01
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引かれると思った、
大袈裟に驚かれると
「おー、ありがとな。
じゃあこっち置いてくれるか」
淡々と、驚くほど淡々と、
この人は、そう言った。
「じゃあ俺、中入ってるわ」
「……」
トムさんの声に反応もできなかった
あまりにもあっさりと翻されたからだろう
「驚かない…のか」
「?なんか言ったか?」
「いや、何でも…」
言われた場所にダンボールをおろしていくなかで、少しの高揚感に浸った
「助かった。俺だと時間かかって。しかもそれ、重いだろ」
「まあ確かに…」
中に何が入っているのかは謎だったが、大方食材だろう。
「どうすっかなぁ…かぼちゃフェアでもやるか…」
困り果てたように壁に凭れかかって呟いていた店長が、ふと俺を見る
「かぼちゃ、好きか?」
「…割と、」
「そうか」
淡々と、坦々と。
店に入ってトムさんの隣のカウンター席に座る。店内は満席だというのに、ゆったりとした空気が流れていた
調理場はさほど広いスペースがなく、目の前で作っている様子が見られるようになっている
「トムの部下か、バーテン服だから同業者かと思った」
「平和島静雄、です」
「よろしく、なんとでも呼んでくれ」
「5年くらい前に、俺がチンピラに絡まれてたときに岬が通りかかってな
それがこの店の近くだったんだが
こいつ、フライパンでチンピラの頭ぶっ叩いて
<俺の店の傍で暴れんな>って言ったんだぜ?」
「フライパン…」
想像したらおもしろくなってしまった。
しかも大事なのは店のほうらしい。
「しかもそいつら、この店の帰りだったみたいで、
岬が出禁にするぞって言ったら震え上がってなー」
「あいつら、仕事決まったって昨日来たぞ」
「マジか」
「あと1人は結婚して子供連れてな」
「おいおいおいおい…」
「…5年って…この店そんなに前からあったんすね」
この辺りはあまりよく来ないし、カフェというものに縁が無い自分なら、知らなくて当然だが。
「俺が20歳の時に開いたから、もう7年か」
「…え…
(27……?!)」
俺が目を見開いたことに気づいたのか、店長は苦笑して
「よく驚かれる」
「タメくらいだと思ってました…」
「へぇ、それは光栄だな」
言いながら、岬さんは俺とトムさんの前にハンバーグ定食を置いた
「いただきます」
香りが空腹を誘う、気取らないような料理
どこかで、この人みたいだ、と思った
「すげーうまい…」
口から零れたその言葉を、岬さんは
「そうか」
と言って、柔らかく微笑った