やぎりウルフ
[03]
「―――終わりました」
出てきた朝霧の頭に獣耳は無く、尻尾も無くなっていた。
そこに居る朝霧夜霧は、どこにでも居る、普通の女子高生だ。
「おお、よかったじゃないか。じゃあもう遅いし、帰った方がいい。阿良々木くん、送り狼になるなよ。」
「ならねぇよ!」
【コノタイミングデ】
【送リ狼ヲ出スノカ】
忍野の皮肉に朝霧が反応し、僕を見る
「……………送り狼」
「ち、違う!誤解だ朝霧!!」
「必死になるあたり疑わしいですねぇ」
「しまった!」
朝霧の声のトーンも明るくなっている気がしたのは、ただの気の所為ではないと思う。
「――忍野さん。手伝って戴いてありがとうございました。」
忍野に向き直り、丁寧にお辞儀をする朝霧
忍野に対しての警戒心はとっくに無くなったようで、なんとなく――その距離は近い。
「はっはー。そんな堅苦しいのはいいよ。ああ、そうだ、何かあったらいつでも此処に来ていいよ」
「ああ、いえ、そこまで甘えるわけには」
「さっき言っただろう?君といろいろ話してみたい、って」
「……そうですね。ええ…では、近いうちにでも」
「それはありがたいね。…阿良々木くん、そう睨むなよ。何かいいことでもあったのかい?」
「睨んでねぇよ。捏造するな。
朝霧、帰ろうぜ。」
「ええ。では。」
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