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やぎりウルフ



[朝霧夜霧]


あの、戦場ヶ原ひたぎよりも容姿端麗であり
異形の羽をもつ羽川翼と互角、という頭脳を持ち
神原駿河のように運動神経抜群の身体能力を持つという噂。

そう、

噂、だ。

まさかこの上八九寺のように素晴らしい性格を持ち合わせているのだろうか

僕にそんな淡い期待を持たせていた生徒会長は――今現在

僕の視界の中にいた
滅多に人の前に現れない生徒会長朝霧夜霧が
僕、阿良々木暦の前に、いる


「……」

「私を見て、そこまで驚かれたのは初めてですねぇ」

「…いや、その…まぁ」

「そう驚かなくていいですよ、私もただの人間ごときに過ぎないんですし」

「…ただの人間は…そうそう生徒会長を続けてやらないぞ」

「生徒会長だなんだ言っても、結局ただの人間ですよ
ところで阿良木くん」

「違う名字に変えないでくれ」


    【阿良々木○】
    【阿良木 ×】


「失礼、抜けました」

「違う、わざとだ」

「抜けま た」

「わざとじゃないっ?!しかも新バージョンだと?!」

「おや、元ネタがあるんですか」

「元ネタを知らずに発掘するなんて…!!」


恐ろしい、なんて恐ろしいんだ、この生徒会長


「そうそう荒木くん」

「もはや漢字変換によって変わるのか?!」

「いえ、今のはわざとです」

「なんて奴だ!!!」

「しかし君が図書室に居るなんて珍しいですねぇ」


本をぱたりと閉じて口元で笑う
確かに僕は今珍しく、この会長が会長を務める直江津高校の図書室にいた


「あぁ、まぁ、ちょっと本を探して…いや待て、なんで僕の名前を知ってるんだ?」

「生徒会長が全校生徒のプロフィールを把握しておかないで、何を統一すると言うんですか」

「中二病的なのにかっこいい!!」

「ちなみに貴方が図書室にあまり来ないのは知ってますよ
学校もサボりがちですしね」

「すみません」


 【緇イ笑顔ヲ向ケラレタ】


「まぁ別にいいですけれど
で、探しているのは何ですか」

「え…?あ、あのさ、源氏物語ってあったっけ?」

「源氏物語なら左から3番目です。ちゃんと全巻詰んでありますよ」

「3番目…ああ、ありがとう
そういえば、訊くのが遅れたけど何やってるんだ?」


本来あるべき場所の棚から、タワーになった本達
僕としたことが、会長と出会ったことで突っ込むべきところをスルーしていたようだ


     【不覚】


「何って読書ですよ。暇だったので図書室の本を」


その本のタワーたちを従えるように座る会長は、また本を開いた


「全てって…まさか図書室の本、全部か?」

「まぁ、することもないので」


口元だけは笑っているが、どこか寂しそうな表情に見えた
なんとなく、本当になんとなく、会長が座る席の前に座った


「だからってこんな量、読めるのか?うちの図書室広いし…ジャンルもばらばらじゃないか」

「馬鹿ですねぇ阿良々木くん、その図書室を管理しているのは一体誰だと?」

「……………図書委員長の存在が危ういな」

「まぁこの学校は若干、私が管理する学校ですからねぇ」

「生徒会長にそんな権限あるのかよ?!」

「ありますよ、校長や会長なんかを言いくるめれば簡単です」

「乗っ取る気満々じゃねぇか?!」

「ひれ伏せ愚民共」

「悪の巨大帝国?!」

「是非もなし」

「第六天魔王だと?!」

「魔王とは…己の欲」

「かっこいいー!!!」

「ところであらら木くん」

「人の名字を残念そうにひらがな変換するな」

「失礼、文字化けです」

「セリフがかっ?!」

「アwwラwwラwwギwwくwwんww」

「それはただ馬鹿にしているだけだ!!!」

「ふふ、おもしろいですね阿良々木くん」

「褒められてんだか馬鹿にされてんだか…」

「褒めてません馬鹿にしてます」

「真顔で否定された?!」

「嘘ですよ、褒めてます」

「そりゃどーも。……つーか会長…意外と楽しい奴だな」

「ほう?」

「結構噂は聞いてたけど、どんな人なんだって思ってたからさ」

「…なるほど…そうやって他の女も落としてきたのね」

「いつからこの話は昼ドラになったんだ?!」

「ふふ……まぁ、阿良々々木くん」

「らが1つ多いぞ」

「失礼、歌いました」

「一文の中でか!!!?」


どうやらこの生徒会長は僕の雑談相手に抜擢できそうだった
だがしかし僕の八九寺真宵に勝てるかな朝霧夜霧!!!

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