・ヴァリアー編・
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…恭弥さん、どこにいるでしょうか。そういえば、恭弥さんはディーノさん家庭教師のもと、修業をしていると兄さまが言っていたけれど…。
『………大丈夫でしょうか』
………勿論、ディーノさんが。
並中についたけれど、応接室に明かりはついていなかった。
…屋上、とか………?
けれどさすがに、夜、しかももう日付が変わった程の時間なのに居る訳がなくて、一気に理性を取り戻す。
…会えなかった、なんて言ったら、兄さま、怒るでしょうか。
『……、っ携帯!』
買ってからただの一度も使っていなかった携帯を取り出して、恭弥さんの番号を出す。
最初からこうすればよかったんですね……
自分に少し呆れながら、発信ボタンを押した。
つくづく思う。恭弥さんのこととなると、冷静でいられなくなる様。 それでもそれを直そうだとか思ったことは、なくて。
寧ろ冷静でいられなくなる事が、嬉しかったりする。私はこんなにもあの人が好きなのだと感じて、幸せだと、思う。
『……恭弥、さん、』
会いたい。会いたい、会いたい…逢いたい。
だから早く、この電話が繋がって―――――……
【―…み~ど~り~たな~びく~な~み~も~り~の~】
『……………え、』
――――…
『…恭弥さん、今の歌……並中の校歌ですか?』
「うん。愛吏も使う?」
『え"、
い、いえ…、私はちょっと…ご遠慮させていただきます…』
「?そう」
―――――音が鳴り響いた後ろを振り向く
…間違えることなんて、無い。
この着信音は、
『―――――』
「―――――」
息を、呑んだ。
「―――――愛吏」
『………ゃ…さ、』
「………愛吏…、
愛吏っ………―――――――」
綺麗な黒髪に、桧扇の花のような香。吸い込まれそうな、鋭い瞳。私をいつだって離さぬように抱き締めてくれた、この人の全て。
その全てで、今までに無い程強く抱き締められた。
苦しくて息ができないのに、嫌だと思わなかった。この息苦しさが、どうしようもなく好きだった。
もっと抱き締めてください。強欲だなんて言わないで。咎められてもいい。
それでも私はこの人でなければ、この人がいなければ、前を向く事すらできない程、弱いんです。
『っ――恭弥さん、恭弥、さん、恭弥さん…っ!!!』
隙間なんて生まれさせないと、きつく抱き締める。それが、精一杯だった。
ただただ名前を呼びあって、そこにいるのだと確認して、離さない。今だけは離してはならない気がした。
どれくらいそうしていたのか、ゆっくりと恭弥さんが、私の首筋に埋めていた顔を離して、私を見た。
その顔は、いつもの恭弥さんとは思えない程弱々しく、今にも泣きそうな、悲痛に満ちた顔だった。
「―愛吏、だよね?」
『…はい。恭弥さん』
「―帰ってきたん、だよね?」
『はい、恭弥さん』
「―――――おかえり」
そう言ってまた、恭弥さんは私を抱き締めた。今度は、優しく包み込むように。
『――ただいま、です…』
その胸に顔をすり寄せた。
恭弥さんがここに居る事が、嬉しくて、幸せで、堪らなかった
――…でも………
『………恭、弥…さん…』
「?どうしたの?」
恭弥さんの胸に顔を押し付けて、絶対に顔を見られないようにする
『えとっ…あの、……っす』
「…?」
…羞恥で全身が震えているのが、わかる
『うあ、あ、ああああの…っき
き…キス、してください………………』
「……………ッ!!!!!!」
恭弥さんが片手で口を隠して、横を向いた
『!!
あ、あああああややややっぱり何でもないですっ!何でも!わ、わすっ…忘れてくださいお願いしますぅぅううう!!!』
両手で顔を隠していると、恭弥さんが私の手を外してくる
露になるのは、羞恥で真っ赤に染まった私の顔で、
「…愛吏がそんな事言ってくれるなんて、思わなかった」
少し頬を染めた恭弥さんの顔が、近づく
『ぅ、あう………っ、んぅっ』
「っ、ん……ゅっ、は…」
『はっ……ふぅっ…むっ…』
「………っ……愛吏、
…応接室、行こうか」
『は、…はい……っ?!』
答えた瞬間、恭弥さんの腕が私の背と膝の裏を捕らえ、持ち上げられた
『ふ、ふええええっ!?恭弥さんななな何をっ』
「姫抱き」
『自信有りげに答えないでください?!これ恥ずかしっ…』
「これよりもっと恥ずかしいことするのに」
『?!?!?!』
―…恭弥さんの発言に頭が真っ白のまま、私は応接室に連れて行かれるのでした。
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