やぎりウルフ
[01]
私立直江津高校の生徒会長、朝霧夜霧は、その名の通りのように、人前に姿を現わさない事でも有名である
才色兼備という言葉がぴったりと当て嵌まるような人物らしいが
生徒は誰一人としてその姿を見たものは居ないし、教師でさえその数はごく一部で
生徒会会長、朝霧夜霧はある種の伝説のように言われていた
もちろん、行事で人前に出なければならない生徒会会長の仕事は、その補佐である副会長が全て行っていて
何故そんな生徒会長が未だに会長を続けていられるのかと言うと、それはなんの不正でもなんでもない―――
支持率、だったりする
皆が皆、いい加減な気持ちではなく――
“生徒会長は、朝霧夜霧が良い”と言う
朝霧夜霧が就任した、していた高校1年の頃から私立直江津高校は大きく変わり出した
それはそれは良い意味で、だ
当然、自分達に学校生活の都合が良くなるのだから、生徒達は朝霧夜霧を支持するし
学校を順次に改善していく朝霧夜霧を教員達は重宝する
そんな事が続き――朝霧夜霧生徒会長は、なんと選挙も信任投票のまま着任し続けている
ここまでくると、異形では表せられないと僕は息を呑む――そう、言うなれば、
異質。異常。
異なる、もの。
なにもかもが、異なるような
[ソンナ存在]
なのだ。間違いなく。
生徒会長は。
朝霧夜霧は。
この人、は。
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