・黒曜編・
御名前変換
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―――…また、ないてる
『…………?』
今日もまた実験体にされる、ある日。
死にたくて生きたくて、死ねなくて、生きたくなくてどうしようもなかったある日。
その声は、実験室の、一枚の鏡から聞こえてきました。
―――……また、ないてる
『…だれ…』
「?おいNo,000。何を喋っている」
―――……ないてるくせに、ないてねぇの
『……なけないの……』
―――……、…なあ、おまえ
「始めるぞ」
『!!っ、―――――――ッ゙!!!!!』
結局、その声がなんなのか。わからないままた実験が始まり、その存在はわかりませんでした。
けれど次の日、
――――全てが変わった。
「No,000とNo,696の融和実験を開始する」
その時初めて、骸さんに出会った
「………」
『………』
―――その男の子は、私に向けて微笑んでいて
『……………?』
どうして笑えるの、そう問い掛けたかった
「……大丈夫ですよ、愛吏」
―――その名前を呼ばれたのは、いつ以来だったろう。
「大丈夫――…
僕が貴女を護ります。絶対に、助ける。」
『………』
「…もう少し…あと少しだけ。
待っていてください、愛吏。」
「始めるぞ」
―――――……
『―――その実験は、私の体に骸さんの血を融合させるというものでした。』
「ゆう…ごう…?」
「愛吏の体内には、自分のと別に骸の血液が混在してるってことか?」
『…はい。
言うなれば今の私は、半分が骸さんで成り立っている』
「「!」」
『実験は成功…私はかれらが理想とした完全な成功体とされました。経過観察のためか、その日は実験室から出されなかった』
そしてそれが
……愛羅と出会い
骸さん達と出会う、始まり。
――――……
―――……なぁ
『……』
都合のいい幻聴だと思っていた
きっと私がつくりだした相手だ、
あまりのさびしさに、恐怖に。縋りつけるものをでっちあげたのだと。
それなのにその幻聴は、おかしなことを言った。
絶対に無理なこと。
今の私が、望むことを諦めたこと。
―――……こっからでたい?
『…そんなの…むりだよ
それに…でても、こことおんなじ、せかいがあるだけ…』
―――……それだけじゃねぇよ
すっげーたのしそうなところがあるし、すっげーやさしいやつがいたりする。
『どうして…そんなこと、いえるの』
―――……みてきたから
『…どこで…』
―――……ここから。
このかがみのなかから、ぜんぶ、みてきた。
『…どうして、かがみのなかにいるの……』
―――……さぁ…。
きづいたら、ここにいて、ここでいきてて、かがみのなかでしか、いられなかった。
『……、あなたは……でたい…の、?
そこから……かがみの、なかから…』
―――……でたい。でたところが、たとえ、ひどいせかいでも。
…もうたくさんだ。このなかは。だぁれもいない、みてるだけのこのなかは。
『どうしたら、…あなたは、でられる……?』
―――……おれだけじゃだめだよ。
おまえもいっしょじゃないと。
『…わたし、も?』
―――……ずっとみてきた。
おまえは、ずっとでたがってた。
『ゎ…わたし、は…っ…』
―――……でよう。そとがひどくても、おれがまもるから。
ひとりにさせないから。
『……うそ…』
―――……うそじゃない。
『っそとに…、そとに、でたって……わたしは…!』
―――……おれがまもるよ。
かなしいのも、いたいのも、つらいのも、ぜんぶいっしょに、もらってやる。
ひとりじゃなくて、ずっとふたりでいてやる。ここに、ちかう。
…だから、えらべ。
いえよ。おまえの、ねがい。
『ゎ……
わたしの、……っ…』
わたしの願いごとは。
いけないことなんかじゃないと、信じて疑わなかった。
そのときの私には、男の子が言った約束と、鏡のなかのかれが言った誓いがすべてだった。
『――…そして私は、
かれを鏡のなかから呼び寄せ、思念の塊に実体を創り……
”愛羅”という名前をつけました』
傍から見ればそれは、幼子がお気に入りの人形に名をつけるようなママゴトだっただろう
けれど私にとっては。私にだけは、
『それはなによりも大切な……儀式でした。』
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