲が口を開く。
あれ、月島って。僕、名前で呼べって言ったよね?
さっきの山口との態度も相まってなんだか腹が立ってきたから、名前で呼ぶまで彼女を無視することにした。
「自主練とかしないの?ないの?」
無意識なんだろうけど、挑発的に言ってくるところが更に腹立つ。
「なに無視してんの?あたしを無視するなんて度胸あるよねー」
君のせいデショ。
「ちょっと、聞いてる?聞こえますかぁ?耳ないのかなぁ?」
いちいち癪な言い方。それだから友達いないんじゃないの。
いい加減彼女に気づいて欲しくて、こっちからけしかける事にした。
「……マイ」
「…は?!何?!」
分かりやすいくらいに動揺する月咲。
いつもの煽り顔が崩れて、ちょっと可愛い。
「僕さ、君になんて言ったっけ?」
「ハァ?今日何も言ってなくない?」
「…今日じゃなくて」
頭は良い癖にこういうとこ本当に鈍い。
もしかして僕との会話覚えてないの?
「蛍って呼べってやつ?」
それ以外に何があるのさ。
「月島」
…。
「……蛍」
…フルネーム呼び?
それでも、彼女の口から恥ずかしそうに僕の名前が出たから、不覚にもちょっとにやけてしまう。
「ナニ」
「つきし…蛍は自主練とかないの?」
「…別に無いよ」
「しなくていいの?」
「うん」
またその話。自分だって別にそういうのしない癖に。
「じゃあ上手なんだ?」
しなくて上手なのは君だけだよ。
天才サンにはそういう気持ち分かんないよね。
サラッと人にそういう事言うのって良くないんじゃない。言わないけど。
「それなりにソツなくこなせる程度には」
「へぇ、ソツなくねぇ…」
「君もそうデショ」
「まぁね」
上手だから、と月咲のように自信満々に言えないのが少し悔しい。
中身のない会話が止まる。
少しの沈黙を置いて、月咲が歩き出した。
1人分スペースを空けて並んで歩く。
風は生温くて気持ち悪い。
「練習ないなら、今から暇なの?」
「帰るくらいしか予定ないケド」
「じゃあお腹空いたからご飯食べてこ」
さらりとご飯に誘われた。
月咲は当たり前のような涼しい顔をして、僕の方は見ていない。
この人ホントに人の心が分からないみたいだから、きっと例の青葉城西の奴にだって自然とこうやって言ってのけるんだろう。
大王様はどう思ってるのか知らないけど、結構ルックスの良い月咲に誘われたりしたら、下心無かったとしても浮かれてしまうのは目に見える。
そして僕もその一人だ。
今日、家のご飯なんて言ってたっけ…
まぁそれは、母さんに連絡したらいいや。
ここで行かないのは、今日一日山口に負けた気になる。
「…お好きにどーぞ」
喜んで、と思っていてもそうは言えず、僕は一人でにやけながら月咲の前を歩いた。
街灯の下を颯爽と歩くローファーの音が聞こえる。
軽快な月咲の足音に、僕は嬉しくなった。