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「岬ちゃーん、コーヒーおかわりー」
「もう昼休憩終わるんじゃないのか」
「ちょっとくらい、……わかったわよ…」
「ほら、テイクアウト用」
「ごちそうさま。
またねー」
「毎度どうも、
ほらじーさん、そろそろ時間だぞ」
「ん、おお、
今日も旨かった。ごちそうさん」
「気つけろよー」
「………」
そんなやり取りを横目で見ていると、トムさんがこっそり囁いた
「常連ばっかだからな、」
「そういや…、他に従業員は?」
客も多いし、席もある、そして広い店内でメニューも多いというのに、
先ほどから1人しかこの店で働いていない。
「いらないんだと。雇ったこと無いんじゃないか?」
トムさんからいろいろと聞きながら、何故かどうしても目が離せない自分がいることに気づいた
幽とどこか似ているのだろうか
あまり表情を変えないところとか
淡々としているところとか。
皿を洗う岬さんを見ているうちに、段々と瞼が重くなる感覚に陥った
「……」
ぼんやりと、水の中からあがってくるような気分と共に、目を開けた
目を開けて、少しの爽快感に、自分は寝ていたのだと認識した
「っやっべ仕事…!!」
勢いよく立ち上がって、時計を探す
するとその拍子に、何かが自分から落ちた
「毛布…」
「起きたか」
裏口の扉から出てきたのは、間違えようもなく岬さんだった
眼鏡は掛けていなく、束ねていた髪も解いている
「あの、トムさんは…!」
「今は6時。仕事、まだだろ?
凄い気持ちよさそうに寝てるから、時間近くになったら起こしてやってくれって。
アイツは一旦事務所戻るってよ」
「そう、すか…はー、マジで焦った…」
どかりと、椅子に戻る
その時毛布を拾って、折りたたんで岬さんに手渡した
「すいません…あと、ありがとうございました」
「いや、自分の店でリラックスしてくれるのは嬉しい」
「…………」
ああ、この人は
淡々としているようで、それだけじゃないのか
時折見せる柔らかい表情が、カフェに合っていて
だからこんなにも、落ち着ける存在なのかと
「そうだ、甘いもの、好きか?」
「?…はい、めちゃくちゃ」
「そうか、めちゃくちゃか」
大きめな冷蔵庫から、小さな紙袋を取り出した岬さんは、そっと俺の前にそれを置いた
「仕事お疲れさん。よかったらトムとでも食ってくれ。昼のお礼だ。」
――…
事務所につくと、トムさんがコーヒーを飲んでいた
「お、静雄」
「すいません、つい…」
「いいって、俺も経験あるし。
?その紙袋、どうした?」
「あ、岬さんが…よかったら食ってくれって」
「へー、なんだろうなぁ、仕事行く前に食うべ」
箱を開けると、カップが2つ、入っていた
「……かぼちゃプリン」
艶やかな黄色のそれは、蓋をとるとかぼちゃの匂いと甘い香りを漂わせて
そして微かに、店で嗅いだ香りが香っていた
プリンを一掬いして口に運ぶと、店にいるような気分がして
「…ハマりそうだな」
自分でも驚くほどの穏やかさに、休息を見つけた
(世界が広がった気がした)