「魔法使いにはそれぞれ、お気に入りのパワースポットがあるって、賢者の書に書いてあったんです。リフレッシュしたり、意識を集中したりするための、気場のような場所があるって。「マナエリア」と呼ぶとも聞きました。ゲルダにはマナエリアがありますか？」

「ええ。ありますよ。私のマナエリアは北の国にある屋敷の中庭です」

「北の国…。前に住んでいた場所ですか？」

「はい。私が生まれ、両親と一緒に暮らしていた場所です。両親が亡くなった後もしばらくはそこで暮らしていました。中庭には一面に氷花が咲いていて、朝焼けの光に照らされて輝くその姿はとても幻想的で綺麗です。中庭を眺めているだけで大好きな自然を十分に感じられますし、魔力の高まりを感じます。それに父や母と過ごした日々のこともふわっと思い出します。仕事の時以外だと昔の思い出に浸りたい時などによく行きますね。私の一番好きな景色です」

「ゲルダの一番好きな風景ですか…。今度私も見てみたいです」

「ふふっ。賢者様にそんな風におねだりされたら叶えて差し上げたくなりますね。明け方、私の部屋を訪ねてくれましたらいつでも連れて行って差し上げますよ」

そうしてゲルダは綺麗に微笑んだ。