亀裂と決断
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「――…今ならまだ、後戻りできますよ
まだ、此処での日は浅い。…なるべく早く、決断して下さい」
――…鬼庭さんが出ていった後の部屋を、ぼうっと見渡した
布団に、衣類
それ以外は何も、ない
『(ああ、なんだ。やっぱり)』
私が居て良い場所は、
どこにも、ない。
居たいと思う場所はあった
居て欲しいと言ってくれた場所もあった
だけどそのどこにも
私は適応する事ができなかった。
そこに居ようと藻掻けば、藻掻くほど
自分がどれ程〝余所者〟なのか
浮いて、浮き上がって、
酷く惨めだった。
ああ、そうだ、
私はずっとそうだったのに。
なんで今更、望んだのか。
夢をみたのか。
『……ばかだなぁ』
未だ滲む視界を振り切ることはせずに、私はそのまま、部屋を片付けた
―――…泣かなかった
自分でも、酷いことを言ったとわかっている
伊達の為だ彼女の為だ自分に言い聞かせるように、勢いづいて彼女を傷つけた
後半なんて、自分が何を言ったのかさえ朧気だった。
齢17の―…知らぬ世界で1人きり、独りきりの、女子に。
なんてことを言ったんだと自分を斬り殺したくなる
なのに、あの子は泣かなかった。いや違う、泣いてはいたんだ。
俯いて、あの大きな瞳に涙を必死に留めていた。決して零さないように、唇を、歯を噛み締めて震えていただろうに。
震えさえも悟られぬよう、全てを押し殺していた。
泣かせてすらあげなかった。
感情さえ制御させてしまった。
今の俺は間違いなくこの世で一番最低だ。否、これからも、あの子の中で俺は最低で在り続けると思っていた。
恨まれると、憎まれると、思っていた。それなのに、なんだあれは。あの子は。なんなんだ。
『…ありがとう、ございます』
「…は…?」
『鬼庭さんの仰ったこと、全部、正論というか、事実というか…
なんか私、勘違いしてましたね!すみません、居座って!
ちゃんと…帰りますので。
ありがとう、ございました』
「帰る場所なんて、無いんだろうがっ…!!!」
感情に任せて、壁を強く叩いた
――…何を言ってるんだ俺は
お前が出ていけと、言ったんだろうが。お前があの子に、あの子の、あの子を、
殺すような、ことを。
まるで
独りきりの世界で死ね
というような、ことを。
「―――――…ッ!!!」
そうだ、伊達が駄目なら鬼庭で匿えば良い。そう、だ。いつかは帰るはずだ。もとの世界、もとの家に、もとの家族の元に――…
…ちょっと待て
なら何故彼女は
もとの世界に帰る方法を、
探す、と言わなかった?
探してくれとも言えたはずだ
帰りたいなら…帰るために
それを、一言も言わなかった
言う素振りすら見せなかった
理由は?
.