亀裂と決断
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『………着物、どうしよ…』
今着ている喜多さんが用意してくれた着物と、もう一着の着物と
私が此処に来た時着ていた、白のワンピースに紺のカーディガン、黒のニーズソックス
とりあえず、このまま着物にカーディガンを羽織って、着物は二着ともいただくことにした
政宗に、小十郎さん、成実、喜多さん、兵士の皆に、何も言わずで良いとは思わない
けど、言ったら多分…私は此処を出られなくなる
だから
『…こんな形で、ごめんね』
机の上に置いた紙を、撫でた
『さぁあて何処に行こうかな!
地形とかわかんないけど…うん、まあなんとかなるよね』
案外何かあって、ああ私死んじゃったなーって思ったらもとの世界戻ってたりなんかして!
…さすがに漫画に影響され過ぎかな。でもタイムスリップできてるくらいなんだから、許される現実逃避だよね
「へえ、ならちょうど良いや」
『っ…ん、むっ?!
ん゙ーっ!ん゙ーん゙っ!』
音もなく、突然に口に当てられた手
冷然と放たれた言葉は、文字通り冷たくて
(なに、なにこれ。
だれ、このひと。)
「行くとこ無いんなら、うち来なよ。働き口あるぜ」
『(…え、)』
まじか
目にそんな心境を込めて首を後ろに犯人を見ると、……うわぁこれはまたイケメンさんなことで…
なんなんだこの時代
「ん?うん、まじ」
それは…おいしい話だなぁ
野宿はできるならば避けたいし
お金なんて無いから働いて貰えたなら、いつ戻るかわからなくてもなんとかなる
ああ、でも
『んんんんん、んんんん』
「…………騒がない?」
『(こくこく)』
何度も頷けば、ゆっくりと左手を口から離してくれた
ちなみに右手は、私の両手を拘束している
『ぷはっ……おいしい話には必ず裏があると思うんですけど』
「………随分冷静だね」
『え、騒いだ方が良かったんですか?』「いや、勘弁して」『ですよね』
流れ作業のように言葉を交わしていると、迷彩さんが(だって服がそうなんだもん)いきなりにやにやしだした
「まぁまぁ、危ないことさせるとか、そんなんじゃないからさ
で、来る?来ない?
ちなみに…住み込みで『行かせていただきます』わあ即答」
『だって宿泊まるお金無いんですもん』
「うん、だろうね…っと、じゃあ行くよー」
……だろうね?
いや、それよりも
「はい掴まってー」
『え、ちょ、あのまさか』
迷彩のお兄さんはそれはもう清々しく笑いながら、私の腰に右腕、両膝の裏に左腕を入れて…持ち上げた
『っ!!!』
驚いていると、にんまり顔の迷彩お兄さんが「はい持ってー」と私に漆の木箱を持たせた
私の唯一の持ち物。
それをぎゅうと抱き締めたのを確認すると、迷彩お兄さんは襖を開けて――――跳んだ
――――跳ん、だ?
『(とっ……飛んでる―――――――――!!!!!!)
いいいやぁあああ!ちょ、おにいさ、これ無理!無理だって!
なんで木の上移動なの?!』
「そりゃー俺様忍びだし、奥州から甲斐って結構遠いからさー
急ぐよー」
『むむむ無理だめ!私高所恐怖症だから!やっ、やあっ』
木箱を落とさないように必死にしがみ付いた
「おー、いいねぇこれ!
っていうか…聖夜ちゃんって…あるよね」
『?(え、ていうか、名前)』
何普通に呼んでんのこの人
「もー、俺様に言わせないでよー照れちゃうじゃん」
とか言いつつ…目線が、あれだ
『……………うわ…最低…変態…成実より最低』
「え、俺様結構誠実だよ?」
『え、どの口が言ってるの』
「そんな真顔で言わなくったって……!!!俺様泣いちゃう!」
『( 無 視 )』
「ぐすん…………あ、そういえば名前、言ってなかったね」
少しだけ真剣な顔をして、お兄さんは口を開いた
「真田忍隊隊長…猿飛佐助
って言えば、わかるかな?」
待ち受ける、虎の地。
(や、すみません知りません)
(あれぇっ?!)
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