やぎりウルフ
来た時と反対に自転車を漕ぐ。19時26分となると、やはり暗い。
朝霧を今度こそ家に送れると思うと、なんだか、顔が、にやけた
「―――阿良々木くん」
「ん?」
「――ありがとうございました。本当に。」
「いや、僕は何もしてないし…今回は朝霧が頑張ったのと、まあ、忍野が珍しく親身になって手助けしてくれたおかげだよ。」
「ええ、忍野さんにも大変感謝していますよ。
けれど今日貴方に逢わなければ、忍野さんにも逢えなかった。私はこの先もずっと、大神様に護られてしまっていた。
――阿良々木くん、ありがとうございます。あの時、送ると言ってくれて。あの時、振り向いてくれて。―…ありがとうございます」
「…そこまで言ってくれるんなら、どう致しまして。」
「にしても、愚かですよね。12年前に吐いた嘘で、12年間自分を苦しめて。……自業自得だったとは。」
「…なあ朝霧、訊いていいか?」
「ええ。」
「…12年前…どんな嘘を吐いたんだ?」
「―――私は、どこにもいない。」
「――――――……」
【忍野ノ予想ト】
【殆ド々ダッタ】
「いなければ―…誰も私を知らなければ、寂しいとか思うきっかけも無いと思ったんでしょうね。
私の嘘は大半が、下らない強がりだったんですよ。それがまた、馬鹿らしいですよね。…ただの嘘。幼い子供が無意識に吐いてしまうような、嘘。
…幼い子供と言えば阿良々木くん、学習塾にいた、あの子はまさか阿良々木くんを襲った―…いえ、阿良々木くんが遭った吸血鬼なんですか?」
「あ、ああ――忍か。うん、まあ、そうだな。」
【モウ】
【吸血鬼デハ】
【無ヰケレド】
【吸血鬼デハ】
【無ヰケレド】
「…そうですか。」
「随分察しがいいな」
「洞察力も長けているんです」
「ちなみに他のは」
「戦闘力」
「日常のどこで使うんだ?!そのスキル!!」
「阿良々木くんに遭った時ですかねぇ」
「変換!!」
「失礼、わざとです」
「それは全然詫びてないぞ!?」
「ありませんよそんな気」
「言い切った!!!」
「好きですよ阿良々木くん」
「言い切っ…た…?!」
思わず自転車を止めて、後ろを振り替える。荷台に座っている朝霧は、いつものように口元だけで笑っていたけれど、少し―照れくさそうにしていた。
「―わかりますか?阿良々木くん。」
「……え、え、ええ?!」
「私は貴方が好きだと言ったんですよ。勿論、異性として。人間として。」
「…嘘、じゃ」
「…ありませんよ。私はもう、それは言いません。」
まあ、きっと、ですけど。
そう言って、朝霧は僕に顔を近付ける
「……まあ、返事は…――いりませんよ。わかりきってますしね。」
「わ、わかりきってるって―――どう、いう」
「戦場ヶ原ひたぎか、羽川翼か、神原駿河か。―…つきあっているのでしょう?」
「いや―…、それは有り得ないぞ朝霧。
第一戦場ヶ原は僕に悪意しか向けてないし羽川は僕の親友、恩人だ。神原も可愛い後輩なだけでそんなフラグは」
【フラグハ】
【立ッタ箏ガアルダロウカ】
【?】
「…とにかく僕は誰ともつきあっていない。悲しい事に年齢=、だ」
「それは悲しい」
「真顔はやめてくれ!!!」
「じゃあ、どうなんですか?」
ずい、と、また顔を近付ける朝霧
【美人ハ】
【沁臟ニ悪匕】
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