やぎりウルフ
「そう。だから大神様は君に導かれ、君を護ったってわけだ。
嘘そのものの存在であるような君をね。」
「憑いた…ってことなのか?」
「いや、附いてはいるけど、憑いてはいないよ。大神様は只、君を護っているだけなんだから。」
「じゃあ…耳と尻尾はどうなるんだ?」
「…いつも、時間が経てば…消えます。けれどその時間というのは定まっていなくて…ですから私は、生徒会長でも、人前に出られなかった。いつ出て来るか、わかりませんからね。」
「生徒会長だったんだ?」
「…ええ。私立直江津の。」
「へえ、じゃあ、生徒会長ちゃん。
どうすればこの不定期な大神様が鎮まって下さるか…生徒会長ちゃんなら、わかるだろう?」
「…嘘を、解いて―…謝って、取り消して、取り換えて、自分を認めれば、良いんですか」
「そう。そしてその嘘を、今後吐かないようにしていればいい。
何度も言うけれど大神様は生徒会長ちゃんを護っているだけなんだからね。」
「なあ忍野、斬り離すってことは―――」
「直に、大神様が生徒会長ちゃんを見離してくれるよ。護る必要が無くなった時、大神様は自ら生徒会長ちゃんを見離す。その時までさっき言ったように生きる事だね。」
「――…わかりました。」
「ね、簡単だっただろう?
全く阿良々木くんは心配性なんだからさ……何かいいことでもあったのかい?」
「…ああ、あったよ。」
本当に、よかったと思う。
朝霧が12年間堪え忍んできた呪縛の突破口が見つかったのだから。
朝霧が12年間出せる事が出来なかった柔らかな表情が浮かんだのだから。
本当に、いい事あったよ。
「……はっはー。じゃあ阿良々木くん、出ようか。生徒会長ちゃんは大神様に話さなきゃならないからね。僕ら外野が居ちゃ野暮だろう。」
「ああ――」
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