02
御名前変換
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あれから何度か、一人でも岬さんの店に通うようになった
池袋だというのに、店の客達は何故か俺のことを怖がらない。
それが嬉しかったし、何より岬さんのつくる料理が好きで、もはや生活の一部となっていた
02:烏が鳴く
「いらっしゃい…お、平和島」
「こんちは」
「お前もすっかり常連だな」
無表情だと思っていたけど、岬さんは意外と、笑う
客にまた来ると言われたとき
客に料理を褒められたとき
客が料理で喜んだとき
この人の中心は、全てこの店なんだろう
「岬さんは、これが天職って感じっスね」
カルボナーラをくるくると回しながらそう言うと、岬さんは少し考えて
「弟がいてな。両親が仕事で家にいなかったから、俺がいっつも飯とかおやつとか作ってやってた」
「弟、いたんですか」
「ああ」
初耳だった。いや、出会ってから日も浅いから、岬さんから聞く岬さんのことは全て初耳なのだが。
「(そういや、まだ名前くらいしか知らねぇ…)」
その事実に、少しだけ気分が沈んだ
岬さんの料理は知っているのに、それだけ。
「あの」
「ん?」
「俺、もっと岬さんのこと知りたいです」
つい、そんな言葉を放った
衝動的だった。知りたい、岬さんのことを。その一心で。
この人と話すのは嫌いじゃない。寧ろ好きだ。回りくどくなく、あっさりとして、それでいて暖かく落ち着く会話。
最近煙草の量が減ったのも、イライラすることが減ったのも、岬さんのお陰だと確信していた。