手をとって
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気がつくと、目の前にぽつん、と家が有った
周りは何もなくて、寂しげにあるはずなのに、私が感じる威圧感はとてつもなくて
『(…家…)』
…私…
帰ってきちゃったのかな…
ぼうっとしながら家を見つめていると、ガチャ、と扉が開いた
『……?』
逆光で、黒い人影しか見えない
黒い、黒い人影
あの時と、おんなじ。
『…あ…』
手が伸びてくる。黒い、手。
片方だけなんかじゃなくて、両方の手が、伸びて……――――
―――…誰の…手??
「あ、起きちゃった?」
『――――…、
誰だっけ…』
「ちょっとぉっ?!」
『うそ、佐助、』
「あー…びっくりした…」
『………』
「怖い夢でも見た?」
『…なんで…?』
「んー、聖夜ちゃんの手が、俺様の腰に回されてるから、かな」
『!え、あ、ちがっ、』
「あーあんまり動かないほうが良いよ~…
…落ちちゃうかも。」
『ふおぁっ』
離そうとした手を咄嗟に掴み戻して、ちらりと下を見ると、遠くに灯りが見えた
『(…村?)』
佐助が跳ぶたびに、木が少なくなってきている気がする
…私が寝ている間に、結構進んでた…?…ていうことは、
『…さ…佐助、寝て、ないの?』
そう問い掛けると、佐助がへらりと笑った
「大事なお姫様が居るのに、寝てられないって。
気にしないで、俺様忍だよ~?慣れっこ慣れっこ。」
『で、でも』
「だぁーいじょーぶ!」
『……やっぱ駄目!佐助、寝よ!』
「えっ……
聖夜ちゃん一緒に寝てくれッいたたたたたたた!!!」
『………』
佐助の耳をひっぱって無言で睨み付けると、佐助は恒例のようにへらりと笑った
「心配してくれてんの?」
『…いちおう』
「もー、照れ屋さんっ!」
『わぁうざい』
「…ぐすん」
『気持ち悪い』
「えっ…聖夜ちゃん酷くない…?」
ふざけた調子で話を脱線させる佐助にイラッとする
『………
佐助、疲れた、一旦降ろして』
「あのねぇ…その手には乗らないよ、聖夜ちゃん」
『チッ』
「いやー…あのねぇ聖夜ちゃん…この際言っちゃうけど、さ」
『?』
「聖夜ちゃんが居たとこは伊達軍で
俺様は武田軍の忍びなわけよ」
『…?うん』
「で、伊達と武田は…なんていうか、うぅん、好敵手…ってーの?
同盟関係では無いんだよね」
『う、ん』
「だから、武田が武器と兵持って伊達にけしかけたりしたら、一気に戦になる状態なわけ」
『え…?でも、別に佐助は1人で来てるし…』
「うん、まあ、戦はけしかけてないけどね…
その伊達から、すっごい大事なもん攫っちゃったんだよねー」
『…え…』
ぴ、と佐助に指を差された
「聖夜ちゃんのことだよ?」
…………………
『いやいやいや』
「いやいやいや」
『ていうか私攫われてないし』
「あちらさんは攫われたと思ってるんだよ」
『私の意志だし』
「でも突然だし」
『それに私、奥州出る予定だったし』
「それを知ってんのはあの鬼庭って奴だけでしょ?」
『や、置き手紙したし』
「信じないよ」
『だいたい、私が居なくなって何か問題あるわけじゃないし』
「あるんだよ。」
言い切られて、思わず口をつぐんだ
「竜の旦那…あ、伊達政宗のことね、
竜の旦那は、聖夜ちゃんのあの置き手紙なんか信じない。
それで納得する奴じゃないよ、あれは。」
『そんな…』
政宗は暇じゃないんだし、あの(嘘とデタラメが詰まった)手紙を見れば、納得するだろうと思っていたけど
『…あー……』
「?どうかした?」
『…いや…政宗…様、なら…逆に
こんな形は許さない、とか言いそうだなぁ…って』
「…うわ、凄い頭に浮かんだ」
『やっぱり…』
「うん。てわけで、俺様が伊達軍に見つかったら危ないんだよね」
『いやそれ佐助の計画が駄目だっただけじゃ「気にしない気にしない」こいつ…』
ていうか、流石にあの手紙の内容は無理があったかなあと思う
政宗に見つかったら、私もの凄い怒られそうだよね
『…ごめん佐助、
なるべく早く甲斐に行きたいです…。』
「うん、俺様も…。」
そう言うと佐助は、今度は一層強く屋根の上を跳んだ