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昼下がり。
今日はトラブルもなく、映研の部屋で八雲と晴香がゆったりとした時間を過ごしていたとき
八雲の携帯が電話の着信音を告げた
「…また後藤さんか…」
次はどんな事件だ、とうんざりしつつ携帯を耳に当てる
だがそれはいつものような事件についての内容ではなく。
瞬間、ソファーに寝そべっていた八雲が跳ね起きた
「え?八雲くん?」
晴香の問いに答えることなく、八雲は部屋の扉から飛び出す
「八雲くん?!」
それにつられて、晴香も後を追った
+++
「―…Is this the country where you were born?
(ここが君の生まれた国か)」
「…It's so.(…そうだよ)」
もっとも、故郷と呼んで良いのかはわからなかった。
伏せた目で空港の景色を見渡す。懐かしい、少し怖い、僕が逃げた場所。
「I'd like to return to the America…
(アメリカに帰りたい…)」
ぼそり、と呟くと、隣にいる友人がやれやれと苦笑した
「おォい!!出雲!!」
「!ごっ、ごと…う…さん…??」
この日本で、大きな声で僕の名前を呼ぶのは1人しかいない―
そう思って振り返ったものの、風貌の変化に戸惑ってしまった
時とは残酷なものだ。
のしのしと歩いてくる様子を見て、熊を思い浮かべた
「久しぶりだな、出雲…何年ぶりだ」
「…6年…です。お久しぶりです後藤さん…」
がしがしと頭をぐちゃぐちゃにされる。
この手は、変わっていなかった。
「で、こちらの外人さんは?」
「彼はルシアンといって…その…ええと、向こうでの僕の護衛をしてくれていたSPさんというか。
Lucian.This is Mr. Goto. It's the Japanese police.
(ルシアン、この方は後藤さん。日本の警察の方だよ。)」
「How do you do.」
「んあ?」
「はじめまして、と。」
「おお、長旅おつかれさん。」
2人が握手を交わすのをじっと見つめていると、後藤さんが僕に向き直った
「で、だ。お前!!この6年間の落とし前はどうつけるんだァ?アァ??」
「ひっ!!ごごごごめんなさいごめんなさいごめんなさぁあああ!!」
後藤さんに凄まれる。そりゃもう怖いです。
「…八雲がどんな想いだったか、わかってんのか」
「!!や、八雲は…まだ、僕のこと、覚えてるんですか…?!」
嘘だ、
だって僕はこの6年間、彼に一切の連絡をしなかった。
それどころかアメリカに行くときも、何も言わずに去ったのだから。
憎まれて、忘れられて。
そうあって、ほしかった。
なのにまだ、彼は僕のことを忘れていないというのか。
「俺にはな、わかんねぇよ。お前のやり方が…」
「…っ」
6年前。馬鹿な僕が考えついた、馬鹿な作戦。
それは…成功したのだろうか。
「だからな、わりーけど、連絡させてもらったぜ」
「…………は……」
連絡、を、した?誰に、何を
八雲に、僕が、帰ってきたと?
「ッな、なんてことしたんですか後藤さん…!!八雲には秘密にって、あれだけ!!ああ!もうここには居られないっ…!
Lucian!I'll move by car immediately!
(ルシアン!すぐに車で移動しよう!)」
「…It's regrettable, but that seems too late.
(…残念だが、それは手遅れのようだぜ?)」
―――全身が、凍りついた感覚に陥った
ふと漂う、懐かしい香り、温もり。
苦しいほど締め付けられる甘い痛み。
見つかってしまった。
捕まってしまった。
「な、んで……なんでっ……?」
6年間。必死に耐えていたのに。
「…出雲!!」
貴方のためと、全てを捨てたのに。
「どうしてっ、僕のことなんか…!!」
ああ神様。どうしてこれ以上、僕を試すの。
「この馬鹿が…!忘れるわけないだろう!」
八雲の声は、涙声に震えていた。
ただいまと言ってくれ。
君が帰ってきた証を僕に。
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