02
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
6年で様々なことが起こったと石井さんから教えられた。ざっくりとした説明だったが、後藤さんのことや日本での事件のこと。
それに八雲と先ほどの女性、小沢晴香さんがどう関わっていたかということ―――…
そして、斉藤家のことも。
石井さんは僕のことを個人的に知っていただけらしい。
本当は空港に迎えに行くのは石井さんだったのだが、後藤さんが石井さんから僕が帰国するという情報を聞いてしまったため迎え役を奪われてしまったと。
(ちなみに石井さんはオカルト系の話が好きらしい。なるほど。納得だった。)
それよりも、なによりも衝撃的だったのは、斉藤家の動きだった。
僕が逃げている間に…八雲に全てを背負わせてしまっていた。
その事実が、更に僕を追い詰めた。
「やっぱり、帰ってこなきゃよかった…」
自分がいたところで、ただやっかいものなだけだ。
だから八雲に会いたくなかった。
だからそのまま、忘れてほしかった。
それは僕の傲慢な我侭だけれど。
石井さんと署内で別れて再び車に戻る。
行きと同じように、沈黙のなかで、流れる景色だけを見ていた
+++
次に着いた場所は、やはり家だった
随分と寂しくなった寺が全てを物語る
もう、いないのだと。
「…叔父さん、…ごめんなさい」
手を合わせながら謝った。
…許してはもらえないだろう。こんな親不孝者。
わかっていた。叔父さんだけは6年間、唯一連絡を取っていたから。
それは毎月のことで、僕が手紙を出せば叔父さんも必ず手紙を返してくれていた。
それが、亡くなったあの日、アメリカにいた僕に叔父さんの姿が見えたとき。
ああ……そんなことになってしまったのだと。
わざわざ僕のところに来てくれたのだと思って涙が止まらなくて。
出したまま返ってこない手紙が、余計に寂しさを増した
叔父さんは手紙に一切八雲のことを記さなかった。
思い出さないように、考えないように配慮してくれていた。
…優しい優しい、僕の、お父さん。
「…親不孝な息子で…ごめんなさい…。
どうか安らかに…」
もう、僕の帰る場所は、ないね。
居間に行くと、八雲、小沢さん、後藤さんが座っていて
ルシアンが僕の席の傍に立ってくれていた
「Thank you very much. Please don't worry so much.
(ありがとう。そんなに心配しないで?)」
「If you wish, I don't return to the United States.
(もしお前が望むなら、俺はアメリカに帰らない。)
Will I protect all the while?
(ずっと守ってやるぞ?)」
…さすがイタリアの血が入ってるだけあるなぁ
ニヒルに笑いながらそう言ってくれるルシアンに微笑みかける。
その蒼い両目には、6年間過ごした俺のことなんてお見通しなんだろう。
金髪を片手で掬って、もう一度、大丈夫だよ、と告げた
「(おーおー八雲の鬼の形相に気づかないで、よくやるぜ…
6年ですっかり忘れてやがるな、出雲のヤツ。
八雲の執着心は並のもんじゃねえってこと)」
「出雲」
耐えかねた八雲が言い放つ。
出雲は困ったように話し始めた
「えと…まずは、はじめまして小沢さん。
斉藤出雲といいます。
八雲と同じ叔父さんの養子で…。
貴女のことは、先ほど石井警部補からだいたいのお話は聞きました。
…僕がこんなこと言える立場じゃないけれど…ありがとう、ございました。」
「えっ?!い、いえそんなっ、か、顔を上げてください!」
「…貴女には、感謝してもしきれませんから…」
へらと笑う出雲に、晴香は思わずどきりとする
「この際…すべて言ってしまったほうが良いよね」
そう言って、出雲は黒く肩まで伸びた髪の毛をくしゃりとかき回す
「…6年前。
僕はアメリカにいって、ニューヨーク州の警察に迎え入れられた。
配属されたのは非科学研究特別捜査班。死者の魂からなる事件を解決する班だよ。」
「ま、待ってください、じゃあ―…!」
晴香の問いかけに、出雲はまた情けないように笑って
「うん。僕もね、見えて、話せて…そして、
触れることができる。」
右目の黒いカラコンを外す
覗いたのは、八雲と同じ赤い瞳だった。