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「そういえば平和島、終電とかは?」
閉店準備の手伝いをしていると、岬さんが保存室から声を響かせる
「あ、歩いて帰れる距離なんで」
モップを掛けながらその質問に応える
が、
「…?岬さん?」
反応がない。聞こえなかったのだろうか
この店はカウンターの後ろ側に貯蔵庫への扉があって、またその貯蔵庫からも外へ出られるようになっている
外に出てしまったのかと思い、カウンターに近づいた時だった
「ゃ…め…、!」
それは本当に小さな呻きだったが、間違えようもなく、岬さんの悲鳴だった
「岬さん?!」
扉を開けると、そこには
「な…っ」
「は……?」
「離せ、臨也…!!」
岬さんと、クソノミ蟲がいた
しかも岬さんはノミ蟲に抱き締められて、身動きがとれていない
「ッ手前…!!なんで池袋にいやがるなんでこの店にいやがる!!
岬さんを離せ今すぐ離せ、じゃねぇと殺す!!!」
いつものように、手元にあるもので襲いかかろうとして、はっとする
この店を傷つけるわけにはいかない
「チッ……!」
「俺としては、なんで君がここにいるのかが一番不可解で不愉快だね。シズちゃんなんかがこの店に来ていいとでも?
君はこの店に似つかわしくないし君がこの店にいることで価値が傷つけられるね。少なくとも俺のディナータイムが最悪だ。損なわれる。
ていうか、何岬さんとか呼んじゃってるの?やめてよね俺の大事な大事な岬に関わらないでくれるかなぁ」
「……!」
いつものことなのに、いつものことじゃない。
俺がいることで岬さんに迷惑がかかるなら。岬さんが優しいだけで、本当は、もう、
「……臨也」
「ん?なぁに岬……「お前もう二度とこの店来るな」……は」
一瞬力が緩んだのか、岬さんはするりと臨也の腕から抜け出して服を整える
「ちょ、ちょっと待ってよ岬」
「俺の大事な大事な客に、関わるな」
「!……う、」
目の前で何が起きているのかがわからない。あの御託を並べるのが得意な臨也が、言葉を返せていない
「岬さ…」
「いくぞ平和島」
俺の腕を掴んで店への扉を開ける岬さん
ちらりと臨也を見ると、ばつが悪そうに俯いていた
しかもその顔はこの世の終わりとも言える悲哀に染まっている
「岬さん、あいつと、知り合いだったんですか」
「そういうお前らこそ…
…ああ、臨也がいつも話してた“シズちゃん”て、平和島のことか」
「(どんだけ情報に無頓着なんだ…)」
「悪かったな、嫌な気分にさせただろ」
「……いや…慣れてるんで…」
寧ろ岬さんとあいつが知り合いだったこととかあいつの岬さんに対する態度とかの方が驚きで、イライラが不完全燃焼に終わっていた
「…はあ…捻くれてるんだよなあ」
仕方ねぇ奴、と溢しながら、岬さんはまた扉を開ける
すると臨也が、
「うう…岬……岬……」
あからさまに落ち込んでいた
一体誰がこんな折原臨也を想像できただろう
「…反省したか?」
「した、したから、岬…」
「そしたら言うことがあるだろ」
「…………………………客の悪口言ってごめん」
「この場合、平和島にだろ」
「それは……(絶対やだ……!!)」
「臨也」
「……言いすぎ、た、……かも、」
渋々。悔しそうに小さくそう呟く臨也の頭を荒く撫でながら、岬さんは言う
「よくできました」
その光景を見て、その、二人だけの空間を感じ取って
俺は先程の照れ臭い誇らしさが冷たくなるのを感じた