やぎりウルフ
「12年前に大神様を喚ぶなんて―…まして護ってもらうなんて、生徒会長ちゃんは余程大きな嘘を吐いたのかな」
「そんなに凄いのか?大神様って」
「凄いよ。一部とは言え、多くの人にちゃんと奉られて、崇められてるんだ。その神様が護っているって事がまず驚きだね」
「へえ―――…」
【不ト】
【思フ】
【 嘘 】
朝霧が吐いた――…その大神様を喚んだ決定打のような嘘は、一体どんなものだったのだろうか。
踏み込んではならないとわかっていても、それがきっかけだったのなら、今後、朝霧がその嘘を絶対吐かないという保証は――ない。
【嘘ハ】
【詁噫ニモ吐クケレド】
【無噫識ニダッテ】
【吐イテシマフ】
【詁噫ニモ吐クケレド】
【無噫識ニダッテ】
【吐イテシマフ】
「変に考えるなんて阿良々木くんらしくないじゃないか。君は後先考えずにずかずか踏み込んでこそ阿良々木くんだろう?」
「人をデリカシーの欠片も無いような人間みたく言うな」
「無いじゃないか?」
「あっさり否定された?!何言ってんの?って顔で当たり前みたいに否定された?!」
「はっはー。
まあ、そうだね。あの状況下で、5歳の生徒会長ちゃんが吐く嘘なら――こんなところじゃないかな。
――**********。」
【ソレハ】
【ソレガ笨档ナラバ】
【伍歳ノ少女ガ吐クニハ】
【余リニモ哀シイ】
【嘘ダ】
「ただ嘘って言っても、生半可な嘘だったら大神様は喚べないし、生徒会長ちゃんだけじゃなく人類皆が吐いている嘘と同じだよ。
けど、生徒会長ちゃんは喚んでしまった。喚べる程深く重い思いを込めた嘘だった。大したものだよね。」
「―…忍野、朝霧が―…朝霧が、今後そんなような嘘を吐かないと思うか?」
「思わないね。」
「――…即答か」
「生徒会長ちゃんは今後も吐くんじゃないかな、嘘を。
―――――――強がりを。」
「………」
「だからまあ、僕が度々話をしようか―なんて思ったわけだけど」
「…なあ忍野、お前そんな親身になってくれるような奴だったか?いつもなら、まあ僕には関係ないけどね、くらいに言って終わりだったじゃないか」
「うん――?うん、まぁね、個人的に――生徒会長ちゃんに興味があるんだよ。もしかすると彼女は僕と似てるかもしれない。だから色々と話してみようかと思っただけさ。カウンセリング的なのも、含めてね。」
「……忍野、まさかとは思うが、朝霧を変な目で見るなよ」
「どうして阿良々木くんがそんな事を言うんだい?君にそんな権利は無いだろう?」
「え?いや…そう、だけどさ」
「もしかして惚れちゃった?
生徒会長ちゃんに」
「…――惚れ」
「はっはー。若者には負けないよ阿良々木くん。」
飄々とそう言い放つ忍野を見て、息を呑む
【笨氣ノ眼ヲシテヰタ】
アロハシャツを着た、廃墟に住む三十路の自称専門家のおっさんが。
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