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「っ、……」
まだ…間に合うか?
あの子は歩いて移動しているはずだ、遠くまでは行っていない
馬で捜せば見つかるだろう
なら…
なら!
その部屋を背に、振り返った時
「綱元?」
「…――!!!」
よりによって、一番――…!
「政宗…様…」
「聖夜、居ないのか?」
「え…ええ…」
どうすればこの状況から逃げられるのか
刺すような政宗様の視線を受けながら考える
「綱元、今何をしていた?」
「…聖夜様がいらっしゃらなかったので……、自室に戻ろうと」
政宗様に言うべきか?
「…綱元」
「…なんでございましょう」
言わない、べきか?
「そこ、退け」
「っ…!!!」
いや
「…退けよ」
違う
「退け、綱元!!!」
言えないのだ
俺を押して部屋に入った政宗様は、それから暫くして、握り拳で壁を強く叩いた
力強く、何度も、何度も。
+++
綱元を押し切って入った聖夜の部屋は、まるで最初から誰も居なかったように整えられていて
「……なんだ…?これ…」
なぁ、聖夜
なんだよ、これ。
頭の中がぐるぐると渦巻いて、整理なんてできないまま部屋の中を見渡した
もう使わないと言うように綺麗に揃った寝具
俺が貸していた書物も、机上に揃って置かれていた
「………紙…?」
その机に置かれた白い紙だけが、くっきりと周りから浮いていた
暗い部屋に光るような白い紙が
俺を更に暗闇に置いていく
「………は…っ…」
「…まさ…むね、…様…?」
「は、ははっ…ははははははっ…!!!!!!」
おかしいだろ。
おかしいだろ?
強く何度も叩きつけた拳から、うっすらと血が滲む
けれど、そんなことはどうでもいい
「綱元…聖夜に何吹き込んだ?」
「ッ!!!」
「なぁ……何吹き込んだ!!あいつに!何を!」
余程俺の気が酷いものなのか、綱元は顔面蒼白になったまま微動だにせずにいた
「お前の存在は伊達家に迷惑だ…とでも言ったか…?」
「……!!」
「は、当たりか…だろうな…」
「、政宗様っ「聖夜は!!!」…!」
綱元の顔の前にその紙を突き出すと、綱元は膝をついた
「ねぇんだよ……聖夜には……んなもの…」
何もない。
「…ねぇのに…何、デタラメ書いてんだ…」
【元の世界に戻る方法が見つかったので
試してきます。
成功すればそのまま帰れると思います。
直接言えなくて、ごめんなさい
短い間だったけれど
ありがとうございました
さようなら
聖夜】
「…元の世界に戻る方法…?
そんなもん、聖夜が現時点、本気で探してるわけねぇだろ…
家に帰れる、家族に会えるなんて思ってねぇッ!!!」
「っ、彼女がそう口にしたのですか?!政宗様!彼女が貴方様に、そう縋ったのですか?!違うでしょう!!!
貴方はただ彼女が居なくなったのが受け容れられないだけです!!!彼女がまだこの世界に居ると思いたいだけです!!!
彼女は、彼女は、ちゃんと、元の世界にッ……!!!」
帰ったはず―――…
「…お前も気付いてるだろ…」
ああ、そうだ。
俺はとうに気付いてる
答えだって、もう出てる
「…申し訳、ありませんっ…!!!」
「謝んのは俺にじゃねぇ…聖夜にだ」
「っ、はっ…!すぐに馬を用意致します!」
綱元が行ったのを見届けた後、ずるずると力なく座り込んだ
「…此処に居ろって…言っただろうが…」
意味の無いただの置き手紙を見つめていると、異変に気付いた
「………木の葉?」
文机の傍に落ちていた葉
畳に手を這わせると、小枝もはらはらと落ちている
「(奥州じゃ見ねぇ葉……どこのだ…?)
!!!」
頭に、嫌な仮定が浮かぶ
「――――……」
「政宗様!まだ此処に…っ…
…政宗様?」
「……綱元」
「はっ…?」
「…黒脛巾組に伝令だ。
奥州付近で聖夜を捜し見つからなかった場合、
…甲斐を捜せ」
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