・未来編・
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エレベーターから降りて、すぐにその小さな体を見つける
「……できましたか?」
その背に声を掛けると、不機嫌そうなアイリが振り向いた
『…炎って、わかんない…』
…アイリが強くなりたいと言った時。暫く言葉に詰まってから……俺はそれを了承した。その目を、覚悟を、否定する理由が、見つからなかった。
理由は問いた。するとアイリは、
“綱吉達を守りたい”と、言った。…その中に、一体どれだけの者が含まれているのだろう。
アイリには、愛吏には、敵も、味方も、…無いのだ。
大切だから、誰も失くしたくないから、だから、戦う。
だから強くなる。
だから自分を、
犠牲に、する。
「…それはそうでしょうね、アイリ様は炎を見たことがありませんし」
俺が指示したのは、アイリに自分のリングを貸し、それに炎を灯すこと。
俺がアンドロイド型の匣を開匣した時の一瞬しか炎を見た事が無いアイリには、到底無理な事だった。
『む……』
頬を膨らませるアイリの前に、恭弥から預かったアタッシュケースを置く
錠を開けると、中から数十個の匣とリングが姿を現した
『………?』
「これが匣です」
『ぼっくす…?』
そう、これは、
この時代の愛吏が使っていた、リングと匣。数少ない属性のものだから、匣研究をしていた恭弥が世界中から集めていた。
愛吏が居なくなってから…恭弥が大切に、保管していたのだ。
「…この匣にも、そのリングにも、属性というルールがあります。属性は現時点発見されているので八種類。
大空、嵐、雨、晴、雷、雲、霧、そして俺とアイリ様の属性である、夜空に分かれています。
人間にはその属性の波動…言わばエネルギーが流れていて、リングを土台に、そのエネルギーを炎に変換し、匣に挿入する……。
これにより匣は開匣されます。…どうですか?アイリ様」
『………
うん、わかったっ!』
「、…………」
……普通の子供なら、理解なんてできないだろうに。
それが理解できて―…そして、
『こう?』
………すぐに実現させてしまうのだから、片割れといえど畏怖すらしてしまう。
リングから大量に放出される純度の高い夜空の炎を見て、顔が引き吊るのがわかった。
…これがアイリの想いで、覚悟、なのだろうか。…だとしたら、
『アイラ!できたっ!』
その小さな身体には、あまりにも
「ッ…………」
『……アイラ?』
―――大き過ぎるじゃないか――
炎に包まれるその身体を、いつの間にか抱きすくめていた
いつだろう、これと同じことを、愛吏にも言った。
お前じゃできないと、
お前じゃ駄目だと、
だから諦めてそこで留まっていろと、言ったのだ。
けれど愛吏は苦笑のような、自嘲の笑みを浮かべて、俺に告げた
『…そこで諦めて、留まったら、
私はいつか、進めますか?』
悟られたと、感じた。
鏡の中、出られない、壊せない壁の前で留まっていた己を思い出した。…仕方ない、なんて、ただの言い訳でしかなくて。
ああ、そうだ。そうだよ。俺は、出たいと、願うだけだった。
手を伸ばすだけだった。
壊してやると宣言したのは、この小さな少女だ。
壊さなければ出られないのならば壊してやると。出たいと思うから、必死に手を伸ばす入口を探し、抉じ開けて、手を出すのだと。
…でもそれは、あまりにも自虐的過ぎて。
『…アイ「壊れないで…」
壊れてしまわないで、くれ。
その身体に、業を、力を、地位を、背負わせたのは、俺達なんだ。
「ごめん………っごめん、ごめん………ごめん…………ッ」
ああ、でも、俺らが弱さを見せてはならない。
俺らが弱さを見せる度、こいつは、
『…アイラ、大丈夫。
私、もっと強くなるからっ!』
こいつは、
強く、脆く、なってしまう。
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