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御名前変換
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引き寄せたものの、何か言葉が出るわけでもなく。
居た堪れなくなって岬さんから目を、そらした
「悪いな。昔、弟とよく買い物袋持ってたの思い出して。」
「弟…」
「ああ、平和島といると弟ができた気になる。」
岬さんは、ゆっくりと歩き出す
弟。岬さんのほうが年上だし、まあ、友達とかそういうのよりは、弟みたいに思われるのが妥当なのかもしれない
でも、なんだ
この燻りは。
(そんなものじゃ、なくて。)
店に着くと、俺達を見た常連客が騒然とし始めた
「ちょっと、岬ちゃんその手!どうしたの?!」
「女子高生助けた代償」
「何してんのよ、もー!救急箱どこ?!」
「平和島くんも手当てした方がいい」
「俺は平気で、」
「1人も2人も変わらないんだから!ほら座る!」
「…女って強ぇな…」
「…ですね」
「平和島くんが助けてくれたんだろう?
ありがとう」
店の常連客のじいさんがにこりと笑いながらこちらに頭を下げた
「…あ、平和島」
手当てを終えた岬さんが俺の方を向く
「悪い、礼言いそびれてた。
ありがとな。」
俺の頭に右手を乗せた岬さんは、あやすようにその手を動かす
それがあまりにもかっこいい仕草で
「ん?」
「い、え、俺は別に何も…」
俯くと、岬さんが不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる
「っ」
「どうした?手、痛いか?」
その距離の近さに驚いて顔を上げると、今度は心配した岬さんが詰め寄って、俺の右手をまじまじと視認する
これ以上は、何かがヤバイ
「はいはい怪我人は大人しくしなさい」
常連客の1人が岬さんの肩を掴んで無理やりに座らせる
何故かその客は俺にウィンクして
「それじゃ、お邪魔虫達は帰ろうかしらね。
岬ちゃんお会計ー」
「?ああ」
「…青春ね、」
――客達が帰ってしんとした店内に、2人。
「いつも悪いな、」
「遅くまで居座らせてもらってるから、これくらいは。」
椅子を片付けながら答えて、あることを思いつく
「岬さん、俺、暫く店、手伝ってもいいですか?」
言いながら岬さんを見ると、帳簿に書き込んでいた手を止めて、きょとん、と俺を見ていた
「岬さん、手怪我してるし…
岬さんみてーにうまい料理は作れねーけど、運んだり皿洗いなら」
「…そう言ってくれるのは嬉しいけど、お前だって仕事あるだろ?」
「時間不規則だし、その分早く終わらせるんで」
「ああ…いや…」
「…俺じゃ、迷惑ですか」
「それは違う。」
「…だったら、」
言いかけて、俯く岬さんの頭に右手を乗せる、そしてそのままゆっくりと撫でる
すると諦めたように息を吐いて
「ん…じゃあ怪我が治るまで、な?」
「…うすっ」
(彼の心は、いざ知れず)
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